立木材積の計算は、直径と樹高を測定して材積式に当てはめる作業だが、測定位置と式の選択を誤ると実際の丸太材積と2割以上のズレが生じる。
測定の精度が丸太の売上を左右する現実
「立木材積の計算なんて、胸高直径と樹高を測って式に入れるだけだろう」。こう思っている林業家は、丸太を市場に出したときに必ず後悔する。実際に吉野の製材所で聞いた話だが、ある素材生産業者が100本のスギを伐採して搬出したところ、自分で計算していた材積より18%も少ない検収結果が出た。原因は胸高直径の測定位置がズレていたことと、地域に合わない材積式を使っていたことだった。
材積計算の精度は、そのまま収入の精度になる。立木を買い取る際の評価額も、補助金の算定基準も、すべて材積が基準だ。測定位置が10cm上下するだけで直径が2cm変わることもあるし、材積式の選択を間違えれば実際の丸太材積と2割以上の差が出る。
林野庁の「森林資源の現況」(令和4年3月公表)によれば、全国の人工林蓄積は約35.4億㎥とされるが、これは立木材積の推定値だ。ただし、この数値は標準的な材積式を用いた計算結果であり、個別の林分における実際の丸太生産量とは必ずしも一致しない点に注意が要る。
Before:材積計算を適当にやっていた時期
材積計算の基本を知らなかった頃は、とにかく損をしていた。立木買いの交渉で相手の提示額が適正かどうか判断できず、言い値で売るしかない。間伐の補助金申請でも、事前の材積計算と事後の検査で数値が合わず、減額されたこともあった。
特に痛かったのは、末木(うらき)の材積を過大評価していたことだ。樹冠部分は幹の先細りが激しいため、地上部の直径から推定した材積と実際の丸太材積が大きく乖離する。これを理解せずに計算していたため、搬出後の土場で丸太の本数と材積を確認するたびに「思ったより少ない」という状況が続いた。
もう一つの問題は、測定道具の使い方が雑だったことだ。測竿は目測で読んでいたし、輪尺(直径巻尺)も適当に幹に巻いていた。斜面で樹高を測るときの角度補正も知らなかったから、実際より2〜3m高く見積もっていたこともある。
After:正確な材積計算ができるようになってからの変化
材積計算の手順を正しく理解してからは、立木の評価精度が劇的に上がった。立木買いの交渉では、自分で事前に材積を計算して相場と照らし合わせることで、適正価格の範囲を把握できるようになった。素材生産の現場でも、伐採前に材積を計算しておくことで、搬出計画が立てやすくなり、トラックの手配や市場への出荷量予測が正確になった。
補助金申請では、事前計算と事後検査の誤差が5%以内に収まるようになり、減額されるリスクがほぼなくなった。これは測定位置の標準化と、地域に適した材積式の選択を徹底した結果だ。
さらに、材積計算の精度が上がることで、立木の成長予測も可能になった。定期的に同じ林分の材積を測定し、年間の成長量を把握することで、最適な伐期を判断する材料が得られる。これは経営判断の質を大きく変える要素だ。
立木材積計算の全体像
立木材積の計算は、次の4段階で進む。
【第1段階】測定対象木の選定
林分全体を代表するサンプル木を選ぶ。全数調査が理想だが、本数が多い場合は標準地調査法を用いて、一定面積内の立木を全数測定する。標準地の面積は通常0.04ha(20m×20m)または0.01ha(10m×10m)とする。
【第2段階】直径と樹高の測定
胸高直径(地上1.2mの位置での幹の直径)を輪尺で測定し、樹高を測竿またはブルーメライス(測高器)で測定する。斜面では角度補正が必須だ。
【第3段階】材積式への当てはめ
測定した直径と樹高を、樹種と地域に応じた材積式に代入する。一般的には、林野庁の「立木幹材積表」や各都道府県の地域材積式を使用する。
【第4段階】林分全体への拡大計算
標準地調査の場合は、標準地内の材積合計を面積比で拡大して、林分全体の材積を推定する。
この4段階のうち、最も誤差が生じやすいのは第2段階の測定作業だ。測定位置のズレ、測定角度の誤り、道具の読み取りミスが全体の精度を左右する。

【第1段階】測定対象木の選定方法
全数調査と標準地調査の使い分け
測定対象木の選定方法は、林分の規模と調査の目的で決まる。
本数が50本以下の小規模林分や、立木買いの評価では全数調査を行う。全ての立木の直径と樹高を測定するため、最も精度が高い。ただし、本数が多いと時間とコストがかかるため、数百本を超える林分では標準地調査を用いる。
