飼料作物栽培は刈取適期の見極めが収量と栄養価を左右し、イネ科はTDN最高期、マメ科は開花始期が基準となる。

主要データ

  • 飼料作物作付面積:97万1千ha(農林水産省「令和5年耕地及び作付面積統計」)
  • トウモロコシ自給率(子実用飼料):0.2%(農林水産省「食料需給表(令和4年度)」)
  • 飼料自給率(TDNベース):26%(農林水産省「令和5年度飼料をめぐる情勢」)
  • 飼料用トウモロコシ単収:5,240kg/10a(北海道農政部「令和4年度普通畑作物生産実績」)

トウモロコシの刈り遅れが招く現実

8月下旬の北海道十勝地方で、飼料用トウモロコシの圃場において酪農家が刈取適期を1週間逃した結果、黄熟期を過ぎて完熟期まで進んだ茎葉は硬くなり、サイレージ調製後の発酵品質も著しく低下したうえ、乳酸菌による発酵が不十分となってpH5.0を超える品質不良サイレージになったことから、給与した乳牛の乳量は前年比で7%低下した。

飼料作物栽培で最も頻発する失敗は刈取適期の判断ミスであり、教科書では「黄熟期が適期」と書かれるものの、実際には圃場の標高差、品種の早晩性、天候条件によって適期は5日から10日程度前後するため、現場では画一的な日数管理だけでは対応しきれない。判断基準にするのは稈の硬さではなく雌穂の乳線位置で、粒の断面を見て乳線が粒の2分の1まで下がった時点が刈取開始の目安となっている。

飼料作物は畜産経営における自給飼料の要であり、農林水産省「令和5年度飼料をめぐる情勢」によれば、日本の飼料自給率はTDN(可消化養分総量)ベースで26%にとどまる一方、農林水産省「畜産統計(令和5年)」では乳用牛飼養戸数が1万2,900戸まで減少しながら1戸当たり飼養頭数は99.2頭に増加しており、規模拡大が進むほど自給飼料の安定確保が経営の土台になっている。

栽培サイクルの全体像

飼料作物の栽培は作目によって周期が異なるが、全体像を把握するうえではイネ科とマメ科の二つに大別すると理解しやすく、作業時期の組み立てだけでなく、施肥や刈取の考え方まで整理しやすくなる。

イネ科飼料作物の年間サイクル

トウモロコシ、ソルガム、イタリアンライグラスなどのイネ科は、播種から収穫までが単年または1年以内で完結するため、春の立ち上がりから収穫期までの作業遅れがそのまま収量と品質に反映されやすい。

  • 4月下旬〜5月上旬:圃場準備と播種(地温10℃以上確保)
  • 5月中旬〜6月:生育初期管理(雑草防除、追肥)
  • 7月〜8月:生育盛期(草丈確認、病害虫監視)
  • 8月下旬〜9月:収穫適期判定と刈取(黄熟期基準)
  • 9月〜10月:サイレージ調製と品質確認

トウモロコシの場合、播種から収穫までの積算温度は約1,000〜1,200℃が目安だが、この数値は平坦地の標準的品種における目安にすぎず、中山間地では気温が低い分だけ実際には120〜140日程度かかることもあるため、北海道の道東地域のように晩霜の影響で播種が5月中旬以降になる地域では、同じ熟期区分でも地域差を見込んだ管理が欠かせない。農林水産省「作物統計(令和4年産)」によれば、青刈りとうもろこしの全国作付面積は8万8,100ha、収穫量は404万1,000tに達している。

マメ科飼料作物の複数年サイクル

アルファルファ、アカクローバー、シロクローバーなどのマメ科は多年生であり、一度播種すれば3〜5年間収穫を続けられるため、初年度の圃場造成と株養成の出来がその後の収量推移を大きく左右する。

