種類 木材とは、樹種や用途、産地などの観点から分類される森林資源の総称で、針葉樹と広葉樹の区別を基本に、材質・加工特性・市場価格によってさらに細かく分けられる。
主要データ
- 国内木材自給率:41.8%(林野庁「木材需給報告書」2024年)
- スギ素材生産量:1,353万m³(林野庁「森林・林業白書」2024年版)
- 国産材平均価格(スギ中丸太):14,700円/m³(日本不動産研究所調べ、2024年度)
- 製材用材の割合:62.4%(林野庁「木材需給報告書」2024年)
北陸の山林で搬出作業を指示されたとき、「この現場の木は何か」と聞かれて即答できない新人は少なくないが、スギかヒノキか、それともカラマツかという樹種の違いは搬出の段取りから土場での選別、最終的な売値まで動かすため、木材の種類を正確に見分けられないままでは現場の仕事が噛み合わなくなる。
樹種による大分類:針葉樹と広葉樹の実務的差異
木材の種類を語るうえで出発点になるのが針葉樹と広葉樹の区別で、これは植物学上の整理として理解されることが多いものの、実際の現場では加工のしやすさや販路の違いに直結するため、「どう使うか」を決める判断軸として扱われている。
針葉樹は柔らかく加工しやすく、建築用材としての流通量が圧倒的に多い。代表はスギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツである。林野庁の統計では、2024年時点で国内素材生産量の約78.3%を針葉樹が占め、スギだけで全体の64.2%に達しており、建築需要がどこに集まっているかが数字にも表れている。
広葉樹は硬く重いものが多く、家具材や合板の心材、パルプ材に回されることが多い。代表はナラ、ブナ、ケヤキ、サクラで、素材生産量自体は針葉樹に比べてかなり少ない。
もっとも、広葉樹は量が少ないから不利と単純には言えず、ケヤキやクリは高値で取引される半面、ブナやシデは合板用として安く扱われることもあり、素材生産量が456万m³にとどまって針葉樹の4分の1以下であっても、どの樹種をどの用途に結び付けるかで収益の出方が大きく変わる(林野庁「森林・林業白書」令和6年版、2023年データ)。
用途別分類:製材用材・合板用材・チップ用材
木材は樹種だけでなく、伐採後にどこへ向かうかという用途でも分類される。しかもこの区分は土場での選別作業にそのままつながるため、現場では樹種名以上に日常的に意識される基準になっている。
製材用材は、製材所で板や柱に加工される丸太を指す。林野庁「木材需給報告書」2024年版によれば、国内素材生産量のうち製材用材は62.4%を占める。
径級が中丸太以上、つまり末口直径14cm以上で、曲がりや腐れが少ないものが選ばれ、スギやヒノキでは末口30cm以上の大径材になると柱材ではなく板材として高値がつくこともあるため、どの用途に振り分けるかを誤らないよう、土場で径を測って選別する作業が基本になる。
合板用材は、ベニヤ板や構造用合板の原料になる丸太で、全体の約18.7%を占める。製材用材より細くても使える。
ただし、芯止めされた材や立枯れは敬遠されやすく、主流になるのはカラマツやスギで、特に北海道産カラマツは構造用合板の主力原料として扱われている。
チップ用材は製紙用パルプやバイオマス燃料に回される材で、全体の約14.3%を占めるが、曲がりや節があっても受け入れられ、末木や皮むきが不十分な材でも流せる一方、単価は製材用材の3分の1程度と低いため、搬出コストまで見込むと赤字になる場合があり、林野庁の統計でも2023年のチップ用材生産量は約290万m³、そのうち約6割がパルプ用、4割がバイオマス燃料用に仕向けられている。
産地による分類:吉野材・天竜材・秋田杉
木材の種類を考えるときは、樹種名だけでなく産地名そのものがブランドとして流通する場合があり、吉野材(奈良県)、天竜材(静岡県)、秋田杉(秋田県)、飫肥杉(宮崎県)、日田杉(大分県)などは、その代表例として現場でもよく挙げられる。
こうした産地材は、単に「スギ」「ヒノキ」と呼ぶより高値で扱われることが多く、吉野材では年輪が緻密で色つやが良く、節の少ない材がそろいやすいため和室の造作材として評価され、林野庁の調査でも吉野産ヒノキの平均価格は一般的なヒノキより1.3〜1.5倍高い水準で推移している(2024年度)。
ただし、産地ブランドとして出荷するには一定の基準を満たさなければならない。吉野材なら吉野林業協同組合の認証が求められる。秋田杉なら秋田県森林組合連合会の認定が必要になる。
同じ地域で育った材でも、基準を満たさなければブランド材としては扱われず、教科書的には「吉野で育ったスギが吉野材」と説明できても、実務では認証の有無が価格を左右しており、さらに近年は産地ブランドだけでなく持続可能性を示す森林認証材への需要も伸びていて、国産材認証制度(SGEC)の認証森林面積は2024年時点で約216万haに達している。
材質による分類:赤身・白太・節あり・無節
同じ樹種であっても、丸太のどの部分を製材するかで材の性質は変わる。その差は市場での評価に直結するため、製材所では丸太の断面を見た段階で、使い道と値付けの方向をほぼ決めている。
赤身は丸太の中心部分で、色が濃く耐朽性が高い。ヒノキやスギの赤身は、建築の土台や外壁材として重宝される。
白太(辺材)より2〜3割高値で取引されることが多く、これに対して白太は樹皮に近い部分で色が薄く、耐朽性では劣るものの加工しやすいため、内装材や家具材に回されることが多く、価格も赤身より抑えられる。
