路網密度の計算は「林道総延長÷対象森林面積」だが、現場では作業道をどこまで算入するかで数値が2倍変わる。

主要データ

  • 国内林業の平均路網密度:21.7m/ha(林野庁「森林・林業白書」2024年版)
  • 欧州林業先進国の路網密度:50〜100m/ha(ドイツ・オーストリアの平均値、2023年FAO森林資源評価)
  • 路網密度30m/ha未満の森林:国内人工林の約68%(e-Stat「森林資源現況調査」2023年度)
  • 搬出コスト削減効果:路網密度20m/ha増で約3,200円/m³減(森林総合研究所2022年試算)

路網密度の計算を誤ると、搬出計画が破綻する

吉野の50ha団地で高密路網を整備したはずが、実際に搬出を始めると林道から300m離れた奥地の材が出せず、この現場では計算上の路網密度が42m/haだったにもかかわらず、内訳を見ると林道15m/ha、作業道27m/haで、作業道の半分以上が「図面上は存在するが3年以上使われていない廃道状態」だった。

路網密度は「林道・作業道の総延長(m)÷対象森林面積(ha)」で算出するが、この分子に何を含めるかで数値が大きく変わり、林道台帳に記載されている路線だけなのか、過去に開設した作業道も含むのか、搬出時に開設予定の路線も算入するのかという基準が曖昧なまま計算すると、現実と乖離した数値になってしまう。

林野庁の「望ましい路網密度」として示される数値は100m/haだが、これは「林道+作業道+作業路」の合計値であり、かつ「現在使用可能な路線」に限定した値である一方で、国内の平均値21.7m/ha(林野庁「森林・林業白書」2024年版)には、維持管理がされておらず実質的に使えない路線も含まれているため、実態はさらに低い。林野庁「森林資源の現況」(令和5年3月)によれば、民有林における林道のみの密度は平均11.4m/haにとどまり、作業道を含めた総合的な路網整備が課題となっている。

計算式は単純だが、分子に入れる路線の見極めが現場判断

作業システム別の推奨路網密度(出典:林野庁「作業システム別推奨路網密度」)
作業システム別の推奨路網密度

路網密度の計算式は以下の通りだ。

路網密度(m/ha)= 路網総延長(m)÷ 対象森林面積(ha)

例えば、対象森林50haに林道2,000m、作業道3,500mがある場合、路網密度は(2,000+3,500)÷50=110m/haとなる。

ただし、この計算で注意すべきは「何を路網としてカウントするか」という点であり、現場では次の3種類を区別するため、同じ延長でも実務上の意味合いは大きく異なる。

  • 林道:幅員3m以上、恒久的構造物(側溝・路盤工)を持ち、大型トラックが通行可能
  • 作業道:幅員2.5〜3m、簡易構造、フォワーダやグラップルが走行
  • 作業路:幅員2m以下、搬出期間中のみ使用、末木の集材に利用

林道と作業道は台帳管理され、路網密度の計算に含めるのが一般的である一方、作業路は伐採ごとに開設・廃止を繰り返すため「常設」とは見なさないのが通例であり、だが天竜や日田のような急傾斜地では、作業路なしでは路網密度100m/haでも材が出せない区画が残る。

結論からいえば、路網密度の計算では「現在通行可能な林道+作業道」のみを分子に入れ、作業路は別途「作業路密度」として算出するほうが、図面上の延長と実際の搬出能力を混同しにくく、実務に即した整理になっている。

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分子:路網総延長の測定手順

路網総延長を正確に把握するには、図面と現地踏査の両方が必要になり、図面だけで計算すると廃道や崩落区間も含めてしまうため、延長の合計値が現場の通行可能性を反映しないまま独り歩きしやすい。

ステップ1:林道台帳から基礎データを抽出

まず市町村または森林組合が保有する林道台帳を確認し、台帳に記載された路線名、開設年、延長、幅員、起点・終点の座標をもとに対象森林に該当する路線を抽出して、延長の合計を出す。

智頭の事例では、台帳上の林道総延長が8,200mだったが、実際に使用可能な区間は6,800mだった。残り1,400mは2018年の豪雨で路肩が崩落し、復旧されていなかった。台帳は更新されないまま放置されていることが多い。

ステップ2:作業道の延長を実測

作業道は林道台帳に記載されていない場合が多く、現地で測量する必要があるため、現場では以下の方法を使い分けながら延長を把握していく。

  • ハンディGPS:ガーミンeTrex32xやマゼランeXploristのような林業向け機種で、路線を歩きながらトラックログを記録
  • ドローン空撮:DJI Mavic 3 Enterpriseで上空から撮影し、画像解析ソフト(Pix4Dなど)で路線を抽出
  • 歩測:GPSが使えない場合、歩幅0.7mとして歩数をカウント(誤差±5%程度)