  • 1年目春:圃場準備、播種、初期除草
  • 1年目夏〜秋:株養成期間(軽刈りまたは刈取なし)
  • 2年目以降:年2〜4回の刈取サイクル
  • 刈取適期:開花始期(全体の10%開花時点)
  • 更新時期:収量低下を確認後、再播種

アルファルファの場合、1番草は5月下旬〜6月上旬、2番草は7月中旬、3番草は8月下旬が北関東での標準的な刈取時期になるが、夏季の高温年には生育が早まり、各刈取時期が5〜7日前倒しになるため、暦どおりの管理を続けるだけでは適期を外しやすく、年ごとの気象変動を織り込んだ巡回が求められる。

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圃場準備と土壌診断の実際

飼料作物は商品作物と異なり、大面積での栽培が前提になるため、1ha以上の圃場では土壌の均一性が低く、部分的な生育ムラが発生しやすいという前提で管理する必要がある。

土壌pHの調整基準

イネ科飼料作物の最適pHは6.0〜6.5、マメ科は6.5〜7.0であり、酸性土壌ではマメ科の根粒菌活性が著しく低下して窒素固定量が半減するため、見た目の生育だけで判断せず土壌分析を先行させることが重要になる。現場での診断は、圃場を20m×20mのメッシュに区切り、各区画から土壌を採取してpHを測定する方法が確実だ。

圃場全体の平均値だけを見ると問題が小さく見えても、栃木県の酪農家の事例では全体のpHが5.8と判定された一方で、メッシュ診断を行うと一部区画でpH5.2まで低下しており、その区画だけアルファルファの生育が悪く収量が他の区画の6割程度にとどまったため、炭酸カルシウムを300kg/10a施用して改善したが、施用後すぐには効果が出ないことから、土壌改良資材は播種の2〜3カ月前に投入するのが基本となっている。

堆肥投入量と塩基バランス

飼料作物は大量の養分を持ち出すため堆肥による地力維持が欠かせず、標準的な投入量は2〜3t/10aとされるものの、実際には堆肥の種類と熟度によって効き方が異なるため、量だけでなく成分の偏りも見ながら調整したい。

牛ふん堆肥の場合、完熟堆肥であれば3t/10a、半熟堆肥なら窒素過多を避けるため2t/10a以下に抑える。一方で、豚ぷん堆肥はリン酸含量が高いため、連用すると土壌中のリン酸が過剰蓄積しやすい。5年以上連用した圃場では、リン酸吸収係数が1,500を超えるケースもある。

群馬県の飼料基盤整備事業では、堆肥連用圃場の土壌分析を実施した結果、カリ過剰によるマグネシウム欠乏が広範囲で確認されており、カリ/マグネシウム比が10を超えると牛に低マグネシウム血症(グラステタニー)のリスクが高まるため、この場合は硫酸マグネシウムを50kg/10a追加施用して対処した。

播種作業の精度管理

飼料作物の播種は野菜のような精密播種までは求められないが、深さと株間の均一性は収量に直結するため、作業速度だけを優先すると後の生育差が大きくなる。

トウモロコシの播種深度

トウモロコシの播種深度は3〜5cmが標準だが、土壌水分によって調整する必要があり、乾燥圃場では5cm、適湿圃場では3〜4cm、過湿圃場では2〜3cmが目安になる。播種機の設定を固定したまま作業すると、圃場の湿潤箇所で深植えになり、出芽不良を起こす。

北海道のコントラクターでは、播種機に深度センサーを取り付けてリアルタイムで播種深度を監視しており、深度が6cmを超えた区画では出芽率が70%まで低下して欠株が目立つ結果となったが、出芽率90%以上を確保するには播種後の鎮圧作業も欠かせず、ケンブリッジローラーで軽く鎮圧すると種子と土壌の密着が高まり、出芽が揃いやすくなる。

牧草類の播種量調整

イタリアンライグラスの標準播種量は3〜4kg/10aとされるが、これは条播の場合の数値であり、散播の場合は発芽率が低下するため1.2〜1.5倍量に増やす必要がある。

