搬出間伐の計画失敗は路網配置と地形判断のズレから生じる。現場の残材量と作業効率は、伐採前の林分密度と土場の位置関係で7割が決まる。

主要データ

  • 搬出間伐実施面積:33.7万ha(林野庁「森林・林業白書」令和5年版)
  • 国産材素材生産量:2,025万㎥(令和4年木材需給報告書)
  • 林業労働災害発生率:22.4件/千人(令和4年林業労働災害統計、全産業平均の約10倍)
  • 間伐標準地面積あたり経費:約14万円/ha(林野庁試算、ただし地形・密度で2倍以上の差)

搬出間伐計画で起きる典型的失敗

搬出間伐の失敗は、伐る量そのものよりも、どこへ集めてどう出すかという前提を外したときに表面化しやすく、秋田県の50ha団地で搬出間伐を計画した森林組合でも、2年目に作業を中断した背景には、土場の位置を林道から500m奥の伐採区に対応させる想定を置いた一方で、中間に急傾斜の谷があることを計画段階で十分に織り込めなかった事情があった。

集材機で木寄せする計画だったが、架線の角度が取れなかった。そのため林道沿いから順に伐採する形へ変更し、当初見積もりの1.7倍の工期とコストがかかっている。

この失敗の本質は、「地形と路網の整合性を図面だけで判断した」点にあり、現地踏査で谷地形を確認していれば最初から林道沿いの分散土場方式を選んでいた可能性が高く、少なくとも途中で計画全体を組み替えるような手戻りは抑えられたと考えられる。

もう一つ頻発するのが、伐採本数の読み違いである。天竜の40年生ヒノキ林では、本数密度800本/haから選木して350本を伐る計画を立てたものの、実際に作業を始めると残す木の多くが偏心木や曲がり材で、択伐後の林分がまばらになってしまい、結果として間伐率が計画より15%高くなって残存木の風倒リスクが増大した。

林野庁「森林・林業白書」(令和5年版)によると、搬出間伐の実施面積は33.7万haである。一方で、計画通りに完了した割合は公表されておらず、現場では計画変更を伴うケースが少なくないと受け止められているうえ、民有林における間伐実施のうち搬出を伴う間伐の割合は年々増加しているため、木材の有効利用と収益確保を見据えた計画精度の重要性はいっそう高まっている。

計画が破綻する3つの根本原因

地図情報と現地のギャップ

林相図や空中写真で見える情報と、実際の林内は同じではない。樹冠が閉鎖した40年生以上の人工林では、下層植生の状態や倒木の散在状況は航空写真では判別しにくく、智頭の施業現場でも地図上では平坦に見えた林内に幅3mの沢が縦断していたが、この沢は夏場にしか水が流れないため、冬の空中写真では樹冠の影に隠れて見えなかった。

地形図の等高線間隔は通常10mか20mであり、高低差8mの急斜面でも等高線1本分にしか表現されないため、図面上では小さな差に見えても、実際に歩くとその8mが作業道を通せるかどうかの境目になり、しかも林野庁「森林資源の現況」(平成29年3月31日現在)では人工林の齢級構成のうち51年生以上の高齢級林分が全体の約半数を占めていることから、搬出間伐を含む適切な施業管理が必要な林分ほど、この現地確認の精度が問われる。

林分密度の過大評価

森林簿の数値は、多くの場合10年以上前の調査データに成長予測式を当てはめたものとなる。その間に雪害や病虫害で枯損が発生していれば、実際の本数は簿冊より2〜3割少なくなり、特に日本海側の多雪地帯ではこの乖離が目立ちやすい。

吉野の60年生スギ林では、森林簿上は650本/haだったが、実測では480本/haしかなかった。過去15年の間に豪雪で曲損した木を所有者が無届で伐採していたことが後で判明し、この見込み違いによって計画材積の3割が不足したため、収支は赤字に転じている。

作業システムと地形の不一致

教科書では「傾斜30度以上は架線集材、15〜30度は車両系、15度以下はフォワーダ」と分類されるが、実際には傾斜だけで決まるわけではなく、土質、立木密度、残材の処理方法、土場までの距離が重なって初めて作業条件が定まるため、同じ傾斜でも採るべき方式が変わることは珍しくない。