節の有無も重要な分類基準になる。無節材は節がほとんどなく、見た目が整うため造作材や高級家具材として評価されやすい。
その半面、節ありでも構造材としては十分に使えるため、価格を抑えたい建築現場ではこちらが選ばれることも多く、林野庁の統計では無節のスギ柱材が節ありの1.8〜2.2倍の価格で取引されるなど、見た目の違いが市場評価にそのまま反映されている(2024年度平均)。
現場での選別基準:何を見て、どう振り分けるか
土場に搬出された丸太を前にして、どの種類に分類するかを判断する時間は長くない。選別に慣れた作業員は、丸太の末口直径、樹皮の状態、曲がりの有無を順に見ながら、製材用か合板用かチップ用かを数秒で決めていく。
実務上、最初に見るのは径級である。末口直径が14cm未満なら合板用かチップ用となる。14〜28cmなら製材用の中丸太だ。28cm以上なら大径材として板材用に回す。
とはいえ、この線引きは全国一律ではなく、地域や製材所の設備によって少しずつ違っており、天竜地域では末口30cm以上を大径材とする製材所が多いのに対し、秋田では28cm以上を大径材扱いする傾向があるため、同じ丸太でも出荷先が変われば分類の結果も変わる。
次に見るのが曲がりと節である。曲がりが大きいと歩留まりが悪くなるため、製材用としては敬遠される。曲がりの許容範囲は「3m間で10cm以内」が目安とされる。
ただ、この目安も製材所の技術力で動き、節については製材後にどの位置へ現れるかが重要になるため、丸太の段階で樹皮を一部剥いて確認することもあり、外見を眺めるだけではなく加工後の見え方まで想定した判断が必要になる。
立枯れや芯止めされた材は、見た目だけでは判別しにくい。叩いたときの音や重さで見分ける。立枯れは軽く、叩くと高い音がする。
こうした材は強度が落ちているため製材用よりチップ用へ回すのが基本で、短時間のうちに見抜けるかどうかが選別精度だけでなく、搬出後のクレームを防げるかにも関わってくる。
地拵えと搬出のタイミングが分類に影響する
地拵えの段階で伐採した材をどう扱うかも、最終的な分類に影響する。伐採後すぐに皮むきをすれば虫害や変色を防ぎやすく、製材用材として高く売れる可能性が上がるが、皮むきをしないまま置けば合板用やチップ用へ格下げされる危険が高まる。
2026年5月30日の気象状況を見ると、関東(茨城)では最高気温31度と高温が予想されている。この時期に伐採した材を皮付きのまま土場に置くと、数日で虫が入り始める。
北海道(釧路)のように最高18度と涼しい地域では多少の猶予を見込みやすいが、関東以西では温度条件が厳しく、皮むきの遅れがそのまま材価の低下につながりやすいため、当日中に処理を終える運用が重視されている。
搬出のタイミングも無視できない。雨が続けば材が水を吸って重くなり、運搬コストは上がる。南九州(鹿児島)のように晴れが続く日を狙って搬出できれば、乾燥が進んで軽くなり、製材用材としての評価も上がりやすい。
新潟や宮崎のように夜にくもりや雨が予想される地域では、午後以降の含水や路面条件の悪化まで見込んで午前中に搬出を終える運用が現実的であり、分類は材そのものの性質だけで決まるのではなく、作業日程と気象条件にも左右される。
市場価格と分類の関係:何がどれだけ儲かるか
木材の種類によって市場価格は大きく変わり、林野庁の「木材価格統計調査」(2024年度)によればスギ中丸太の平均価格は14,700円/m³だが、ヒノキ中丸太は22,300円/m³と1.5倍以上の差があり、さらに無節のヒノキ柱材になると40,000円/m³を超えることもある。
一方で、チップ用材の価格は5,000〜7,000円/m³程度にとどまり、製材用材の3分の1から半分ほどである。搬出コストが1m³あたり3,000〜4,000円かかることを考えると、チップ用材だけでは採算が合わない場面も少なくない。
そのため現場では、まず製材用材を中心に搬出し、製材用に乗らない材だけをチップ用へ回す考え方が基本になっており、どの分類に入れられるかが売上だけでなく、現場全体の収支にまで影響してくる。
産地ブランド材では、価格差がさらに大きくなる。吉野産ヒノキの無節柱材は、一般的なヒノキ柱材の2倍以上で取引されることもある。
もっとも、ブランド認証を得るには手間もコストもかかるため、すべての林家がそれを目指すわけではなく、自分の山林がどの種類の木材を産出できるのかを見極めたうえで、認証取得の負担と販売単価の上積みを比べ、利益が残る分類と出荷先を選ぶ冷静さが求められる。
木材の種類を決めるのは市場と用途
現場では、「木の種類は山が決めるが、木材の種類は市場が決める」という感覚で語られることがある。同じスギでも、径が細ければ合板用、太ければ柱材、節が多ければチップ用というように、最終的な呼び名は使い道の側から定まっていく。
その判断を動かすのは製材所や市場の需要だけではなく、搬出のタイミングや選別の技術でもあるため、木材の種類は固定されたラベルとして捉えるより、山で育った樹種の違いを土台にしつつ、現場の判断と市場の動きによって最終的に定まる流動的な概念として理解したほうが、実務にはなじみやすい。
この記事は「林業経営の完全ガイド — 収益構造から事業計画まで」の関連記事です。林業に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。
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