アルファルファは1〜1.5kg/10a、アカクローバーは1.5〜2kg/10aが目安になる。マメ科は初期生育が遅く、雑草との競合に弱い。減らしすぎれば雑草に負けるが、増やしすぎても個体間競争が激しくなる。

茨城県の飼料生産組合では、アルファルファを2kg/10aで播種したところ、1年目は良好だったものの2年目以降に株の枯死が目立ち、過密による通風不良で病害が発生したとみられたため、適正密度は1.2kg/10a程度とし、欠株部分は翌年の追播で補う方が長期的な安定につながるという整理になっている。

生育期の雑草管理と追肥タイミング

飼料作物は収穫物を家畜が直接摂取するため除草剤の使用には厳格な基準があり、農薬取締法により飼料作物に登録のある除草剤以外は使用できないことから、現場では機械除草と輪作による雑草抑制を軸に管理を組み立てることになる。

播種後の初期除草

トウモロコシは播種後20〜30日が雑草との競合期であり、この時期に雑草を抑えられないと最終的な収量が20〜30%減少する。播種直後にカルチベーターで畦間を中耕すると、発芽前の雑草を物理的に除去できるが、中耕は出芽前または本葉3枚期以降に限る。本葉1〜2枚期に中耕すると、トウモロコシの根を傷めて生育遅延を招く。

除草剤を使用する場合は、飼料作物専用の登録薬剤を選ぶ。具体的な薬剤名や使用方法は農薬取締法の規制対象になるため、最寄りのJAまたは農業改良普及センターで適用薬剤を確認することが前提であり、慣行だけで判断しない姿勢が欠かせない。

追肥の要否判定

イネ科飼料作物は窒素要求量が多く、基肥だけでは不足するケースが多いため、追肥の判断基準として草丈と葉色を併せて確認する必要がある。トウモロコシの場合、本葉8枚期(播種後40〜45日)で草丈が50cm未満、葉色が淡い場合は窒素不足のサインになる。

追肥量は窒素成分で5〜8kg/10aが標準だが、堆肥を多投した圃場では不要なケースもあり、過剰な窒素施用は倒伏リスクを高めるのみならず硝酸態窒素の蓄積により家畜に中毒を引き起こす可能性もあるため、葉色板(SPAD値)で測定し、SPAD値が40以下なら追肥、45以上なら不要と判断する。

マメ科は根粒菌による窒素固定があるため窒素追肥は基本的に不要だが、リン酸とカリは持ち出し量が多いため刈取後に補給する。アルファルファの場合、1回の刈取で10a当たりリン酸2〜3kg、カリ8〜10kgを持ち出し、年3回刈取なら年間でリン酸6〜9kg、カリ24〜30kgの補給が必要になる計算だ。

刈取適期の科学的判定法

飼料作物の栄養価は刈取時期で大きく変動し、早すぎれば収量が不足し、遅すぎれば消化率が低下するため、適期判定には作物ごとの生育ステージ指標を使うことが欠かせない。

トウモロコシの黄熟期判定

トウモロコシは雌穂の乳線位置で刈取適期を判断する。粒を縦に割ると、デンプン層と液状層の境界に白い線(乳線)が見え、乳線が粒の頂部から2分の1の位置まで下がった時点が黄熟期で、この時期のTDN含量が最も高い。

具体的な手順は以下のとおりで、圃場の中心部から任意に5株選び、各株の中段雌穂を1本ずつ採取し、雌穂の中央部付近の粒を爪で割って乳線位置を確認するが、5本のうち3本以上で乳線が2分の1位置に達していれば刈取開始の合図となるため、見た目の黄化だけで判断するより再現性の高い判定ができる。

この判定を怠ると完熟期まで進んでしまい、完熟期の茎葉は繊維含量が増加して牛の第一胃での分解率が低下する。実測データでは、黄熟期のTDN含量が68%に対し、完熟期は62%まで低下する。この6%の差は乳牛1頭当たり年間で約200kgの乳量差に相当する。