実務では、作業システムを先に決めてから土場を合わせるのではなく、土場から逆算して方式を絞るほうが矛盾が少なく、土場の位置が固まればそこへ最も効率よく木を集める方法も見えやすい一方で、この順序を逆にすると搬出距離や集材角度の不整合が後から噴き出し、計画全体の採算と安全性を同時に崩しやすい。

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搬出間伐計画の正しい手順

Step 1: 森林簿と現地の突合(所要2〜3日/50ha)

最初にやるのは、森林簿のデータと現地の照合である。この段階で持ち込む道具は、測高器(バーテックス)、胸高直径測定用の輪尺、GPS、クリノメーター(傾斜計)、それに野帳となる。

対象林分の中心付近に半径10mのプロットを3箇所設定し、その中の全立木を測定する。本数、平均胸高直径、平均樹高、枯損率を実測して森林簿の数値と比較し、ズレが20%以上あれば簿冊データは使えないため、全林分の再調査を前提にしたほうが後工程の手戻りを抑えやすい。

同時に林内を歩いて、沢の位置、露岩地、湿地、既存作業道の状態、搬出の障害になる倒木や根株を確認し、これをGPSで記録して地形図に落とし込む必要があるが、この作業を省くと机上では見えなかった障害が伐倒後や集材時に一気に表面化し、工程の遅れだけでなく土場配置や集材方式の再検討まで招きやすい。

Step 2: 土場候補地の選定(所要1〜2日)

搬出間伐では、土場の位置がすべてを決める。土場は以下の条件を満たす必要がある。

  • トラックが転回できる広さ(最低10m×15m、できれば20m×30m)
  • 林道または公道から直接進入可能
  • 林内からの搬出距離が平均300m以内(架線の場合は500m以内)
  • 地盤が固く、雨天でもトラックが沈まない
  • 周辺に民家や水源がなく、騒音・土砂流出の苦情リスクが低い

北海道や東北の現場では、冬季の除雪状況も確認する。林道が冬期閉鎖される場合、搬出期間は雪解け後の4月から初雪前の11月までに限定される。

土場は複数候補を挙げておきたい。メインの土場が使えなくなった場合に備え、サブ土場を最低1箇所は確保しておくのが実務上の基本であり、林野庁「森林・林業基本計画」(令和3年6月閣議決定)でも効率的な森林施業の実現に向けて林内路網密度の向上が重点施策として位置づけられているため、搬出間伐でも路網と土場の配置を一体で考える視点が欠かせない。

Step 3: 集材方式の決定

土場が決まれば、そこへ木を集める方法を選ぶ。選択肢は大きく3つある。

車両系集材(グラップル・フォワーダ):傾斜15度以下、林内に作業道を通せる場合。作業道の開設費用が1m当たり2,000〜3,000円かかるが、伐採後の搬出効率は最も高い。スチールやハスクバーナの中型チェーンソー(40〜50cc)で伐倒し、グラップルで木寄せ、フォワーダで土場へ運ぶ。1日あたり20〜30㎥の搬出が可能だ。

架線集材(スイングヤーダ・タワーヤーダ):傾斜30度以上、または作業道を通せない場合。架線の設置に2〜3日、撤去に1日かかるが、急斜面でも搬出できる。コマツやキャタピラー製の小型ヤーダ(3〜5トンクラス)が主流で、1日あたり15〜25㎥の搬出能力がある。ただし、架線の支点になる立木(直径30cm以上のスギ・ヒノキ)が必要だ。

人力集材(チルホール・ウインチ):傾斜が急すぎて機械が入れず、材積も少ない場合。1日あたり5〜8㎥程度しか搬出できないが、設備投資は最小限で済む。飫肥地方の小規模所有者が自伐で行う場合に多い方式だ。

実務上、傾斜20〜30度の中間的な地形が最も迷いやすく、この場合は集材距離と残材量を試算して比較し、距離200m以内なら車両系、300m以上なら架線という目安を使うことがあるが、実際には土場条件や残存木保護の難易度も同時に見ないと判断が粗くなり、見かけの効率だけを追って後で修正が必要になる。

Step 4: 選木と伐採順序の設計

どの木を残してどの木を伐るかは、現場で一本一本判断するしかない。ただし、判断基準は事前に明確化しておく必要がある。

一般的な選木基準は以下の通りだ。

  • 被圧木(樹冠が上層に達していない木)を優先
  • 曲がり材、二股、病虫害木を優先
  • 残す木の間隔は4〜5m(立木密度450〜600本/ha)
  • 斜面上部から下部へ順に伐採(上から材を転がさない)

