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畜産データレポート

日本人の肉消費は世界で何位か|50年で進んだ鶏シフトを10チャートで読み解く

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FAOSTAT 食料バランスシート農林水産省 食料需給表総務省 小売物価統計財務省 貿易統計

この記事のポイント

モンゴル人は年間132kgの肉を食べる。日本人は34kg ―― 4分の1だ。世界的に見れば日本は「肉をあまり食べない国」に分類される。しかし50年前と比べると消費量は約2.5倍に増え、その中身は劇的に入れ替わった。かつて主役だった豚肉は鶏肉に追い抜かれ、牛肉は価格高騰で手が届きにくくなった。この構造転換は、畜産農家にとって「何の肉を育てるか」の判断に直結する。鶏肉は国産が強いのか。牛肉に未来はあるのか。輸入肉との競争はどうなるのか。10のチャートでデータから読み解く。

01

50年で肉の中身が入れ替わった

1970年代の主役は豚肉だった。今は鶏肉が頂点に立つ

50年で約2.5倍に増えた肉の消費。しかし増え方は均一ではない。牛・豚・鶏のどれが増えたのか――その答えは、想像と少し違うかもしれない。

国内1人あたり食肉供給量の長期推移(1970–2023年度)

1970–2023年度農林水産省「食料需給表」確報(e-Stat API)
牛肉豚肉鶏肉その他

50年で増えた約21kgのうち、約11kgが鶏肉。日本の肉食化とは、実質的に「鶏肉化」だった

想像とおそらく違うのは、伸びのほとんどが鶏肉に集中していた点だ。牛肉は約2.9倍、豚肉は約2.5倍にとどまる一方で、鶏肉だけが約3.9倍に増えている。鶏肉が豚肉を逆転した背景には、価格・健康志向・調理のしやすさなど複数の要因が語られる。しかし最も説得力があるのは「財布の事情」だ。その証拠はS3で示す。

豚肉と鶏肉の1人あたり供給量推移(鶏豚逆転に注目)

1970–2023年度農林水産省「食料需給表」確報(e-Stat API)
豚肉鶏肉

2012年度に鶏が豚を逆転。価格優位を背景にした構造変化で、簡単には戻らない

豚肉が長く頂点を握ったあとに鶏肉に追い抜かれ、その差は一度も縮まっていない。これは流行ではなく、消費者の選好が後戻りしないところまで進んだことを示している。では、この「鶏シフト」は日本だけの現象なのか。世界の肉消費と並べてみると、日本の特異な立ち位置が浮かび上がる。

02

世界で見ると日本はどこにいるか

合計では中位、しかし鶏肉だけ見ると景色が変わる

日本人の34kgという数字が、世界ではどの程度なのかを掴んでおきたい。上位国との比較は、数字のスケール感を把握するためだけでなく、品目別に見たときの日本の「偏り」を浮かび上がらせる。

世界の1人あたり食肉消費量 上位20か国 + 日本(2022年)

2022年FAOSTAT Food Balance Sheets(CC BY-NC-SA 3.0 IGO)/日本は農林水産省「食料需給表」

日本は世界の上位30か国に入らない。首位モンゴルの26%水準――しかし合計の順位だけでは日本の特徴は見えてこない

合計では下位の日本だが、品目別に見ると景色が変わる。ここから3枚のチャートで、牛肉・豚肉・鶏肉それぞれの世界順位の中で日本がどこに立つかを順に確認する。

牛肉 1人あたり消費量 世界上位10か国 + 日本(2022年)

FAOSTAT Food Balance Sheets / 日本は農林水産省「食料需給表」

牛肉は世界の下位グループ。日本6.2kgは上位国の4〜6分の1に沈み、和牛ブランドの「単価勝負」が必然になる土俵だ

豚肉 1人あたり消費量 世界上位10か国 + 日本(2022年)

FAOSTAT Food Balance Sheets / 日本は農林水産省「食料需給表」

豚肉も世界の下位グループ。日本13.1kgはEU諸国の半分以下。国産豚は「中位の規模・中位の単価」で挟まれる構造にある

鶏肉 1人あたり消費量 世界上位10か国 + 日本(2022年)

FAOSTAT Food Balance Sheets / 日本は農林水産省「食料需給表」

鶏肉だけは世界の中位グループまで浮上する。日本は「肉を食べない国」ではない。「鶏肉に偏った国」だ

合計では下位、しかし鶏肉では中位――この組み合わせが示すのは、日本が「肉を食べない国」ではなく「鶏肉に偏った国」だという事実だ。この偏りは家計の選好ではなく、畜産の産業構造そのものを映している。鶏肉に依存しているということは、鶏肉産業の競争力が崩れたとき、日本の食肉自給の屋台骨が同時に傾くということでもある。