牧草類の出穂期・開花期基準

イタリアンライグラスは出穂始期(全体の20〜30%が出穂)、オーチャードグラスは出穂期、チモシーは穂孕み期から出穂始期が刈取適期であり、出穂が進むと茎が硬化して粗タンパク質含量が低下する。

アルファルファは開花始期(全体の10%開花)が基準になり、開花が進むと茎葉比が低下して栄養価が落ちる。開花始期の粗タンパク質含量は20〜22%だが、開花盛期には16〜18%まで低下する。

岩手県の牧場では、アルファルファの刈取を開花盛期まで遅らせたところ、乾物収量は10%増加した一方で粗タンパク質含量が4%低下し、同じ乳量を維持するために必要な給与量が増えた結果、総合的なコストは上昇したため、収量だけでなく栄養価まで含めて刈取時期を決める必要があることが現場でははっきり表れている。

サイレージ調製の水分管理

刈取後の調製作業は飼料の最終品質を左右し、特に水分率のコントロールが成否を分けるため、刈取適期の判断と同じくらい調製段階の精度管理が重要になる。

予乾の要否判定

サイレージ調製の適正水分率は65〜70%であり、刈取直後の水分率が75%以上の場合は圃場で予乾してから収集する。予乾時間は天候と刈取時の水分率によって変わり、晴天なら半日〜1日、曇天なら1〜2日が目安になる。

水分率の簡易測定法は手握り法で、刈取った材料を手で強く握り、指の間から水分がにじむなら水分率75%以上、握った跡が残る程度なら70%前後、握ってもほぐれるなら65%以下と判断するが、この方法は経験による誤差が大きいため、正確にはマイクロ波水分計を使うとしても、現場で全量測定するのは難しい。

千葉県の飼料生産組合では、予乾不足のまま詰め込んだサイレージから排汁が大量に発生しており、排汁はタンパク質や糖分を含むため、排汁が多いほど栄養価が失われるのみならず悪臭の原因となって環境問題にもつながることから、適正水分率の確保は品質面と環境対策の両方に関わってくる。

詰め込み密度と踏圧

サイレージの発酵品質は嫌気性の確保にかかっており、空気を遮断するには詰め込み密度を高める必要がある。目標密度は生草で600〜700kg/㎥、乾物換算で200〜250kg/㎥だ。

踏圧作業はホイールローダーやトラクターで行い、投入した材料を30cm以下の層厚で敷き均し、ローダーで往復5回以上踏圧する。踏圧が不十分だと内部に空気層が残り、好気性菌が繁殖してカビの原因になる。

北海道の大規模牧場では、バンカーサイロの詰め込み作業を外部委託したが、踏圧不足で開封時にカビが発生しており、踏圧作業は単純労働に見えても密度確保のノウハウが必要であるうえ、詰め込み完了後は表面をシートで密封し、重しとして古タイヤやサイレージバッグを載せなければ、空気侵入による表層部の腐敗が起こりやすい。

必要な機械と作業体系

飼料作物栽培には播種から収穫・調製まで一連の機械が必要であり、自己所有とコントラクター利用のどちらを選ぶかは経営規模によって大きく変わる。

小規模経営(5ha未満)の機械構成

5ha未満の小規模経営では、播種と施肥は汎用機械で対応できる。トラクター(30〜50馬力)にロータリーとブロードキャスターを装着すれば播種と散布が可能であり、刈取と収集はコントラクターに委託するのが一般的になる。

自己所有するなら、最低限必要なのは以下だ。

  • トラクター:30〜50馬力クラス(200〜400万円)
  • ロータリー:耕耘・整地用(30〜50万円)
  • ブロードキャスター:肥料・石灰散布用(10〜20万円)
  • モアコンディショナー:牧草刈取用(80〜150万円)
  • テッダー:反転・集草用(30〜60万円)