秋田のスギ人工林では、10年前に開設した作業道15路線(計4,200m)のうち、5路線(1,800m)が雪害で倒木に埋もれていた。伐採後3年以上放置した作業道は、ササや雑木が繁茂して通行不能になる。

ステップ3:使用不能区間を差し引く

台帳延長と実測延長を合計した後、以下の区間を除外する。

  • 路肩崩落・路盤流出で重機が通行できない区間
  • 倒木や土砂で埋まり、復旧に2日以上かかる区間
  • 橋梁の腐朽・流失により分断されている区間

飫肥の広葉樹林帯では、計算上の路網密度が38m/haだったが、使用可能区間だけで再計算すると23m/haまで下がり、この差15m/haが搬出計画の遅延を招いたため、分子の精査は単なる数合わせではなく、どこまで機械が入り、どこで工程が止まるかを見通す工程管理そのものに結び付いている。

分母:対象森林面積の確定

路網密度の分母となる森林面積は、「路網でアクセス可能な森林」に限定する必要があり、林地台帳上の面積をそのまま使うと、実際には搬出できない急傾斜地や保安林も含まれてしまうため、分母が過大になって密度を不当に低く見せる。

除外すべき森林区画

以下の区画は路網密度の計算から除外する。

  • 傾斜40度以上の急峻地:架線集材が必要で、路網による搬出が困難
  • 土砂流出防備保安林:作業道の開設が制限され、既存路網のみで対応
  • 渓畔林・河川沿い20m以内:環境配慮のため伐採・搬出を行わない緩衝帯

北山の150ha団地では、林地台帳上の面積から保安林28ha、急傾斜地17haを除外し、実質105haで路網密度を計算した。除外前の計算値は24m/haだったが、除外後は34m/haになった。

森林GISを使った面積算出

現場では、QGIS(オープンソース)や森林クラウド(林野庁提供)を使い、傾斜・林相・保安林指定を重ね合わせて対象面積を算出し、傾斜データは国土地理院の基盤地図情報(5mメッシュDEM)から作成できるため、紙図面だけでは見落としやすい除外区画も比較的整理しやすい。

天竜の事例では、DEMから傾斜35度以上の区画を抽出し、GIS上で面積を計測した。作業時間は約2時間、精度は±3%以内だった。

路網密度の目安と搬出コストの関係

路網密度が高いほど搬出距離が短くなり、コストは下がる。森林総合研究所の2022年試算によると、路網密度が20m/ha増えるごとに搬出コストは約3,200円/m³減少する。林野庁の森林整備事業実施状況(2022年度)では、路網密度が50m/haを超えると車両系作業システムの導入率が8割以上となり、素材生産の効率が大幅に向上することが報告されている。

以下は林野庁が示す「作業システム別の推奨路網密度」だ。

作業システム

推奨路網密度

主な機械

車両系(全幹集材)

100m/ha以上

ハーベスタ+フォワーダ

車両系(短幹集材)

75〜100m/ha

プロセッサ+フォワーダ

架線系(タワーヤーダ)

20〜40m/ha

スイングヤーダ+グラップル

架線系(集材機)

10〜20m/ha

3tクラス集材機

日田の事例では、路網密度28m/haの団地で架線集材を行い、m³あたり7,800円のコストがかかったが、同じ団地で作業道を追加開設して路網密度を52m/haに高めたところ、車両系作業に切り替えられ、コストは5,100円/m³まで下がった。

ただし、この数値には「路網開設コスト」が含まれておらず、作業道の開設費は1mあたり1,500〜3,000円かかるため、搬出コストの低下だけを見て路線を増やすのではなく、1回の伐採で回収できる範囲と、その後も維持できるかどうかを併せて見ながら判断する必要がある。

路網密度計算で使う道具と前提条件

必要な道具

  • 林道台帳:市町村または森林組合から入手
  • 森林簿・林相図:樹種・林齢・面積の確認用
  • ハンディGPS:ガーミンeTrex32x、マゼランeXplorist310など(精度±3m以内)
  • レーザー距離計:ライカDISTO D510、ボッシュGLM250VF(測定範囲250m)
  • ドローン:DJI Mavic 3 Enterprise、Phantom 4 RTK(空撮+測量用)
  • GISソフト:QGIS(無料)、ArcGIS Pro(有料)、森林クラウド(林野庁提供)
  • 野帳・巻尺:路線幅員・勾配の記録用

前提条件

路網密度の計算を始める前に、以下を確認しておく。

  • 対象森林の境界確定:隣接地との境界が未確定だと面積が定まらない
  • 路網の維持管理状況:過去3年以内に補修・草刈りが行われているか
  • 伐採計画の有無:搬出予定がない森林では路網密度を計算する意味がない