なぜここまで鶏に偏ったのか。最大の要因は意外なほどシンプルだ――値段である。

03

なぜ鶏にシフトしたか

国産牛と鶏肉の小売価格は、25年間で広がり続けている

2025年現在、東京23区の小売価格で鶏肉100gは153円。国産牛肉は937円――6.1倍以上の価格差が、消費者の選択を静かに、しかし確実に変えてきた。25年分の小売価格を並べると、その差は縮まるどころか広がり続けていることが分かる。

食肉小売価格の長期推移(2000–2025年・東京23区)

2000–2025年総務省「小売物価統計」(e-Stat API)/東京23区平均
牛肉(国産)牛肉(輸入)豚肉(国産)鶏肉

鶏肉の安さは市場の偶然ではない。約50日で育つ生産サイクルと飼料効率という生物学的優位に支えられた構造だ

なぜ鶏肉だけが安いのか。ブロイラーの生産サイクルは約50日、牛の肥育期間(20〜30か月)と比べると桁違いに短い。飼料1kgあたりの可食肉増加量(飼料要求率)も鶏が最も優れている。つまり鶏肉の安さは一時的な市場環境ではなく、生物学的な生産効率に根ざしている。この構造的優位が崩れない限り、鶏シフトは続く。データは「いつ反転するか」を示しているのではなく、「反転する理由がない」ことを示している。なお東京23区平均は全国平均より概ね10〜15%高い水準だが、品目間の比率を見るには十分だ。

鶏肉 ÷ 国産牛肉 価格比率の長期推移(2000–2025年)

2000–2025年総務省「小売物価統計」より算出
鶏肉 ÷ 牛肉(国産)

鶏肉は国産牛の約16%から約16%へ。25年で「相対的にますます安く」なった。消費者の選好変化は構造の帰結であって、流行ではない

価格は消費を動かすが、価格だけが全てではない。消費者が鶏肉を選ぶ理由が価格なら、生産者にとっての問いは「その価格で国産が勝てるか」だ。答えは品目によって正反対に分かれる――次に見るのは、もう一つの構造要因、輸入依存率の品目格差だ。

04

輸入依存の品目格差

同じ「肉」でも、国産の競争環境は品目で全く違う

消費者が鶏肉を選ぶ理由が価格なら、生産者にとっての問いは「その価格で国産が勝てるか」だ。答えは品目によって正反対に分かれる。重量ベースの自給率を50年分追うと、牛・豚・鶏は最初から別の競技場にいたことがはっきりする。

食肉の品目別自給率(重量ベース)推移(1970–2023年度)

1970–2023年度農林水産省「食料需給表」(e-Stat API)
牛肉豚肉鶏肉

鶏肉の自給率65%は、飼料を含めて見直すと実質10%台まで下がるとの試算もある。「国産」の意味を問い直す必要がある

自給率の数字には「裏」がある。鶏肉65%は重量ベースの数字であり、その鶏を育てる飼料の大半は輸入トウモロコシと大豆かすだ。農林水産省が公表する飼料自給率反映ベースの参考試算では、畜産物の実質自給率はいずれも大きく下がり、「国産鶏肉」の中身はアメリカやブラジルの穀物で育てた鶏という現実が見えてくる。「自給率」と「実質自給率」のギャップこそ、日本の畜産が抱える最大の構造リスクだ。それでは飼料以外の依存はどこに集中しているのか――輸入元国の構成を見る。

牛肉の輸入元 上位5か国(2024年)

財務省「貿易統計」(HSコード0201+0202)

牛肉輸入の48%がオーストラリア。豪州の干ばつ、そして中国の豪州産牛肉解禁による「買い負け」――2方向のリスクを同時に抱える

豚肉の輸入元 上位5か国(2024年)

財務省「貿易統計」(HSコード0203)

豚肉は5か国に分散し、特定国ショックの吸収余地が3品目で最も大きい。輸入比率は高くても、地政学リスクの分散効果は牛・鶏より効いている

鶏肉の輸入元 上位5か国(2024年)

財務省「貿易統計」(HSコード0207)

