間伐材とは、森林の健全な生育を促すために抜き伐りした樹木から得られる木材のことだ。
主要データ
- 国内間伐材の年間生産量:約1,350万m³(林野庁「森林・林業白書」2025年版)
- 間伐材の利用率:63.2%(2024年、林野庁統計。ピーク時の2018年比で6.8ポイント減)
- 搬出コスト目安:1m³あたり4,800円〜7,200円(傾斜30度以上の急峻地、林業経営統計2025年)
- 間伐実施面積:年間約46万ha(2024年度実績、森林整備事業による実施分含む)
搬出するか、山に残すか——土場で毎回迫られる判断
林業の現場で間伐を実施したあと、伐った木をどこまで搬出するかは常に悩ましい判断であり、搬出コストが材価を上回れば赤字になる一方で、山に残せば森林所有者からの信頼を失いかねないため、その境目として「利用できる間伐材かどうか」という線引きが実務上の基準になっている。
間伐材の定義は単純に見えて実は複雑で、法令上の定義としては「保育のために伐採した立木から得られる木材」だが、現場ではもっと実務的な判断が働き、たとえば秋田県の北部森林組合では胸高直径18cm未満の木を原則として山に残し、地拵えの際に枝葉と一緒に処理している。搬出コストと製材歩留まりを考えると、採算が取りにくいためである。
林野庁の「森林・林業白書」(2025年版)によれば、国内の間伐実施面積は年間約46万haで推移しているが、そのうち搬出間伐(伐った木を山から出す間伐)の割合は約72%にとどまり、残り28%は切り捨て間伐、つまり伐った木をそのまま林内に残す方式である。しかもこの比率は地域や樹種、林道整備の状況によって大きく変わり、林野庁の「森林・林業白書」(令和6年版)によると、2023年時点で民有林における間伐の必要な森林面積は約518万haに達しているため、現在の年間実施ペースでは完了まで10年以上を要する計算になる。
間伐材と主伐材——同じ木でも市場価値は3割違う
間伐材と主伐材(皆伐や択伐で得られる木材)は、同じスギ・ヒノキでも市場での扱いがまるで違い、教科書では「間伐材は若齢木が中心で、主伐材は成熟木」と説明されるものの、現場の実態は材の性質だけでなく流通条件や採算性に左右される面が大きい。
吉野林業の現場では、樹齢40年のスギでも間伐で出したものは「間伐材」として扱われ、市場価格は同サイズの主伐材より約2〜3割安い。これは品質の差ではなく、流通と製材の都合によるものだが、間伐材は出材量が不安定でロットが小さく、含水率や曲がりのばらつきも大きいため、安定した品質と量を求める製材所では割引価格がつきやすい。
もう一つ混同されやすいのが「小径木」との違いであり、小径木は単に直径が小さい木を指す用語で、間伐で出た木もあれば若齢林の主伐で出た木も含まれるため、寸法の区分である小径木と、伐採の目的と由来による区分である間伐材とは本来別の概念である。もっとも市場では「小径間伐材」という呼び方で、両方の特徴を持つ木材として流通することも多い。林野庁の「木材需給報告書」(2023年)によれば、国産材供給量全体に占める間伐材等由来の木材の割合は約20%で推移しており、主伐材が依然として国産材流通の主流を占めていることが見て取れる。
曲がり材と芯止めの関係
間伐材に多いもう一つの特徴が「曲がり」であり、密植された林分で育った木は競争相手を避けて光を求めるため幹が曲がりやすく、その曲がった材を製材する際には芯止め(製材時に曲がりを避けて材を取る技術)を使わざるを得ないので、結果として歩留まりが下がる。天竜地域では、曲がりが1mあたり3cm以上ある材は建築用材としての出荷を見送り、合板や集成材の原料として流すことが標準になっている。
搬出コストが材価を決める——急傾斜地の現実
結論からいえば、間伐材の利用可否は搬出コストで決まり、林業経営統計(2025年)によると、傾斜30度以上の急峻地での搬出コストは1m³あたり4,800円から7,200円に達する一方で、スギの間伐材(末口18cm、長さ3.65m)の市場価格は、宮崎県の例で1m³あたり約8,500円(2026年4月〜6月期平均、日向市木材市場)となっている。
この数字を見ると、なぜ切り捨て間伐が今も残っているのかが理解しやすく、搬出コストが材価の6割を超えれば実質的な利益はほぼ消えるうえ、さらに作業員の人件費、機械の損料、林道の補修費を加えれば赤字になりやすいため、智頭林業では傾斜35度を超える斜面では原則として搬出を見送り、皮むきだけして立枯れさせる「巻き枯らし」方式を採用している。
これは倒木による土砂崩れを防ぎつつ、森林内の栄養循環を促す技術として位置づけられている。
ただし搬出コストは林道や作業道の整備状況で大きく変わり、日田市の事例では、高密度路網(林道と作業道を合わせて1haあたり100m以上)を整備した林分では搬出コストが1m³あたり3,200円まで下がったため、間伐材の搬出率が87%に達した(日田市森林組合の2023〜2024年度実績)。
用途で変わる間伐材の選別基準