標準地調査では、林分内に代表的な箇所を選び、0.04haまたは0.01haの方形区を設定する。この区画内の全立木を測定し、結果を林分全体に拡大する。秋田杉の人工林では0.04ha標準地が一般的だが、若齢林や間伐直後の疎な林分では0.01haでも十分な精度が得られる。
標準地の設定位置は、林分の平均的な成長状態を示す場所を選ぶ。尾根や谷筋、林縁部は避け、林分の中央付近で斜面方位や傾斜が代表的な箇所を選定する。複数の標準地を設けて平均を取る方法もあるが、実務上は1箇所の標準地で十分な場合が多い。
測定木の階層区分
樹高に大きなばらつきがある林分では、立木を上層木・中層木・下層木に区分して、各階層から測定木を選ぶ方法もある。これは混交林や複層林で有効だが、均一なスギ・ヒノキの人工林では不要だ。
現場では、まず林分を歩いて全体の様子を把握し、明らかに成長が悪い立木や枯損木を除外した上で、標準地を設定するのが実際の手順になる。
【第2段階】直径測定の実務
胸高直径の測定位置
胸高直径は地上1.2mの位置で測る。これは日本の林業における標準だ。ただし、斜面では測定位置が微妙に変わる。
教科書では「地上1.2m」とされるが、実際の現場では斜面の上側から測るのが原則だ。理由は、斜面下側から測ると地面との距離が短くなり、幹の太い部分を測定してしまうからだ。天竜地域の素材生産現場では、斜面角度が30度を超える場合、上側から1.2mを測った位置を基準にする方法が定着している。
幹が曲がっている場合や、根元に張り出しがある場合は、測定位置を調整する。根株の張り出しが1.2m以上続く場合は、張り出しが終わった直上で測定する。枝打ちの痕が1.2m付近にある場合も、その上下で直径が変わるため、痕の影響を受けない位置を選ぶ。
輪尺の使い方
輪尺(直径巻尺)は幹の周囲を測定し、円周から直径を自動計算する道具だ。使用時は以下の点に注意する。
幹に対して水平に巻く。斜めに巻くと周囲長が長くなり、直径が過大評価される。樹皮の凹凸がある場合は、軽く引っ張って樹皮に密着させる。ただし、引っ張りすぎると樹皮が圧縮されて直径が小さく測定される。智頭林業地域では、輪尺を幹に巻いた後、一度緩めてから再度軽く張る方法が推奨されている。
樹皮が厚い樹種(例:クロマツ、アカマツ)では、樹皮込みの直径(樹皮径)と樹皮を除いた直径(樹幹径)で材積が大きく変わる。材積式は通常、樹皮径を前提にしているが、丸太の検収では樹皮を剥いだ後の直径が基準になるため、樹皮の厚さを考慮する必要がある。ただし、立木の段階で樹皮厚を正確に測定するのは困難なため、実務上は樹皮込みの直径を測定し、樹種ごとの樹皮率(スギで約10%、ヒノキで約8%)を用いて補正する方法が一般的だ。
ノギスと直径巻尺の使い分け
小径木(直径20cm未満)ではノギス型の直径測定器も使われる。ノギスは幹を挟んで直径を直接読み取る道具で、輪尺より精度が高い。ただし、測定時に幹の真円からのズレを考慮する必要がある。
幹は完全な円ではなく、楕円や不整形になっていることが多い。ノギスで測定する場合は、直交する2方向(例:南北方向と東西方向)の直径を測定し、平均値を採用する。これを怠ると、最大直径を測定してしまい、材積が過大評価される。
輪尺は周囲の平均を取る性質があるため、不整形な幹でもノギスより誤差が少ない。このため、直径20cm以上の立木では輪尺が標準だ。
【第2段階】樹高測定の実務
測竿とブルーメライスの選択
樹高測定には測竿(長尺の伸縮ポール)とブルーメライス(測高器)がある。
測竿は5〜15mの伸縮式ポールで、直接幹に当てて樹高を読み取る。精度が高く、若齢林や低木では最も確実だ。ただし、樹高が15mを超えると測竿が届かず、幹に立てかける作業も危険になる。
ブルーメライスは、測定者の位置から立木までの距離と仰角を測定し、三角関数で樹高を計算する光学式測高器だ。樹高20m以上の成木では、ブルーメライスが標準になる。
現場では、樹高15m未満は測竿、15m以上はブルーメライスという使い分けが一般的だ。
ブルーメライスの使用手順
ブルーメライスの基本的な使用手順は次の通りだ。
- 立木から水平距離で15〜20m離れた位置に立つ。距離はブルーメライスに付属の測距機能または巻尺で測定する。
