間伐材の使い道で失敗するのは搬出コストの試算を後回しにするからだ。利用方法は製材・燃料・チップの三系統に分かれ、径級と搬出距離で判断する。
搬出して赤字になる間伐材の典型パターン
12月上旬、島根県の山林で起きた出来事だ。間伐作業を終えた現場で、土場に積まれた丸太を前に林業家が頭を抱えていたのだが、その理由は末口径14センチの杉材約30立米をチップ工場へ運ぶ運賃を計算したところ、搬出コストが売り上げを2万円上回ることが判明したためであり、結局その材は林内に残置されることになった。
多くの林業従事者が陥る罠がある。間伐材の使い道を考えるとき「何に使えるか」から入るのだが、現場で本当に判断すべきは「どこまで運べば収支が合うか」という点にほかならない。
教科書では製材用・合板用・バイオマス燃料用と分類される。林野庁『森林・林業白書』(2025年版)によれば、国内の間伐実施面積は年間約45万ヘクタールだが、そのうち搬出間伐の割合は62.3%にとどまる。残りは切り捨て間伐だ。つまり林内放置である。これは搬出しても採算が取れない現実を示しているが、林野庁『令和5年度森林・林業白書』によれば、搬出された間伐材の利用率は約78%に達しているものの、依然として22%は林内で未利用のまま残されているという状況が続いている。
冒頭の事例が典型的だ。間伐材の使い道で失敗する現場には共通点がある。作業前に径級を測らず、搬出路から林分までの距離を確認せず、買い取り価格を問い合わせずに伐採を始めるため、結果として切った後に「運べない」「売れない」「コストが合わない」と気づくのであり、この判断順序の誤りが赤字搬出を生む構造的要因となっている。
実務で見ると、間伐材の行き先は大きく三つに分かれる。製材用、燃料用(薪・ペレット・チップ)、そして工業用チップ(製紙・ボード原料)だ。それぞれ求められる径級も価格も搬出条件も異なる。天竜地域の製材業者が求めるのは末口径18センチ以上の杉材だが、バイオマス発電所なら10センチから受け入れる。ただし後者の単価は1立米あたり3,000〜4,500円にとどまる。トラック1台分(約10立米)を20キロ運ぶと運賃だけで2万円近く飛ぶ。
結論はこうだ。間伐材の使い道は「どう使うか」ではなく「どこに、いくらで、どうやって運ぶか」の三点セットで決まるのであり、この順序を間違えると切った材が林内で朽ちるか赤字搬出で経営を圧迫するかのどちらかになる。
径級と搬出距離から逆算する販路選定
結論から言う。間伐材の使い道は末口径と搬出距離の二軸で決める。製材用は末口径18センチ以上で曲がりが少なく搬出距離は林道から500メートル以内、燃料用は径10センチ以上で形状不問だが搬出距離は30キロ以内、工業用チップは径8センチ以上で樹種混在可であり搬出距離50キロまでなら採算ラインに乗るという判断基準になる。
この判断基準は、各用途の買い取り価格と運搬コストから逆算したものだ。2026年4月時点の主な価格帯を挙げる。製材用A材(杉・末口径18センチ以上・長さ4メートル・曲がり無し)は1立米あたり12,000〜15,000円。B材(合板用・径14センチ以上)は6,000〜8,000円。C材(チップ用・径10センチ以上)は3,500〜5,000円。D材(バイオマス燃料用・径制限なし)は2,500〜4,000円となっている。ただし、これは土場渡し価格であり、運賃は別途かかる。林野庁『木材需給報告書(令和5年)』によれば、国産材の素材生産量は年間約2,109万立方メートルで、このうち杉・檜などの針葉樹が約95%を占めており、間伐材はこの生産量の約3割を占める重要な供給源となっている。
搬出コストの実態を見る。架線集材なら1立米あたり約8,000〜12,000円、フォワーダ(集材車両)なら4,000〜7,000円、林道際なら1,500〜3,000円だ。つまり、C材をフォワーダで集材すると、売り上げ4,000円に対して集材費6,000円で2,000円の赤字になるのであり、これに運賃(10キロで約1,500円/立米)が加わるため、搬出距離が長くなるほど赤字幅は拡大していく構造となっている。
天竜地域である製材所が提示している条件はこうだ。末口径20センチ以上、長さ3.65メートルまたは4メートル、曲がり1メートルあたり1センチ以内という規格を満たせば1立米13,500円で買い取るが、持ち込み条件であるため運賃は出荷側負担となり、林道から5キロ以内なら採算が取れるものの10キロを超えると厳しくなる。これが製材用の現実だ。