鶏肉はブラジル70%とタイで輸入量のほぼ全量。鳥インフルや禁輸が起きれば代替の選択肢がない――鶏の自給率65%は「守らざるを得ない数字」だ

牛肉輸入はオーストラリアが48%、ここに2つのリスクが重なる。1つは豪州側の干ばつによる供給不安。もう1つは2024年に中国が豪州産牛肉の輸入を全面解禁した影響で、世界最大の購買力を持つ買い手と日本が同じ牛を取り合うことになる「買い負け」のシナリオだ。鶏肉に至ってはブラジルとタイの2か国でほぼ全量を占めるため、片方が鳥インフルや政情で止まれば代替が効かない。自給率の高さは安心材料ではなく、安心の源を守るための「最後の砦」だと読み替えるべきだ。そして、その砦を守るかどうかを左右する変数が、もう1つある。アジアの肉食化だ。

05

アジアの肉食化と日本の立ち位置

周辺国は急速に肉を食べ始めている。日本だけが横ばいだ

国内だけを見ていては見えないリスクがある。アジア全体の肉食化が加速しており、飼料穀物の争奪戦はすでに始まっている。日本だけが横ばいで、周辺国は別の速度で動いていることを、まず12年分の数字で確かめる。

アジア主要国の1人あたり食肉消費 推移(2010–2022年)

2010–2022年FAOSTAT Food Balance Sheets / 日本は農林水産省「食料需給表」
中国インドインドネシア韓国タイベトナムフィリピン日本

日本だけが取り残されている。同じ12年で韓国は24kg増、中国12kg増、ベトナム14kg増――この勢いの差が、飼料市場で日本の購買力を相対的に弱めていく

韓国は12年で日本を追い越し、中国・ベトナム・インドネシアは倍増ペースで肉食を取り込んでいる。日本だけが横ばい――この絵から導ける含意は、消費の伸びではなく飼料の取り合いの方にある。10年間の成長率を並べると、その差がさらに鮮明になる。

アジア主要国の食肉消費 10年成長率(2012→2022年)

2012→2022年FAOSTAT Food Balance Sheets より算出

アジア20億人の肉食化は、日本の畜産農家にとって飼料価格の構造的な上昇圧力になる。日本の伸び+13%は、周辺国の数分の一にすぎない

ベトナムの消費量が10年で32%伸びたということは、飼料需要もそれだけ増えたということだ。中国・ベトナム・インドネシアの合計人口は約20億人。この巨大市場が牛肉と豚肉の消費を増やすたびに、トウモロコシ・大豆かすの世界価格は構造的に押し上げられる。日本の畜産コストは、東京の畜産関係者の努力とは無関係に、ハノイやジャカルタの食卓と連動して動く。国内消費は横ばいでも、飼料の輸入価格だけは世界の需要に引きずられて上がる――これが日本の畜産の、最も静かで構造的な逆風だ。

06

畜産農家への3つの問い

数字をもとに、次に判断すべきポイントを整理する

ここまでのデータは、畜産農家にとって3つの問いに収束する。それぞれに正解は1つではないが、データから導ける具体的な示唆はある。市場の風向きに反応するのではなく、構造に対して構えを取るための材料として読んでほしい。

問い 1

鶏肉: 自給率65%の競争力を維持できるか

鶏肉は価格・自給率とも国産が優位にある唯一の品目だ。しかしその優位は飼料輸入に依存しており、配合飼料に占めるトウモロコシ・大豆かすの比重を踏まえると、穀物価格が10%上がれば鶏肉の生産コストは概ね5%押し上げられる関係にある。S5で見たアジアの肉食化はこの穀物価格の構造的な押し上げ要因であり、競争力の維持は飼料調達の多角化――国産飼料用米の活用、副産物・残渣飼料の組み込み、長期固定契約の比率引き上げ――にほぼ集約される。価格優位は「守るもの」というより「経営の組み立てで作り続けるもの」だ。

問い 2

牛肉: 和牛ブランド以外に道はあるか

牛肉の自給率36%、小売価格は鶏肉の6倍以上。量で輸入品と競うのは不可能だ。ただしS2の世界ランキングが示すように、日本の牛肉消費量は世界の上位国の数分の一にとどまる――つまり国内市場には消費を増やす余地そのものはまだある。狙うべきは「量ではなく単価」の市場であり、それは和牛だけを指さない。乳用種・交雑種の中価格帯を、加工度・産地物語・輸出契約のいずれかで差別化できなければ、輸入牛と和牛の二極に挟まれる中位グレードの肥育農家から先に淘汰されていく構図だ。