土場(木材を集積する場所)では、搬出した間伐材を用途別に選別するが、この選別基準は単なる仕分け作業ではなく、どの材をどの市場へ回せるかを決める工程であるため、間伐の経済性を左右する要素として現場では非常に重く見られている。
建築用材として使える間伐材の条件は厳しく、胸高直径22cm以上、曲がりが1mあたり2cm以内、腐れ・虫害なし、末木部分の枝打ち跡が目立たないことが求められるため、この基準を満たす間伐材は全体の2〜3割程度にとどまり、これらは「A材」として製材所に直送される。
B材と呼ばれる中級材は、合板や集成材の原料になる。曲がりや節があっても、強度に影響しなければ受け入れられる。国内の合板工場では、スギの間伐材を原料とする割合が年々増えており、2024年時点で国産針葉樹合板の原料に占める間伐材比率は約48%(日本合板工業組合連合会調べ、ただしこの数値には主伐で出た小径木も含まれるため純粋な間伐材比率はやや低い可能性がある)となっている。
C材・D材と呼ばれる低級材は、チップやバイオマス燃料になる。これらは質よりも量が求められるため、搬出コストさえ合えば立枯れや曲がりの激しい材でも引き取られる。一方で、バイオマス発電所の買取価格は1トンあたり8,000円〜12,000円(2026年7月時点、含水率40%基準)であり、この水準では搬出コストを賄うのがやっとという場面も少なくない。
間伐のタイミングと材の質
よく「間伐は10年ごとに実施する」と言われるが、それは平均的な育林計画の話であって、実際の現場では林分の状態と市場動向を見て判断する必要があり、間伐のタイミングが遅れれば樹冠が閉鎖して林内が暗くなり下層植生が消える一方で、早すぎれば残存木が風害を受けやすくなる。
飫肥杉の産地である宮崎県では、植栽後15年、25年、35年の3回間伐を実施するのが標準プランとされるが、これは気候条件と地位(土地の生産力)が良好な場合の話であり、北海道東部のような冷涼地では同じ間伐スケジュールを適用すると成長が追いつかないため、1回あたりの伐採率を下げるか、間伐間隔を伸ばす必要がある。
間伐のタイミングが材質に与える影響も無視できず、樹齢25年以下の若齢木は年輪幅が広く強度が低いため建築用材としての評価が低い一方で、樹齢40年を超えると年輪が詰まり強度が増すが搬出コストも上がるため、この兼ね合いをどう取るかは森林所有者の経営方針に直結する。林野庁の「森林・林業白書」(令和6年版)によると、2022年時点でスギ人工林の齢級構成では10齢級(46~50年生)以上が約5割を占めており、間伐から主伐への移行期を迎えている林分が増加している。
実際の搬出作業で何が起きるか
新潟県の中越地域では、2026年7月24日現在、雨が降り続いており(降水確率90%、最高30度)、林内作業は完全に停止しているが、これは雨天時の搬出作業では作業道の路面が崩れるリスクがあり、フォワーダ(集材機械)が動けなくなる事故が頻発するためである。
間伐材の搬出で最も厄介なのが、末木部分の処理であり、末木は枝が多く皮むきをしないと乾燥しにくいうえ虫害のリスクも高いが、末木まで丁寧に処理していては手間がかかりすぎるため、多くの現場では末口14cm未満の部分は林内に残し、地拵えの際に片付ける方式を取る。ただし急傾斜地では、末木を斜面下に転がして土留めとして利用することもある。
北海道の釧路地域では、7月下旬でも最高気温21度(7月24日時点)と冷涼で、カラマツの間伐作業が本格化している。カラマツは成長が早く、樹齢30年で胸高直径25cmに達することも珍しくない。一方で、カラマツ間伐材はスギ・ヒノキに比べて市場での需要が限られており、主に土木用材や梱包材として流通するため、搬出の判断基準もスギ・ヒノキより厳しく、胸高直径24cm以上でなければ搬出しない森林組合も多い。

次に何を確認すべきか
間伐材の搬出を検討しているなら、まず所有林の林道整備状況を確認しろ。林道台帳は市町村の林務担当課で閲覧できるが、台帳上の情報と現地の状況は一致しないことも多いため、実際に現地を歩いて作業道の幅、路面状態、崩落箇所の有無を確認することが最初の一歩になる。
次に、地域の素材生産業者か森林組合に連絡を取り、搬出コストの見積もりを依頼する。このとき「切り捨てでもいい」という選択肢を残しておくことが肝心であり、搬出コストが材価を上回るなら、無理に搬出せず林内での自然分解に任せる方が、長期的には森林の健全性に貢献しやすい。
最後に、間伐後の林分管理計画を立てる。間伐は一度やれば終わりではなく、10年〜15年ごとに繰り返す作業となっているため、次回の間伐時期、残存本数、目標とする林分構造を明確にしておかなければ場当たり的な伐採になり、森林の価値を損なう。都道府県の林業普及指導員に相談すれば、無料で現地指導を受けられる制度もあるため、まずは地域の林業事務所に連絡を入れるところから進めたい。
この記事は「林業経営の完全ガイド — 収益構造から事業計画まで」の関連記事です。林業に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。
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