全国の素材生産量は2014年の19,916千m3から2022年には21,843千m3へ増加。9.7%の成長を記録した。

本記事では林野庁統計データを基に、2014年から2022年までの都道府県別素材生産量の推移を詳細に分析する。8年間の長期トレンド、ウッドショック前後の変化、地域ブロック別の動向を、具体的な数値とともに多角的に検証した独自分析である。

全国の素材生産量 — 9年間の推移

全国素材生産量の推移(2014〜2022年)
全国素材生産量の推移(2014〜2022年)。出典: 林野庁「木材統計調査」よりsanchi.jp作成

全国の素材生産量は2014年の19,916千m3から2019年には21,735千m3まで増加したが、2020年にコロナ禍の影響で19,741千m3へ一時減少した。その後2021年には21,676千m3、2022年には21,843千m3と回復し、8年間で9.7%の成長を達成した。2019年から2022年のウッドショック期においても、国内生産体制は比較的堅調に推移したと評価できる。伐採適齢期を迎えた人工林の増加と、路網整備の進展が全国的な生産量増加を支えていると考えられる。

都道府県別ランキング — 最新データ(2022年)

都道府県別 素材生産量ランキングTOP10(2022年)
都道府県別 素材生産量ランキングTOP10(2022年)

2022年の生産量トップは北海道の3,335千m3で、2位宮崎県の2,031千m3を大きく引き離している。上位10県は北海道、東北4県(岩手・秋田・青森・福島)、九州4県(宮崎・大分・熊本・鹿児島)、東北の宮城で占められ、森林資源の充実した地域が上位を独占する構造が鮮明である。特に九州勢は戦後造林されたスギ・ヒノキが本格的な伐採期を迎えており、安定的な供給体制を確立している。

順位

都道府県

生産量(千m³)

1

北海道

3,335

2

宮崎県

2,031

3

岩手県

1,461

4

秋田県

1,223

5

大分県

1,198

6

青森県

979

7

熊本県

957

8

福島県

950

9

鹿児島県

743

10

宮城県

685

9年間の伸び率ランキング — 伸びた県・減った県

都道府県別 素材生産量の9年間増減率
都道府県別 素材生産量の9年間増減率(2014年→2022年)

8年間の伸び率では富山県が52.2%増(46千m3→70千m3)、福井県が51.1%増(92千m3→139千m3)、兵庫県が50.0%増(252千m3→378千m3)とトップ3を占めた。増加県の共通要因として、従来生産量が少なかった地域での路網整備と素材生産事業体の育成、県産材利用促進政策の効果が挙げられる。福島県は45.0%増(655千m3→950千m3)と絶対量でも大きく伸ばし、震災後の森林整備事業の本格化と放射性物質検査体制の確立が生産回復を後押ししたと考えられる。一方、減少県では京都府と埼玉県の2022年データが秘匿処理(非公表)となっており統計上-100%と表示されているが、実際の生産停止を意味するものではない。神奈川県は61.9%減(21千m3→8千m3)、奈良県は29.7%減(172千m3→121千m3)と実際に減少しており、都市近郊県での林業採算性の低下や急傾斜地での作業困難性、吉野林業地域での高級材市場の縮小などが背景にあると考えられる。

増加率TOP10

都道府県

2014年

2022年

増減率

富山県

46

70

+52.2%

福井県

92

139

+51.1%

兵庫県

252

378

+50%

福島県

655

950

+45%

長崎県

91

129

+41.8%

千葉県

68

91

+33.8%

福岡県

141

186

+31.9%

栃木県

440

577

+31.1%

宮城県

530

685

+29.2%

大分県

963

1,198

+24.4%

減少率TOP10

都道府県

2014年

2022年

増減率

京都府

156

非公表

※非公表

埼玉県

81

非公表

※非公表

神奈川県

21

8

-61.9%

奈良県

172

121

-29.7%

石川県

128

113

-11.7%

山梨県

156

141

-9.6%

東京都

54

49

-9.3%

島根県

361

339

-6.1%

高知県

610

592

-3%

鳥取県

187

186

-0.5%

ウッドショックは地方林業に何をもたらしたか

ウッドショック前後の生産量変化(2019年 vs 2022年)
ウッドショック前後の生産量変化(2019年 vs 2022年)

2019年から2022年のウッドショック期において、増産できた県の特徴は機動的な生産体制と既存の路網インフラである。東京都は53.1%増(32千m3→49千m3)、兵庫県は37.5%増(275千m3→378千m3)、新潟県は31.1%増(119千m3→156千m3)と大幅に増加した。

これらの県は木材価格高騰時に迅速に伐採計画を前倒しし、需要に応える体制を整えたと考えられる。福島県も14.0%増(833千m3→950千m3)と着実に増産している。一方、減少した県では埼玉県が2022年データ非公表、神奈川県が50.0%減(16千m3→8千m3)、愛知県が35.9%減(245千m3→157千m3)となった。減少県では素材生産事業体の不足や搬出コストの高さから、価格高騰のメリットを生かせなかった可能性がある。中国地方の鳥取県27.9%減、島根県21.2%減も目立ち、地域的な事業体の供給能力に課題があると考えられる。

地域ブロック別に見る生産シェアの変化

地域ブロック別 素材生産量シェアの推移
地域ブロック別 素材生産量シェアの推移(2014〜2022年)

地域ブロック別では九州・沖縄が2014年の23.4%から2022年には24.7%へシェアを拡大し、東北の25.9%に迫る勢いを見せている。九州は2019年24.6%から2021年25.1%まで東北を上回る時期もあり、スギ資源の充実と大型製材工場・バイオマス発電所の立地による需要拡大が生産を牽引している。

北海道は2014年の16.5%から2020年に14.4%まで低下したが、2022年には15.3%へ回復した。東北は安定的に25%前後のシェアを維持し、日本最大の素材供給地域としての地位を確立している。一方、近畿は2014年の4.1%から2022年には3.5%へシェアを縮小し、京都府のデータ非公表も影響している。中部は2019年の11.0%をピークにやや減少傾向にある。

データから見える3つのポイント

1. 8年間で全国生産量は9.7%増加し、ウッドショック期の落ち込みからも回復。伐採適齢期を迎えた人工林の増加が持続的な生産拡大を支えている。

2. 増加県は路網整備と事業体育成により機動的な増産体制を確立。福井県・兵庫県など従来生産量の少なかった地域で50%超の大幅増加を実現した。減少県の一部は統計上の秘匿処理によるもので、実態とは異なる点に注意が必要。

3. 九州・沖縄ブロックがシェアを24.7%に拡大し東北に迫る。スギ資源の充実と需要側インフラ(大型製材工場・バイオマス発電)の整備が、地域としての供給力を高めている。

出典・データについて

  • 林野庁「木材統計調査」(各年次の木材需給報告書)
  • データ取得元: 政府統計の総合窓口 e-Stat
  • 集計・グラフ作成: sanchi.jp編集部

※本記事のデータは公開統計に基づく独自集計です。集計方法の詳細や個別データについてはお問い合わせください。

※一部都道府県のデータは、生産者数が少なく個人が特定される可能性がある場合、秘匿処理により非公表となっています。グラフ・表中の「非公表」はこの秘匿処理によるもので、生産量がゼロであることを意味するものではありません。

※本記事の情報は公開日時点のものです。最新情報は各公的機関の公式サイトをご確認ください。

※補助金・法規制に関する情報は概要の紹介を目的としており、申請の可否・具体的な条件は管轄機関にお問い合わせください。

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