智頭では、境界未確定のまま路網密度を計算し、後から隣接地主との協議で面積が8ha減ったため計算をやり直したが、境界確定には地籍調査が必要であり、山林の地籍調査進捗率は全国平均で48%(国土交通省2023年度)にとどまるため、前提条件の確認不足がそのまま再計測の手戻りにつながる。

現場で路網密度を高める実践手順

路網密度を高めるには、新規開設と既存路網の改良の2通りがあり、どちらを選ぶかは森林の傾斜と搬出量で決まる。林野庁「森林・林業白書」令和5年版によると、2022年度の作業道開設実績は全国で約8,000kmに達し、前年度比で12%増加している。

傾斜25度未満:作業道の追加開設

傾斜が緩やかな森林では、作業道を等高線に沿って開設し、路網密度を上げる。開設間隔は80〜120mが標準で、この間隔だとフォワーダの集材距離が片道40〜60mに収まる。

秋田の緩傾斜スギ林(傾斜15〜20度)では、100m間隔で作業道を5路線(各500m)開設した。開設費は1mあたり2,200円、総額550万円だった。路網密度は18m/haから43m/haに上がり、搬出コストは8,200円/m³から5,600円/m³に下がった。4,500m³の搬出で、コスト削減額は1,170万円になり、開設費を1回の伐採で回収できた。

傾斜25〜35度:ヘアピンカーブ方式

中傾斜地では、等高線に沿った直線路だけでは搬出できない区画が残るため、谷沿いにヘアピンカーブを入れて標高を稼ぐ路線を開設し、到達範囲そのものを広げていく。

天竜のヒノキ林(傾斜28〜32度)では、谷部に3箇所のヘアピンを設け、標高差90mを登る作業道を開設した。カーブ半径は12m、勾配は9〜11%に抑えた。開設費は1mあたり3,800円と高くなったが、架線集材から車両系に切り替えられ、年間の搬出コストは220万円削減できた。

傾斜35度以上:既存林道の改良優先

急傾斜地では、新規開設よりも既存林道の幅員拡幅や路盤改良を優先し、幅員を2.5mから3.5mに広げると10tトラックが直接乗り入れできるため、土場での積み替えが不要になる。

吉野の急傾斜地では、林道3路線(計2,800m)の幅員を0.8m拡幅し、路肩にガードレールを設置した。費用は1,400万円だったが、大型トラックの直接搬出により、年間180万円の運搬費が削減された。路網密度は変わらなかったが、実質的な搬出能力は1.5倍に上がった。

路網密度の計算ミスを防ぐチェックポイント

現場で路網密度を計算する際、以下の点を見落とすと数値が狂い、搬出計画だけでなく機械配置や作業日数の見積もりまで連鎖的にずれていくため、計算前の確認よりも計算後の検証が重要になる。

チェック1:作業道の「使用可能延長」を過大評価していないか

作業道は3〜5年で荒廃する。開設から5年以上経過した路線は、現地を歩いて通行可能か確認する。北海道の事例では、10年前に開設した作業道12路線(計5,600m)のうち、9路線(4,200m)が立枯れ・倒木で塞がれていた。

チェック2:林道の「実効幅員」を確認しているか

林道台帳に「幅員3.5m」と記載されていても、路肩崩落や雑木の繁茂で実際の通行幅が2.5m未満になっている場合があり、フォワーダ(車幅2.3m)が通れない路線は路網としてカウントしないという判断が必要になる。

チェック3:対象面積に「搬出不能地」を含めていないか

傾斜40度以上、渓畔林、保安林の一部は路網による搬出ができない。GISで傾斜区分図を作成し、搬出可能面積だけを分母に入れる。飫肥の事例では、台帳面積120haのうち搬出可能面積は89haだった。

路網密度と搬出コストの関係を現場データで検証する

路網密度が高ければ必ず利益が出るわけではなく、開設費と搬出量のバランスを見る必要があるため、密度の上昇そのものではなく、どの程度の材積をどの期間で回収できるかという視点で判断しなければならない。

日田の民有林80haで、路網密度と搬出コストの関係を5年間追跡した。路網密度22m/ha(林道のみ)の年は、搬出コストが9,200円/m³、搬出量2,800m³で総コスト2,576万円だった。翌年、作業道を3,200m開設して路網密度を62m/haに上げたところ、搬出コストは5,800円/m³に下がり、搬出量も4,100m³に増えた。総コスト2,378万円で、開設費720万円を差し引いても利益は改善した。