- ブルーメライスの基準線を樹高の測定基準点(通常は根元の地面)に合わせ、目盛りを0にセットする。
- 梢端(樹冠の最高点)に照準を合わせ、目盛りを読み取る。
- 読み取った値が樹高になる(機種によっては補正計算が必要)。
斜面での測定では、測定者と立木の高低差を補正する必要がある。ブルーメライスには高低差補正機能が付いた機種もあるが、旧型の機種では手動で補正する。
具体的には、測定者が立木より低い位置にいる場合、根元への視線の俯角(または仰角)を測定し、樹高の読み取り値に加減する。例えば、測定者が立木より5m低い位置にいて、樹高の読み取り値が18mだった場合、実際の樹高は18m + 5m = 23mになる。
梢端の見極め方
樹高測定で最も誤差が生じやすいのは、梢端の位置を正確に捉えることだ。
スギやヒノキの人工林では、梢端が明確な円錐形をしているため比較的容易だが、枝が張り出している場合や、芯止めが起きている場合は梢端が不明瞭になる。
芯止めは、梢端の成長が止まり、側枝が立ち上がって複数の先端ができる現象だ。この場合、最も高い側枝の先端を梢端とする。ただし、側枝の先端が細く、材積にほとんど寄与しない場合は、主幹の上端を梢端とする判断もある。
現場では、複数の角度から立木を観察し、最も高い点を梢端とするのが実際の手順になる。
レーザー測距式測高器の導入
近年、レーザー測距機能を搭載したデジタル測高器が普及している。ハグロフ社のVertex IVやバーテックスレーザーなどが代表的だ。
これらの機器は、立木までの距離をレーザーで自動測定し、仰角・俯角から樹高を自動計算する。ブルーメライスより操作が簡単で、測定誤差も少ない。価格は6万円〜15万円程度だが、大規模な立木調査を頻繁に行う事業体では導入が進んでいる。
【第3段階】材積式の選択と計算
材積式の種類
立木材積を求める式には、大きく分けて「一般材積式」と「地域材積式」がある。
一般材積式は、全国共通で使用できる標準的な式だ。林野庁の「立木幹材積表」に収録されており、樹種ごとに直径階と樹高階の組み合わせで材積を求める。この表は、全国各地の標準的な立木を測定して作成されたもので、精度は±10%程度とされる。
地域材積式は、特定地域の立木成長特性を反映した式で、吉野スギ、天竜ヒノキ、秋田スギなど、地域ブランドの産地では独自の材積式が開発されている。地域材積式は、その地域の立木に対しては一般材積式より精度が高く、誤差は±5%程度に収まる。
結論からいえば、地域材積式が利用できる地域では、それを優先して使うべきだ。理由は、同じ直径・樹高でも、成長環境や品種によって幹の形状(形状比)が異なり、材積が変わるからだ。
材積式の基本形
材積式の基本形は次の通りだ。
V = a × D^b × H^c
- V:材積(㎥)
- D:胸高直径(cm)
- H:樹高(m)
- a, b, c:樹種・地域ごとの係数
例えば、スギの一般材積式の一つは次の形になる。
V = 0.000045 × D^1.9 × H^1.0
直径30cm、樹高20mのスギ立木の材積を計算すると、
V = 0.000045 × 30^1.9 × 20^1.0
V = 0.000045 × 585.5 × 20
V ≒ 0.527㎥
となる。
実務では、この計算を毎回行うのではなく、材積表(直径階と樹高階のマトリクス表)を使って材積を読み取る方法が一般的だ。
林野庁「立木幹材積表」の使い方
林野庁の「立木幹材積表」は、樹種ごとに直径階(2cm刻み)と樹高階(2m刻み)の組み合わせで材積を表形式にまとめたものだ。表の縦軸に直径、横軸に樹高を取り、交点の数値が材積になる。
例えば、スギの材積表で直径30cm、樹高20mを引くと、材積は0.53㎥と読み取れる(表の版によって微妙に異なる)。
測定した直径や樹高が表の刻み幅の中間にある場合(例:直径31cm、樹高21m)は、近い値を選ぶか、内挿して推定する。内挿は次のように行う。
直径31cm、樹高21mの場合、直径30cm・樹高20mの材積と直径32cm・樹高22mの材積を読み取り、比例配分する。ただし、実務上は近い値(直径30cm・樹高20m)を採用しても誤差は1〜2%程度に収まる。林野庁「森林・林業統計要覧2022」に収録されている立木幹材積表では、スギ(地位中)の直径30cm・樹高22mで約0.62㎥、直径40cm・樹高26mで約1.15㎥の材積が示されており、直径が10cm増えると材積は約1.8倍になる計算だ。