バイオマス発電所の場合はどうか。吉野地域の施設では末口径8センチ以上、長さ2メートルカット、樹種混在可で1立米3,800円となっている。ただし含水率60%以下、土砂混入不可。搬入は10立米以上から受付だ。この条件なら、林道際の材を軽トラで運び込む小規模林家でも対応できる。ただし、発電所から30キロ以上離れた山林では運賃倒れになる。
ここで重要なのは、径級測定のタイミングだ。立木のまま測るのではなく伐倒後に末口径を実測する必要があるのは、立木の胸高直径から換算すると梢端部の細りで誤差が出るためであり、特に樹齢40年以下の間伐木は見た目より細いため実測して初めて「A材と思ったらB材だった」と分かる事例が多い。

製材用として出荷する手順と条件
製材用に回せる間伐材は、実際には全体の2割程度だ。それでも単価が高いため、条件を満たす材は優先して選別する。以下、製材用出荷の実務手順を示す。
Step 1: 立木選定と径級確認
間伐前に、対象木の胸高直径を測る。製材用の目安は杉で胸高直径22センチ以上、檜で20センチ以上だが、これは立木の数値であり伐倒後の末口径は約8割になるため、胸高直径22センチなら末口径は約17〜18センチとなり、このラインを基準に選木することになる。
曲がりの確認も立木段階で行う。幹の通直性を目視し、1メートルあたり1.5センチ以上曲がっていれば製材用から外す。節の多さも見る。枝打ちが不十分な木は節が密で、製材歩留まりが落ちるからだ。現場では、幹の下部3メートルを目視して節間が40センチ以上あるかを確認する。
Step 2: 伐倒と玉切り
伐倒方向は搬出路側に倒す。これは引き寄せ距離を短くするためだ。チェーンソーはスチールMS261(50.2cc)以上を使う。径30センチまでなら16インチバー、それ以上なら18インチに変える。
玉切りは製材所の指定長さに合わせる。一般的には3.65メートル、4メートル、6メートルのいずれかで、長さの許容誤差はプラス5センチ・マイナス3センチとなっており、短すぎると買い取り拒否、長すぎると運搬時にトラックからはみ出すため、メジャーで実測しチョークでマーキングしてから玉切る必要がある。
玉切り後、末口径を再度測定する。直径テープ(周囲を測って直径換算する道具)を使い、末口の最小径を記録するが、楕円形の場合は短径を採用することになっており、この実測値が規格を下回れば、その材は合板用に格下げする。
Step 3: 搬出と仕分け
集材はフォワーダまたは架線を使う。製材用は傷が減点対象になるため、引きずらない。フォワーダの荷台に積む際、丸太同士が擦れないよう間にゴム板を挟む業者もいる。土場では樹種別、径級別に仕分ける。杉と檜は必ず分ける。混在すると買い取り価格が下がるか、最悪引き取り拒否になる。
土場での保管期間は2週間以内が理想だ。それ以上放置すると木口から割れが入り、特に夏場は虫害とカビのリスクがあるため、可能なら伐採後3日以内に出荷し、どうしても保管が必要なら木口にパラフィン系シーラントを塗布して割れを防ぐ。
Step 4: 運搬と納品
運搬は4トントラックまたは10トントレーラーを使う。製材所まで20キロ以内ならトラック1台あたり運賃15,000〜20,000円で、積載量は4トン車で約10立米、10トン車で約20立米となる。納品時、製材所の検査員が末口径・曲がり・節・腐れを確認し等級を判定するが、ここで規格外と判断されれば減額または引き取り拒否になる。
実務上、製材用として出荷できる確率を上げるには、伐採前に製材所の担当者を現場に呼ぶ手がある。立木を見せて「この材なら買い取れるか」を確認するのであり、手間はかかるものの伐採後に規格外と言われるよりはるかにマシだという判断が現場では一般的になっている。
燃料用(薪・ペレット・チップ)への転用
製材用に回らない材、つまり径級不足や曲がり材は燃料用に回す。ここでの判断基準は「熱量」と「乾燥度」だ。生木の含水率は50〜60%。これを薪として使うなら半年〜1年の自然乾燥が必要で、ペレット用なら人工乾燥で含水率10%以下まで下げる。
薪への加工は、林家が自分で行うケースと業者に売るケースに分かれる。自家加工なら、玉切り後に薪割り機(エンジン式7〜9馬力)で割る。長さは33センチまたは40センチが一般的で、これは薪ストーブの炉内寸法に合わせた規格だ。乾燥は屋外の薪棚で積み上げ、雨よけシートをかけて6〜12ヶ月置く。乾燥後の含水率が20%以下になれば販売可能だ。価格は1立米あたり8,000〜12,000円(配達込み)が相場となっている。
