間伐材利用で最も多い失敗は「売り先を決める前に搬出すること」。実務では末木径と土場からの距離で採算ラインを引き、出荷先の規格に合わせて玉切りする。

間伐材の搬出で9割が赤字を出す理由

現場の失敗はここに集約される。間伐材の利用で最初につまずくのは、「とにかく山から降ろせば何とかなる」と思い込んでいる点だ。実際は逆である。搬出してから引き取り先を探すと、運搬費と手間だけがかさんで1立米あたり2,000〜3,000円の赤字になるため、天竜の林業家に聞くと、「土場に積んだ材を見て買い手が値段を言ってくるが、その時点で選択肢はほぼない」という話をよくするのだ。

林野庁の「令和5年木材需給報告書」によれば、国産材の素材生産量は2,023万立方メートル(2023年)だが、このうち間伐材由来の丸太は約4割を占めるものの、この数値には自家消費や林地残材は含まれないため実際の間伐実施量はこれより多く、問題は搬出された間伐材の3割近くが「C材」として低価格でしか流通しない点にある。C材とは製材や合板に使えない規格外材のことで、チップやバイオマス燃料向けに1立米あたり3,000〜5,000円程度にしかならない。

教科書では「間伐→搬出→販売」と単純に書かれるが、現場では販売先の要求仕様が先にあり、製材所向けなら末口径14cm以上・長さ3m、合板工場なら10cm以上・2.6m、バイオマス発電所なら径や曲がりは問わないが水分率の規定があるといった具合で、これを知らずに伐ったまま搬出すると、どこにも規格が合わず買い叩かれるという結果になるのだ。林野庁「令和4年度森林・林業白書」によれば、2021年度の間伐実施面積は約46万ヘクタールに達しているが、このうち搬出間伐(材を山から出す間伐)の割合は約6割にとどまり、残りは切り捨て間伐として林内に残置されている。

採算ラインを決める3つの数字

利益を出す判断基準がある。間伐材で利益を出すには、現場で「この木は出す、この木は残す」を判断する基準が要り、その基準は3つの数字で決まるのだ。林野庁「木材需給報告書(令和5年)」では、木材チップ用材の平均価格は1立方メートルあたり4,400円(2023年)とされており、搬出コストを差し引くとほとんど利益が残らない水準だ。

末口径と樹高から材積を逆算する

立木の状態で「この木から何立米取れるか」を見積もる技術を「立木検知」と呼ぶ。現場では目測で末口径(木の先端側の直径)と樹高を読み、材積表に当てはめる。例えば、末口径12cm・樹高18mのスギなら約0.15立米、末口径18cm・樹高22mなら約0.4立米といった具合だ。この数字に買取単価を掛けると収入が出る。

ここで注意すべきは、「末口径が規格ギリギリだと買い取られない」という現実であり、製材所が「14cm以上」と言っている場合、実際は15cm以上ないと受け付けないのは、皮を剥いて製材すると1cm程度は削られるため14cmジャストでは製品にならないからであって、智頭の製材所では「末口16cm以上」を実質的な下限としているケースが多いというのが実態だ。

土場までの距離と勾配

搬出コストは距離と地形で決まる。林道から50m以内で勾配が緩ければ小型フォワーダで直接運べるが、100mを超えると架線集材かグラップル付き林内作業車が必要になり、コストは2倍以上に跳ね上がるため、北山の林業グループでは「200m超えたら間伐材は出さない」と決めている。シンプルに言えば、搬出費が収入を上回るからだ。

具体的には、フォワーダ運材なら1立米あたり1,500〜2,500円、架線集材なら4,000〜6,000円かかるため、もし買取単価が8,000円だとすると、架線集材では利益が2,000〜4,000円しか残らず、伐倒・玉切り・枝払いの人件費を引くと赤字になる計算になるのである。

出荷先の規格と在庫状況

同じ径級・樹種の材でも、出荷先によって単価が変わる。2026年4月時点での九州地区の相場を見ると、スギ材(末口14〜18cm、長さ3m)で製材所向けがトン単価12,000〜15,000円、合板工場向けが8,000〜10,000円、バイオマス発電所向けが4,000〜5,500円だ。ただし製材所は在庫が積み上がると受け入れを止めるし、合板工場は契約業者以外からの持ち込みを嫌うため、結果として事前に出荷先を確保していない材は最終的にバイオマス行きになり採算が合わなくなる。