ただし、搬出量が年間1,500m³未満の小規模団地では、路網開設費が回収できないため、このような森林では既存林道だけで到達できる区画を優先的に伐採し、路網密度は低いまま維持する対応のほうが、無理に延長を増やす場合より収支を崩しにくい。

路網密度の計算を間伐計画に組み込む手順

間伐計画では、路網密度から「1回の搬出で到達できる範囲」を逆算して伐採区画を決める必要があり、単に路線延長を把握するだけでは施業順序の最適化まで踏み込めないため、GIS上での可視化と搬出条件の整理を組み合わせる。

ステップ1:路網から100m圏内を抽出

GIS上で既存路網から100mバッファを作成し、搬出可能エリアを可視化する。フォワーダの集材限界は平地で片道80m、傾斜地で片道60mなので、路網から100m以内ならほぼ確実に搬出できる。

ステップ2:搬出不能区画を特定

バッファ圏外の区画は、架線集材または作業道の追加開設が必要になり、秋田の事例では80ha団地のうち18haが路網から150m以上離れていたため、作業道を2路線(計1,200m)追加開設した。

ステップ3:開設費と搬出量で優先順位を決定

追加開設する路線は、「1mあたりの搬出量」が多い順に優先する。智頭では、候補路線3本(それぞれ600m、800m、400m)のうち、600m路線は沿線の蓄積が360m³/ha、800m路線は180m³/ha、400m路線は420m³/haだった。400m路線を優先開設し、次に600m路線を開設した。800m路線は搬出量が少ないため見送った。

路網密度が低い森林での現実的な対処法

路網密度を上げられない森林では、搬出方法を工夫する必要があり、新規開設が難しい条件でも施業を完全に止めるのではなく、到達可能な範囲と収支に合わせて作業体系を組み替えることが求められる。

対処法1:列状間伐で搬出コストを下げる

路網密度15m/ha未満の森林では、列状間伐(5列残し1列伐採)により、伐採列を集材路として使う。飫肥のスギ林(路網密度12m/ha)では、列状間伐により集材距離を平均180mから90mに短縮し、搬出コストを6,800円/m³から4,900円/m³に下げた。

対処法2:林道沿いのみ強度間伐

搬出コストが高い森林では、林道から50m以内の区画だけを強度間伐(伐採率40〜50%)し、奥地は間伐を見送る。天竜の事例では、路網密度18m/haの120ha団地のうち、林道沿い28haだけを強度間伐し、残り92haは放置した。搬出量は計画の6割に減ったが、収支は黒字を維持できた。

対処法3:隣接森林と路網を共用

隣接する複数の所有者が共同で路網を開設し、維持管理費を分担することで、単独では採算が合いにくい区画でも搬出条件を改善できる。北山では、4所有者(計95ha)が共同で林道2,400mを開設し、各所有者が延長に応じて費用を負担した。路網密度は各所有者の森林で25〜32m/haに上がり、単独開設では採算が合わなかった小規模団地でも搬出が可能になった。

路網密度を維持するための年間管理作業

路網は開設後3年で荒廃が始まり、維持管理なしでは計算上の路網密度が実態と乖離していくため、開設時の延長を記録するだけでなく、通行性を保つ年間管理を前提に評価しなければならない。

年1回の草刈り・倒木除去

作業道は年1回(6〜7月)、路面と路肩1mの草刈りが必要だ。放置すると、ササや低木が繁茂し、フォワーダの走行速度が半分以下に落ちる。智頭では、20haあたり作業道2,800mの草刈りに、刈払機で延べ4日かかった。

3年ごとの路面補修

路面のわだち・洗掘は、深さ15cmを超えると車両のデファレンシャルギアが接地するため、3年ごとにグレーダまたはバックホウで路面を均し、砕石を補充して通行性を維持する必要がある。

日田では、林道8kmの補修に重機3日、材料費28万円かかった。

5年ごとの側溝清掃

側溝が土砂で埋まると、路面に水が溜まり路盤が軟弱化する。5年ごとに側溝を掘り直し、土砂を除去する。秋田では、林道12kmの側溝清掃に延べ7日を要した。

路網密度の計算は、維持可能な路線だけを数える

吉野のベテラン素材生産業者は「路網密度を計算するときは、自分が明日その道を走れるかで判断しろ」と言い、つまり台帳や図面に載っていても、現地で通行できない路線は路網ではないという感覚が、数値を現場で使える情報に変えるうえで最も実務に近い基準になっている。

路網密度100m/haという数値は、欧州の基準を参考にした目標値であり、国内の平均的な森林では現実的ではない一方で、傾斜30度以上の急峻地が多い日本では、路網密度50〜70m/haでも十分に搬出可能な作業システムを組むことが、収支を合わせながら施業を続ける前提になっている。

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