ペレット工場に売る場合はどうか。求められるのは径8センチ以上、長さ50センチ以内、樹皮付きでも可、ただし腐朽材は不可という条件になる。2026年4月時点で、智頭地域のペレット工場では1立米あたり4,500円で買い取る(持ち込み)。ただし最低ロットは10立米からだ。小規模林家が単独で出荷するのは難しく、森林組合経由でまとめて出荷する形が多い。
バイオマス発電所向けチップの場合、日田地域の発電所では長さ2メートルカット、径制限なし、樹種混在可で1立米3,800円となっており、搬入時にチップ化する前の丸太状態で持ち込む必要があるため発電所に隣接するチッパー(破砕機)で処理される仕組みだが、この用途なら末木(うらき)と呼ばれる梢端部の細い部分も利用できる。通常は林内に放置される末木だが、発電所なら引き取ってくれる。林野庁『木材需給報告書(令和5年)』によれば、木質バイオマス燃料用の素材需要量は年間約946万立方メートルに達しており、発電施設の増加に伴い需要は拡大傾向にある。
実務で注意すべきは、燃料用の搬出可否を「林道からの距離」で判断する点だ。フォワーダの作業可能範囲は林道から約300メートルで、それを超えると集材コストが跳ね上がるためバイオマス用の低単価では採算が取れず、300メートルを超える奥地の材は切り捨て間伐として林内放置が現実的な選択になる。
工業用チップ(製紙・ボード原料)の出荷基準
製紙用チップは、新聞紙やダンボールの原料になる。求められるのは繊維長と白色度だ。杉・檜は針葉樹チップとして扱われ、広葉樹(ナラ・クヌギなど)とは別ラインで買い取られる。樹皮混入は許容されるが、土砂混入は不可。腐朽材も拒否される。
秋田地域の製紙工場では、針葉樹チップを1トンあたり6,500円で買い取っている(持ち込み)。含水率50%の丸太を想定すると1立米あたり約3,900円に相当するが、チップ化は工場側で行うため丸太のままトラックで搬入する形となり、長さは2メートル以内で径は問わず樹皮は剥かなくてよい。
ボード用チップ(パーティクルボード・MDFの原料)は、さらに条件が緩い。樹種混在可、樹皮混入可、ただし金属異物(針金・釘など)は不可だ。北山地域のボード工場では1トンあたり5,000円で買い取る。この用途なら、製材用にも燃料用にも向かない低質材でも利用できる。
ここで問題になるのは、チップ化のタイミングだ。山土場でチップ化してから運ぶ方法と丸太のまま運んで工場でチップ化する方法があるが、前者は移動式チッパーをレンタルまたは購入する必要があり機械代が1日5〜8万円かかる一方で、後者は運搬効率が悪くトラック1台あたりの積載量が減るため、どちらを選ぶかは工場までの距離と出荷量で決まり、30キロ以内なら丸太運搬、50キロ以上なら山土場チップ化が有利になる計算だ。
林野庁『木材需給報告書』(2025年)によれば、国産材チップの生産量は年間約522万トンで、このうち製紙用が約60%、ボード用が約25%を占めるが、この統計には自家消費分(バイオマス発電所の自社調達など)は含まれないため実際の流通量はこれより多い可能性がある。

前提条件と必要な道具
間伐材の使い道を判断する前に、以下の前提条件を満たしているか確認する。林道または作業道が林分まで通じているか、搬出に使える重機(フォワーダ・グラップル等)があるか、土場に丸太を一時保管するスペースがあるか、販路(製材所・チップ工場・バイオマス施設)までの距離は片道50キロ以内かという四点だ。
これらが一つでも欠けると、搬出間伐は成立しない。特に作業道の有無は決定的だ。作業道開設のコストは1メートルあたり2,000〜4,000円で、100メートル開設すると20〜40万円かかるため、間伐材の売り上げが50万円なら道を作った時点で採算ラインが厳しくなる。
必要な道具を列挙する。チェーンソー(排気量40cc以上、バー長さ16〜18インチ)、目立て道具(やすり・デプスゲージ調整工具)、直径テープ、メジャー(5メートル以上)、チョーク、楔、フェリングレバー、ヘルメット、防護服、チェーンソー用グローブ、安全靴(鉄芯入り)、救急キット、無線機または携帯電話。
搬出に使う重機は、フォワーダ(積載量2〜4トン)、グラップル(0.25〜0.45立米バケット)、林内作業車(4WDトラック改造型)のいずれかとなる。所有していない場合はレンタルまたは森林組合に委託するが、フォワーダのレンタル料は1日あたり35,000〜50,000円、オペレーター付きなら60,000〜80,000円が相場だ。
販路との契約も事前に済ませる。製材所・チップ工場・バイオマス施設に連絡し、買い取り条件(規格・単価・最低ロット・納品方法)を確認するが、口頭ではなく書面またはメールで記録を残すべきだ。「以前は買い取っていたが今は受け入れ停止」という事例は珍しくない。2026年の木材価格は変動が大きく、1ヶ月前の情報が使えないこともある。