日田の森林組合では、「年度初めに各出荷先の受け入れ枠を押さえ、その枠内で間伐計画を立てる」という逆算方式を採っており、これなら搬出した材が行き場を失う事態を避けられる。

間伐材の利用における採算ラインを決める3つの数字の様子

現場で使う判断の優先順位

立木を見て「出す・出さない」を決める際、以下の順序で判断する。

1. 出荷先の規格に合うか?(径、長さ、曲がり、腐れの有無)
2. 搬出コストは収入の50%以下に収まるか?
3. 伐倒方向は確保できるか?(隣の残存木を傷つけない)
4. 今伐るべきか、次回の間伐まで残すべきか?

この4つをクリアした木だけを選木する。ただし保育間伐(本数調整が目的)の場合は4番目の基準を優先し、たとえ採算が取れなくても林分の健全性のために伐る判断もあるのだ。

正しい搬出手順(Step 1〜6)

Step 1: 出荷先の選定と規格確認

まず地域の製材所、合板工場、チップ工場、バイオマス発電所に連絡を取り、受け入れ可能な規格と時期、買取単価を確認する。この時点で「今月は製材用A材を100立米まで受け入れ可能」といった具体的な枠を押さえ、口頭だけでなくFAXやメールで記録を残すのが鉄則だ。

秋田県の森林組合では、出荷先ごとに「規格カード」を作り、末口径、長さ、曲がり許容度、節の有無、含水率、樹種をA4用紙1枚にまとめており、これを現場に持ち込むと選木の際に迷わないという利点がある。

Step 2: 林内踏査と選木

対象林分を歩き、搬出可能な木に目印(マーキングテープや塗料)をつける。この際、径を測るのはメジャーではなく「輪尺(りんじゃく)」を使う。輪尺は胸高直径を測る専用道具で、1本あたり5秒で計測できる。末口径は樹高と胸高直径の比率から推定する(スギなら胸高直径の0.6〜0.7倍が末口径の目安)。

選木の際に初心者がよくやる失敗は、「とにかく曲がった木や細い木を優先して伐る」という判断であり、確かに林分の見た目は良くなるが、そうした木は売れないため搬出しても赤字になるのに対し、逆にまっすぐで太い優良木を残し中径木(胸高直径20〜28cm)を間伐すると、収入を確保しつつ林内の光環境も改善できるという結果になるのである。

Step 3: 伐倒と玉切り

方向が全てを決める。伐倒方向は、倒した木が土場方向に頭を向けるように計算する。これで引き寄せや集材の際に方向転換の手間が減る。伐倒後、すぐに枝払いと玉切りを行う。玉切りの長さは出荷先の規格に合わせるが、5cm程度の余裕を持たせる(製材所が「3m材」と言っている場合、実際は3.05〜3.1mで切る。短いとクレームになるが、長い分には製材所側で調整できる)。

チェーンソーの刃が切り屑を粉状にしか出さなくなったら、その場で目立てをする。「あと1本だけ」と無理に続けると、切り口が潰れて製材所で買い叩かれる原因になるため、吉野では「切り屑が糸状に出なくなったら即休憩して目立て」が徹底されているのだ。

Step 4: 集材と土場への運搬

小型フォワーダ(積載量2〜3トン)で運べる距離なら、伐倒した木をそのまま林内作業道まで引き寄せ、フォワーダに積む。架線集材が必要な場合は、集材機の設置に半日〜1日かかるため、最低でも30立米以上の材積がないと採算が合わない。

土場では樹種別・径級別・長さ別に仕分けて積むが、これをやらないと出荷時にトラックへの積み込みで手間取り運送会社から追加料金を請求されることになるため、飫肥杉を扱う宮崎の土場では「3m材」「4m材」「曲がり材」の3区画に分け、さらに末口径15cm未満・15〜20cm・20cm以上の3段階で分類しているという実態がある。

Step 5: 出荷と検収

出荷先のトラックが来たら、材を積み込む。この際、製材所やチップ工場の担当者が「検収」を行い、規格外の材は受け取り拒否される。よくあるのが「腐れ」「虫穴」「曲がりすぎ」での返品だ。返品された材は持ち帰るか、その場で値引き交渉するしかない。