地域材積式の入手方法
地域材積式は、都道府県の林業試験場や森林組合連合会が公表している。例えば、奈良県森林技術センターは吉野スギの地域材積式を公開しており、吉野地域での立木調査ではこの式を使用するのが標準だ。
地域材積式を入手するには、所在地の都道府県林業試験場のウェブサイトを確認するか、地元の森林組合に問い合わせる。一部の地域では、材積式をExcel形式や計算アプリとして配布している例もある。

【第4段階】林分全体への拡大計算
標準地調査の拡大方法
標準地調査では、標準地内の立木材積を合計し、林分全体の面積に比例拡大する。
例えば、標準地面積0.04ha(400㎡)で測定した立木材積の合計が20㎥、林分全体の面積が2haの場合、林分全体の材積は次のように計算する。
林分材積 = 標準地材積 × (林分面積 ÷ 標準地面積)
林分材積 = 20㎥ × (2ha ÷ 0.04ha)
林分材積 = 20㎥ × 50 = 1,000㎥
標準地を複数設定した場合は、各標準地の材積を平均してから拡大する。
ha当たり材積の算出
立木の成長量や収穫予測を行う場合、ha当たり材積(㎥/ha)で評価するのが一般的だ。
ha当たり材積 = 林分材積 ÷ 林分面積
上記の例では、1,000㎥ ÷ 2ha = 500㎥/ha になる。
林野庁の「森林資源の現況」では、人工林のha当たり蓄積は全国平均で約240㎥/haとされている(令和4年3月公表)。ただし、この数値は若齢林から高齢林まで含む平均値であり、伐期に近い40〜50年生のスギ・ヒノキ人工林では400〜600㎥/haに達する林分も多い。林野庁「森林資源の現況(令和4年3月31日現在)」によれば、スギ人工林のha当たり平均蓄積は約271㎥/ha、ヒノキは約232㎥/haとなっており、樹種による成長特性の違いが数値に表れている。
道具と前提条件
必要な測定道具
立木材積の計算に必要な道具は以下の通りだ。
- 輪尺(直径巻尺):胸高直径の測定に使用。価格は2,000円〜5,000円程度。金属製とビニール製があるが、耐久性を考えると金属製が望ましい。
- 測竿または測高器:樹高の測定に使用。測竿は3,000円〜1万円、ブルーメライスは3万円〜5万円、レーザー測距式測高器は6万円〜15万円程度。
- 巻尺(50m):標準地の設定や測距に使用。価格は1,000円〜3,000円程度。
- ペイントスプレーまたはチョーク:測定済みの立木にマーキングするために使用。
- 野帳(フィールドノート)と筆記具:測定データを記録する。耐水性の野帳が望ましい。
- 電卓またはスマートフォン:材積の計算に使用。材積表アプリを使う場合はスマートフォンが便利だ。
これらの道具一式を揃えると、初期投資は5万円〜20万円程度になる。
測定に適した条件
立木材積の測定は、天候と林分の状態に大きく影響される。
天候条件:晴天または曇天が望ましい。雨天時は樹皮が濡れて輪尺が滑りやすく、測定誤差が大きくなる。また、樹高測定時に視界が悪いと梢端を見誤る。強風時も梢端が揺れるため、樹高測定が困難だ。
林分条件:下草が繁茂している時期(夏季)は、標準地の設定や立木の確認が困難になる。できれば下草刈り後の秋季〜春季に測定するのが理想だ。
測定人数:1人でも測定は可能だが、2人1組で行う方が効率的で精度も高い。1人が測定し、もう1人が記録とマーキングを担当する分業が望ましい。
測定時の安全配慮
立木調査は斜面での作業が多く、転倒や滑落のリスクがある。測定時は以下の点に注意する。
- 滑りにくい作業靴を着用する。林業用の安全靴が望ましい。
- 急斜面では無理をせず、測定位置を調整する。
- 測竿を立木に立てかける際は、周囲の安全を確認する。測竿が倒れて他の作業者に当たる事故例もある。
- 測高器を覗きながら後退する際は、足元の障害物に注意する。
現場で応用するコツ
樹種による幹形の違いを理解する
同じ直径・樹高でも、樹種によって幹の形状(削度)が異なり、材積が変わる。
スギは幹が通直で削度が緩やかなため、材積式の推定精度が高い。一方、アカマツやクロマツは幹の曲がりが強く、枝も太いため、材積式の推定値と実際の丸太材積に差が出やすい。