プロと初心者で差が出る三つの判断
間伐材の使い道で、ベテランと初心者の違いは「切る前に決める」「切った後に選別する」「運ぶ前に計算する」の三段階に現れる。初心者はすべてを後回しにし、プロは逆算する。
判断①:切る前に用途を決める
初心者は「とりあえず切ってから考える」と動く。だがプロは立木段階で径級を測り搬出距離を確認し用途を決めてから切るのであり、その理由は用途によって玉切り長さが変わるためで、製材用なら4メートル、バイオマス用なら2メートルとなり、切った後に「やっぱり2メートルにすればよかった」と玉切り直すのは二度手間になる。
現場で見るのは、立木にチョークで印を付ける動作だ。製材用は赤、合板用は青、バイオマス用は白、といった色分けをするのであり、これで伐倒後の仕分けがスムーズになるため、初心者がこの手順を省いて土場で混乱するのとは対照的な効率性が生まれる。
判断②:切った後に即座に選別する
伐倒後、プロは玉切りと同時に末口径を測る。規格外の材はその場で別の用途に振り分ける。初心者は全部同じように土場に運び、後から「これは売れない」と気づく。この差は、土場での作業時間に直結する。プロの土場作業は1時間で終わるが、初心者は半日かかる。
もう一つの差は、材の品質判定だ。プロは木口を見て割れ・腐れ・虫害の有無を瞬時に判断するが、腐朽が進んだ材は中心部が茶褐色に変色しており、これは製材にもチップにも向かず燃料用にしかならないため、初心者は外観だけ見て「きれいな材」と判断し製材所で拒否されることになる。
判断③:運ぶ前に収支を計算する
プロは搬出前に電卓を叩く。材積×単価−(集材費+運賃)がプラスになるか確認する。マイナスなら、その材は運ばない。初心者は「せっかく切ったから」と全部運び、後で赤字に気づく。
天竜地域の林業家が実際に使っている計算式を示す。「(材積×買い取り単価)−(林道からの距離×100円/立米)−(運搬距離×150円/立米)>0」という式でマイナスになる材は林内放置または薪用に自家消費するのだが、この計算をするかしないかで年間の収支が数十万円変わるという単純だが重要な事実がある。
現場での三つの判断基準
最後に、間伐材の使い道を現場で判断する三つの基準をまとめる。これは教科書には載らないが、実務では必須の知識だ。
基準①:末口径16センチが分岐点
末口径16センチ以上なら製材または合板用を検討する。16センチ未満ならチップまたは燃料用に回す。この数値は、製材所の買い取り下限(多くが18センチ以上)と合板工場の下限(14センチ以上)の中間値であるため、16センチあればどちらかの用途に振り分けられる可能性があるが、逆に16センチ未満は高単価の用途には向かない。
基準②:搬出距離300メートルが損益分岐
林道から300メートル以内ならフォワーダ集材で採算が取れる。300〜500メートルは架線集材が必要で、コストが倍増する。500メートル以上は、よほど高単価の材(製材用A材)でない限り赤字になる。現場では、林分の中心から林道までの直線距離をレーザー距離計で測る。この数値が300メートルを超えたら、搬出間伐ではなく切り捨て間伐を選ぶ判断もある。
基準③:販路までの距離30キロが転換点
製材所やチップ工場まで30キロ以内なら、運賃は売り上げの20〜30%に収まる。30〜50キロは運賃比率が40%を超え、利益が薄くなる。50キロ以上は、高単価の製材用でも厳しい。現場では、土場から販路までの道路距離を事前に確認するが、カーナビではなく大型トラックが通行可能なルートで測る必要があり、林道から国道までの区間が狭隘なら迂回ルートを使うため距離が伸びることになる。
数字が物語る。間伐材の搬出可否は、径級・搬出距離・販路距離の三つの数値で決まるのであり、この三つが揃わないとどれだけ良質な材でも利益は出ないが、逆に言えば三つの条件を満たせば低質材でも収益化できるという現実がある。判断の順序を間違えず、切る前に用途を決め、切った後に選別し、運ぶ前に計算する。この三段階を踏めば、間伐材は使い道に困る廃材ではなく、収益源になる。
この記事は「林業経営の完全ガイド — 収益構造から事業計画まで」の関連記事です。林業に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。
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