ただし、現場ではこの原則がそのまま通用しないことも多い。例えば被圧木を伐っても搬出に手間がかかるなら、通直材を優先して伐り収益を確保するほうが合理的な場合もあり、この判断は所有者の意向だけでなく、どこまで搬出コストを吸収できるかという収支計画にも左右される。

伐採順序は、土場から最も遠い区画から始めるのが基本となる。近い場所を先に伐ると、奥の材を引きずるときに手前の残存木を傷つけるリスクが高まりやすい。

Step 5: 工程表と収支計画

最後に、作業日数と収支を試算する。林野庁の標準的な試算では、搬出間伐の経費は14万円/ha程度とされるが、これは平均的な地形と密度を前提にした数字であり、実際には傾斜40度の急斜面と傾斜10度の緩斜面ではコストが2倍以上変わる。

工程表には、以下の作業を日単位で割り振る。

  1. 作業道開設(車両系の場合)
  2. 伐倒・玉切り
  3. 集材
  4. 造材(枝払い・採材)
  5. 土場での仕分け・積込み
  6. 林地残材の処理

1日あたりの作業量は、作業員のスキルと機械の能力で変わる。熟練のチェーンソーマンなら1日に80〜100本伐れるが、初心者は30〜40本が限界であり、この差を無視して工程を組むと、当初は小さく見える遅れでも日々積み上がって、後半の集材や積込みの段階で一気に納期へ跳ね返る。

収支計画では、素材価格の変動も見込んでおく。令和4年の国産材素材価格は、スギ中丸太で13,000〜16,000円/㎥、ヒノキ中丸太で20,000〜28,000円/㎥だったが、時期と産地で振れ幅があるため、契約時に買取価格を確定できない場合は、想定より不利な単価に振れたときでも工程を維持できるよう、収支に20%のバッファを持たせておく考え方が現場では使いやすい。

計画立案の前提条件と必要な道具

前提となる権利関係の整理

搬出間伐を実行するには、所有者の同意と、場合によっては隣接地の通行許可が必要になる。特に、林道や作業道が他人の所有地を経由する場合は通行権の確認が欠かせず、日田地方では明治期の入会権が現在も残っていて形式上の所有者と実際の利用権者が異なるケースがあるため、この確認を後回しにすると作業開始後の調整負担が一気に重くなる。

また、保安林や林地開発許可が必要な区域では、事前に都道府県への届出や許可申請が必要だ。保安林での間伐は原則として伐採率30%以下という制限があり、これを超える場合は保安林解除の手続きが必要になるため、通常2〜3ヶ月かかるこの期間を工程表に織り込んでおかなければ、現場準備が整っても着手できない。

必要な測定機材

現地調査と計画立案には、以下の道具が必要だ。

  • GPS(精度10m以内、できれば5m以内):土場位置、沢、露岩地の記録用
  • 測高器(バーテックスIV、ハグロフ等):平均樹高の測定用
  • 輪尺(胸高直径測定用):直径測定、材積計算用
  • クリノメーター:傾斜測定用
  • 巻尺(50m):プロット設定、集材距離の測定用
  • ナタ・鉈:下層植生の刈払い、測定の障害除去用

これに加えて、ドローンがあれば林道の状態や林冠の疎密を上空から確認できる。一方で、樹冠が閉鎖した林分ではドローンでは林内の状態までは見えにくく、上空画像だけで障害物や微地形を判断しようとすると、見えている範囲の情報量が増えるにもかかわらず、地上で必要な判断とのズレがかえって大きくなることがある。

プロと初心者で差が出る判断ポイント

地形の読み方

初心者は地図の等高線を機械的に読むが、熟練者は「水の流れ」で地形を読む。沢は必ず等高線を横切る方向に刻まれる一方で、小規模な沢は地形図に表示されないことがあり、現地では植生の変化で判別できるため、沢沿いに広葉樹や湿生植物が混じって針葉樹の林分が途切れる変化を見逃すと、作業道を沢に突っ込ませやすい。