トラブルを避けるには、積み込み前に自分で検収を済ませておくべきであり、具体的には樹皮を一部剥いで変色や虫食いがないか確認し、曲がりは目視で「1m当たり3cm以内」を基準にするという方法が有効だ(製材所の標準的な許容値)。

Step 6: 精算と記録

出荷後1〜2週間で買取代金が振り込まれる。伝票には材積、単価、等級が記載されているので、これを保存して次回の参考にする。「この山のこの区画から、A材が何立米取れた」というデータを蓄積すると、次の間伐計画の精度が上がる。

スマートフォンのアプリで立木の写真と位置情報、材積をセットで記録する方法もある。林野庁が推進する「森林クラウド」システムに対応したアプリなら、自治体の森林GISとデータ連携できる場合もある。

前提条件と必要な道具

法的手続き

自分の山であっても、1ヘクタール以上の伐採には「伐採及び伐採後の造林の届出書」を市町村に提出する必要があり、これは森林法第10条の8に基づく義務であるため、届出をせずに伐採すると罰則(100万円以下の罰金)が科される可能性があるのだ。届出は伐採の30日前までに提出し、市町村の林務担当課から「適合通知」を受け取ってから作業を始める。

また、保安林や林地開発許可が必要な区域では別途手続きが要る。不明な場合は都道府県の林業普及指導員に相談するのが確実だ。

最低限の装備

チェーンソー(排気量40〜50cc級。スチールMS261やハスクバーナ545など)、ヘルメット(フェイスガード・イヤーマフ付き)、チェーンソー防護ズボン、滑り止め付き安全靴、輪尺、マーキングテープ、目立て道具一式(やすり、デプスゲージ、ガイド)が必須だ。

搬出用には最低でも軽トラックとチルホール(手動ウインチ)が要り、フォワーダは新車で500万〜1,200万円するため、個人では森林組合のレンタルを使うか、複数の林家で共同購入する例が多いというのが実態である。

技能と資格

資格の扱いには注意が必要だ。チェーンソーを使って立木を伐採する場合、労働安全衛生法上は「伐木等の業務に係る特別教育」(通称:伐木講習)の修了が必要であるものの、これは雇用されている場合の話で、自分の山を自分で伐る分には法的には資格不要とされている。とはいえ、講習を受けずに伐倒するのは事故リスクが高いため、最低でも都道府県の林業研修所が開催する「林業就業支援講習」や「林業体験研修」を受けておくべきだ。

間伐材の利用における前提条件と必要な道具の様子

プロと素人で差がつく3つのポイント

選木の速さと正確さ

プロは1本あたり10秒以内で「出す・出さない」を判断するが、これは立木の外観(樹皮の色、枝の付き方、梢端の形)から内部の材質をある程度推定できるからであり、例えばスギで樹皮が縦に深く割れている木は「あて材」(応力がかかって繊維が捻れた部分)が入っている可能性が高く、製材しても反りや割れが出やすいため、こうした木はたとえ径が太くても避けるという判断になる。

素人は径だけで判断しがちだが、プロは「幹の通直性」「枝下高」「周囲の木との距離」を総合的に見ている。幹がまっすぐで枝下高が6m以上あれば、3m材を2本取れる。枝下高が4mしかないと、節が多くて等級が下がる。

玉切り長さの調整技術

出荷先が「3m材」と指定している場合でも、実際には3.0m、3.65m、4.0mの3パターンで切り分けるのがプロのやり方であり、なぜなら3.0mで切ると端材が出て捨てることになるが、もし3.65mで切れる部分があればそちらを優先したほうが収入が増えるからだ(3.65m材は「12尺材」と呼ばれ、住宅の柱用として高値で取引される)。

また、曲がりがある木は短く切って使える部分だけを出荷し、曲がった部分は林地残材として残す。この判断を伐倒直後に瞬時に行うには、玉切り位置を決める「目」が要る。天竜の製材所で聞いた話では、「曲がりの頂点から50cm以内で切れば、製材機で補正が効く」という基準があるという。

搬出タイミングの見極め

タイミングが利益を左右する。伐倒後すぐに搬出するか、しばらく林内で乾燥させてから出すかは、出荷先の要求次第による。バイオマス発電所向けなら含水率が低いほうが発熱量が高く評価されるため、伐倒後2〜3カ月林内で乾燥させる「葉枯らし」を行う。逆に製材所向けは、含水率が高いほうが製材時の割れが少ないため、伐倒後1カ月以内に出荷する。

智頭の林業家は「夏場の葉枯らしは虫とカビのリスクが高いから、秋〜冬に伐って春までに出す」という原則を持っており、実際に8月に伐った材を10月まで林内放置すると、キクイムシの食害で商品価値が落ちる例が多いという現実がある。

現場での判断基準:5つのチェックリスト

間伐材の搬出可否を判断する際、以下の5項目を現場で確認する。

1. 末口径は出荷先の規格+2cm以上あるか?