問い 3

共通: 飼料コストの呪縛をどう断つか

全品目に共通するボトルネックは飼料だ。鶏の自給率65%も飼料込みで見れば実質10%台。アジアの肉食化で飼料穀物の争奪は構造的に激化する。国産飼料米の活用、休耕地・遊休資源を使った放牧の再評価、食品工場の副産物や残渣を飼料化するアップサイクル、昆虫タンパクの導入――これまで個別の補助メニューだった選択肢を、経営戦略の真ん中に置けるかどうかが、次の10年の分水嶺になる。畜産農家がコントロールできる最大の変数は、肉価でも為替でもなく、飼料の調達構造そのものだ。

このレポートのデータが示しているのは、日本の畜産が「何の肉を、どう育て、何で育てるか」の3つの選択を同時に迫られているという現実だ。答えは1つではないが、データなしに考えることはできない。

FAQ

よくある質問

Q. 日本の1人あたり食肉消費量は何kgですか?

2023年度で約34kg(農林水産省「食料需給表」確報・令和5年度)。内訳は鶏肉が約14.6kg、豚肉が約13.1kg、牛肉が約6.2kg。つまり日本人が食べる肉の半分弱は鶏で、牛肉は1割強にすぎません。日本は「肉をあまり食べない国」というより「鶏肉に偏った国」だと読み解くのが実態に近いといえます。

Q. 鶏肉と豚肉ではどちらが多く消費されていますか?

鶏肉です。1970年代までは豚肉の半分以下でしたが、2010年代後半に逆転し、現在では1人あたり供給純食料で最も多い食肉品目になっています。価格差の継続的な拡大が背景にあり、嗜好の流行というよりは構造的な選好シフトとして定着しています。

Q. 日本の食肉自給率は何%ですか?

2023年度の品目別自給率(重量ベース)は、肉類全体が約53%。鶏肉65%、豚肉49%、牛肉36%と品目で大きく異なります。ただし重要なのは「飼料自給率反映ベース」で見ると、いずれの品目も実質的な自給率は大幅に下がる点です。鶏の65%も、その飼料をほぼ輸入に依存している以上、独立した数字としてではなく飼料自給率とセットで読む必要があります。

Q. 世界で最も肉を食べている国はどこですか?

2022年時点でモンゴル(年132kg/人)が首位です。遊牧文化が背景にあり、次いでアメリカ122kg、アルゼンチン114kgと続きます(FAOSTAT食料バランスシートより)。日本34kgはモンゴルの4分の1、米国の3分の1にとどまり、合計の世界ランキングでは上位30か国に入りません。

Q. なぜFAOの統計に日本のデータがないのですか?

日本はFAO Food Balance Sheets(2014年以降の新方式)に未提出のため、新方式のバルクCSVには現れません。本レポートでは農林水産省「食料需給表」の同年データで補完し、国際比較に並べて参考表示しています。年度(4月〜翌3月)と暦年の差により±0.5kg程度のずれが生じうるため、各国との細かな順位差ではなく、おおまかな水準差を読み取る前提でご覧ください。

出典

  • FAOSTAT Food Balance Sheets(fao.org/faostat・CC BY-NC-SA 3.0 IGO)— 国際比較・アジア推移
  • 農林水産省「食料需給表」(maff.go.jp)— 国内1人あたり供給量・自給率・FAO未提出分の補完
  • 総務省「小売物価統計調査」(stat.go.jp)— 食肉小売価格(東京23区平均、e-Stat API)
  • 財務省「貿易統計」(customs.go.jp)— 食肉輸入元国別構成(HSコード0201/0202/0203/0207、2024年確定値)

※注記: FAO食料バランスシート(2014年以降の新方式)には日本のデータが未提出のため、本レポートの国際比較では農林水産省「食料需給表」の同年データを差し込んで参考表示しています。年度(4月〜翌3月)と暦年の差により最大±0.5kg程度のずれが出る点に留意してください。

本レポートは情報提供を目的としており、特定の経営判断・投資判断を推奨するものではありません。記載の数値は公的統計の当該公表時点の値であり、速報値が後日改定される場合があります。最新情報は各出典先の公式サイトでご確認ください。

※本レポートはAIを活用して作成し、編集部が内容を確認・監修しています。詳しくは編集方針をご覧ください。

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一次産業メディア 畜産 担当

農林水産業のデータと現場をつなぐメディア「sanchi.jp」編集部。公的統計・一次情報に基づき、構造的な視点で一次産業の論点を整理しています。

このデータを引用する場合
出典: sanchi.jp「日本人の肉消費は世界で何位か データレポート」 https://sanchi.jp/data/reports/meat-consumption/

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