もう一つ、地形図では分からないのが「微地形」だ。幅2〜3mの浅い窪地や、逆に高さ1〜2mの微高地は等高線には現れない。

しかし、その小さな起伏が集材ルートの障害になることは珍しくなく、現地を歩く際は足元の傾斜変化に注意を払い、靴底で感じるわずかな違和感まで拾えるかどうかが、図面上では同じに見えるルートの優劣を分ける。

材の品質判断

立木の段階で、搬出後の材の等級をある程度予測できるかどうかが、収益計画の精度を左右する。スギやヒノキの通直材は、樹幹の真っ直ぐさだけでなく枝の出方でも判断し、枝が細く節間が長い木は製材後の節が小さく等級が高くなる一方で、枝が太く低い位置から出ている木は節が大きくなり等級が下がる。

曲がり材でも、曲がりの位置次第では短尺材として売れる。根元から2mまでが曲がっていても、それより上が通直なら2m採材で元口部分を林地残材にし、残りを出荷すればよく、全部を残材にすると収益機会を自ら狭めることになる。

機械の能力と限界の把握

カタログスペックと実際の作業能力は違う。フォワーダの最大積載量が4トンでも、急斜面では2トンしか積めないことがあり、スイングヤーダの最大集材距離が500mでも、実際には300m以内でないと効率が落ちる。

機械のオペレーターとは事前に打ち合わせをして、「この地形でどれくらい運べるか」を聞いておきたい。オペレーターの経験値が計画精度を大きく左右するため、特に初めて使う機械ではカタログ値をそのまま採用するのではなく、計画値の7割程度の能力しか発揮できない前提で見積もるほうが、後の修正幅を小さくしやすい。

現場での判断基準と次にやるべきこと

計画変更の判断タイミング

計画通りに進まないと分かった時点で、修正の判断は早いほうがよい。判断が遅れるほど損失は拡大するため、現場ではあらかじめ変更基準を数値で持っておくべきだ。

1日あたりの搬出量が計画の7割を下回る状態が3日続いたら、作業システムの見直しが必要。原因は、集材距離が長すぎる、機械の能力不足、選木の判断ミスのいずれかであることが多く、この段階で立ち止まって土場の位置を変えるか、作業道を追加するかを判断しなければ、遅れは後半ほど取り戻しにくくなる。

林地残材が当初見込みの1.5倍以上になったら、造材基準を見直す。短尺材(2m、3m)の需要先を確保できれば残材を減らせるため、バイオマス発電所が近ければ、C材・D材として搬出する選択肢も検討対象に入る。

リスク予兆の見方

作業中に以下の兆候が現れたら、安全上の問題が潜んでいる。

  • 伐倒時に裂けや割れが頻発する:立木が凍結または腐朽している。残存木の健全性を再チェックする
  • 集材時にワイヤーロープに傷が目立つ:林内に露岩や切株が多い。集材ルートを変更する
  • 作業道に轍が深く残る:地盤が軟弱化している。雨天作業を中止し、路面を養生する

林業労働災害発生率は、令和4年の統計で22.4件/千人と、全産業平均の約10倍である。災害の多くは計画段階で予見できたリスクを放置したことと結びついており、現場の異変を単発の不具合として片づけず、工程・地形・機械条件のどこに無理が出ているのかまで掘り下げて見る姿勢が、安全管理と生産性の両方に関わってくる。

次の一手

搬出間伐の計画が完成したら、次にやるべきは「予行演習」を置くことだ。小面積(1〜2ha)で試験的に伐採・搬出を行い、工程表と実績のズレを確認しておけば、この段階で問題が出ても本格作業前に修正できるが、試験区を設けずにいきなり全域で作業を始めると、失敗の影響範囲は一気に広がる。

天候リスクも工程に織り込んでおく必要がある。降雨後は林内が滑りやすくなって作業効率が2〜3割落ちるため、工程表には予備日を最低2割は確保しておき、さらに地域ごとの降雨傾向や林道のぬかるみやすさを踏まえて作業時期を調整しないと、機械の稼働率だけでなく安全面にも無理が出やすい。

計画の精度は、森林簿と現地の一致度で決まる。ズレが2割以内なら計画は機能しやすいが、3割を超えたら全面的な見直しを視野に入れるべきであり、現地を歩いた距離がそのまま計画の信頼性に結びつく以上、図面だけで済ませようとするほど、現場では想定外の修正が増えやすい。

この記事は「林業経営の完全ガイド — 収益構造から事業計画まで」の関連記事です。林業に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。

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