製材所が「14cm以上」と言っている場合、実測で16cm以上ないと受け付けられないケースが多い。皮を剥くと1〜1.5cm減るうえ、製材時にさらに削られるためだ。現場では輪尺で胸高直径を測り、「胸高直径×0.65」で末口径を推定する(スギの場合。ヒノキは×0.7)。

2. 搬出コストは買取価格の50%以下か?

買取単価8,000円/立米の場合、搬出コストが4,000円を超えるなら出さないほうがよく、その理由は伐倒・枝払いの人件費(1立米あたり1,500〜2,000円)を加えると利益がほとんど残らないからであり、架線集材が必要な急傾斜地ではこの基準を30%以下に引き下げる判断もある。

3. 出荷先の受け入れ枠は残っているか?

搬出前に電話で再確認する。製材所は月ごとに受け入れ量の上限を決めており、上限に達すると翌月まで持ち込めない。その間、土場で材を保管すると劣化リスクが上がる。合板工場も同様で、特に年度末(3月)と年度初め(4月)は在庫調整で受け入れを絞る傾向がある。

4. 腐れ・虫穴・あて材はないか?

立木の状態で完全に判断するのは難しいが、樹皮の異常(黒ずみ、こぶ、樹脂の滲出)がある木は避ける。伐倒後、切り口を見て変色や空洞があれば、その部分は切り捨てる。あて材は、幹が傾いている木や枝が一方向に偏っている木に多い。こうした木は製材しても反りが出るため、A材ではなくB材(梱包材や足場板用)として出荷する。

5. 林分全体のバランスは保たれるか?

間伐は単なる収入確保ではなく、残存木の成長促進が本来の目的であり、太い木ばかり抜くと林冠に大きな穴が開いて風害リスクが上がる一方で、逆に細い木ばかり抜くと林内の光環境がほとんど改善されず間伐の効果が出ないため、基本は「上層・中層・下層の各階層から均等に抜く」だが、実際には地形や風向き、隣接林分との関係を見ながら微調整するという判断が求められる。

これは経験がものをいう部分で、ベテランの選木に同行して判断のコツを盗むのが最も早い。都道府県の林業普及指導員に相談すれば、「間伐見学会」や「現地指導」を紹介してもらえる場合もある。

次にやるべきこと

まずは自分の山(または管理を任されている山)の出荷先候補を3つリストアップしろ。製材所1つ、合板工場1つ、バイオマス関連1つを押さえておけば、どんな材でも行き先がなくなる事態は避けられる。電話で「受け入れ規格」「買取単価」「月間受け入れ可能量」の3点を聞き、Excelか手帳にまとめる。

次に、輪尺とマーキングテープを持って林内に入り、選木の練習をする。最初は「この木は出荷先Aの規格に合うか?」を1本ずつ判定し、判断に迷った木には赤テープ、確実に出せる木には青テープを巻く。その状態で森林組合の職員や林業普及指導員に見てもらい、フィードバックを受ける。これを2〜3回繰り返すと、選木の精度が一気に上がる。

搬出は、最初から大量にやろうとしない。10〜20立米程度の小ロットで試し、出荷先の反応(検収の厳しさ、支払いのタイミング、追加注文の有無)を見極める。そのうえで、採算が合う出荷先に絞って本格的な搬出を始めるのが現実的な進め方だ。林野庁「森林・林業基本計画」(2021年閣議決定)では、2025年までに間伐面積を年間52万ヘクタールに拡大する目標を掲げており、今後も間伐材の安定的な出荷先確保が林業経営の鍵となる。

この記事は「林業経営の完全ガイド — 収益構造から事業計画まで」の関連記事です。林業に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。

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