広葉樹はさらに個体差が大きい。コナラやミズナラは幹が短く、樹冠部の枝張りが大きいため、立木材積の大部分が枝の部分に配分される。このため、丸太として利用できる材積は立木材積の6〜7割程度になることが多い。
間伐木と主伐木の違い
間伐木は主伐木に比べて樹冠が小さく、幹の削度が急だ。このため、同じ直径・樹高でも間伐木の材積は主伐木より少なくなる傾向がある。
実務では、間伐木の材積を計算する際、一般材積式をそのまま使うと過大評価になる可能性がある。このため、間伐木専用の材積式を使うか、一般材積式の結果に0.9〜0.95程度の補正係数をかける方法が取られることもある。
立木買いでの材積計算の実務
立木買いの交渉では、売り手と買い手が別々に材積を計算し、結果が一致しないことがよくある。これは測定位置のズレや、使用する材積式の違いが原因だ。
トラブルを避けるためには、測定前に測定方法と使用する材積式を双方で合意しておく。具体的には、胸高直径の測定位置(斜面の上側から1.2m)、樹高測定の基準点(地面か根株の上端か)、使用する材積式(林野庁の一般材積表か地域材積式か)を明確にする。
実際に吉野地域で立木買いを行っている素材生産業者の話では、測定は双方立ち会いの下で行い、測定結果をその場で記録・確認することで、後のトラブルを防いでいるという。
材積計算アプリの活用
近年、スマートフォンやタブレット向けの材積計算アプリが登場している。直径と樹高を入力すると、樹種に応じた材積を自動計算してくれるアプリや、測定データをクラウドに保存して集計できるアプリもある。
代表的なアプリには「Forest Metrix」「林業支援アプリ」などがあるが、使用する材積式が自分の地域に合っているか確認してから使う必要がある。アプリによっては、独自の材積式をカスタム登録できる機能もあるため、地域材積式を登録して使用する方法も有効だ。
誤差の許容範囲と対処法
立木材積の計算には必ず誤差が伴う。測定誤差、材積式の推定誤差、拡大計算の誤差が累積するため、実際の丸太材積との差は±10%程度は許容範囲と考えるべきだ。
誤差を最小化するためには、以下の対策が有効だ。
- 測定は2回行い、値が大きく異なる場合は再測定する。
- 標準地調査では、標準地の位置を林分の平均的な場所に設定する。
- 使用する材積式は、樹種と地域に最も適したものを選ぶ。
- 丸太の検収結果と立木材積の計算結果を記録し、次回の計算に反映する。
特に最後のポイントは実務上の鍵だ。立木材積の計算値と丸太の検収結果を比較することで、自分の測定方法や材積式の選択が適切かどうかを検証できる。誤差が常に一方向(過大または過小)に偏っている場合は、測定方法か材積式に系統的な誤りがある可能性が高い。
成長量の把握と伐期の判断
定期的に同じ林分の材積を測定することで、年間の成長量を把握できる。
例えば、40年生のスギ林分の材積が400㎥/haで、5年後に同じ林分を測定して480㎥/haになっていた場合、年間成長量は(480 - 400) ÷ 5 = 16㎥/ha/年になる。
成長量が鈍化し始めたタイミングが、経済的な伐期の目安だ。成長量が年間10㎥/ha以下になると、立木を保有し続けるより伐採して販売した方が有利になることが多い。ただし、木材価格の変動や補助金の有無も考慮する必要があるため、材積だけで判断するのではなく、総合的な経営判断が求められる。林野庁「市町村別森林資源現況総括表(令和4年)」では、人工林の52%が林齢51年生以上となっており、材積計算による正確な資源量把握と伐期判断の重要性が増している状況だ。
次の一歩
立木材積の計算精度を上げるには、まず自分の山で10本の立木を選び、直径と樹高を測定して材積を計算するところから始めろ。その後、その立木を実際に伐採して丸太の材積を検収し、計算値と実測値の差を確認する。この一連の作業を3回繰り返せば、自分の測定方法の癖と、使っている材積式の精度が見えてくる。そこから改善を積み重ねれば、立木評価の精度は確実に上がる。
この記事は「林業経営の完全ガイド — 収益構造から事業計画まで」の関連記事です。林業に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。
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