初期投資は最低でも400〜600万円になる一方で、コントラクター利用のコストは刈取・収集・サイレージ調製込みで8,000〜12,000円/10a程度であり、5haなら年間40〜60万円で済む計算になるため、作業機の稼働率が上がりにくい小規模経営では、自己所有より外部委託の方が負担を抑えやすい場面が多い。

中〜大規模経営(10ha以上)の自走式体系

10ha以上になると、作業の遅れが品質低下に直結するため、自走式機械の導入が現実的な選択肢として浮上してくる。

  • 自走式フォレージハーベスター:刈取・細断を同時実施(1,500〜3,000万円)
  • ダンプトラック:収穫物運搬用(300〜500万円)
  • ホイールローダー:サイロ詰め込み用(500〜800万円)

自走式ハーベスターは作業能率が高く、1日で5〜10haの刈取が可能だが、機械価格が高額であるうえ年間稼働日数が限られるため、単独所有では償却負担が重くなりやすく、複数戸での共同利用やリース契約を組み合わせて稼働率を確保する考え方が現実的になる。

栃木県のコントラクター組織では、自走式ハーベスター1台を5戸で共同所有し、年間50haの作業を受託している。1戸当たりの機械負担は600万円程度に抑えられ、受託料金収入で償却費をカバーする仕組みとなっている。

品種選定と地域適応性

飼料作物の品種は積算温度と晩霜リスクに応じて選ぶ必要があり、カタログスペックだけで判断すると現地で生育不良を起こすことがある。

トウモロコシの熟期区分

トウモロコシは早生・中生・晩生に区分され、早生品種は積算温度900〜1,000℃、中生品種は1,000〜1,100℃、晩生品種は1,100〜1,200℃で成熟する。北海道や東北北部では早生〜中生、関東以南では中生〜晩生が適する。

品種名の具体例を挙げると、早生種では「きみまる」「ゆめつよし」、中生種では「スノーデント125」「おおぞら」、晩生種では「たちぴりか」などがある。ただし、品種の推奨は地域の気候条件と照らし合わせる必要があり、都道府県の農業試験場が発表する奨励品種リストを参照するのが確実だ。

青森県の事例では、晩生品種を栽培したところ、9月下旬の早霜で黄熟期前に茎葉が枯死し、収量は標準の7割にとどまったうえTDN含量も低下したため、晩霜リスクのある地域では収量の上限よりも確実な成熟を優先して早生品種を選ぶ方が、結果として安定した飼料確保につながりやすい。

牧草の永続性と耐寒性

アルファルファは耐寒性品種と非耐寒性品種で越冬率が大きく異なり、東北以北では耐寒性品種を選ぶのが前提になる。非耐寒性品種を寒冷地で栽培すると、初年度は生育するが冬季の凍害で2年目以降の株数が激減する。

オーチャードグラスは晩生型と早生型がある。晩生型は収量が多い一方で、刈取適期が梅雨時期と重なり予乾が困難になりやすい。早生型は収量がやや劣るものの、梅雨前に刈取を終えやすい。

現場で応用する判断のコツ

飼料作物栽培の熟練者は数値データだけでなく圃場の微妙な変化を読み取り、マニュアル通りにはいかない現場での判断基準を積み上げているため、同じ生育ステージに見えても天候、用途、作業体制を合わせて考える姿勢が欠かせない。

刈取適期の前倒し判断

天候予報で刈取適期に降雨が予想される場合、適期の2〜3日前に刈取を前倒しする判断がある。黄熟期より若干早い時期でも、降雨で刈取が1週間遅れるよりは品質低下が少なく、前倒し刈取の場合は水分率がやや高めになるため予乾時間を長めに取る調整が必要だ。

逆に、刈取適期を過ぎても好天が続く場合、完熟期まで待つ選択もあるが、完熟期はTDN含量が低下する一方で乾物収量は黄熟期より5〜10%増加するため、乳牛の泌乳量が高くない育成牛や乾乳牛向けであれば、用途に応じて収量優先で完熟期刈取を選ぶ余地もある。

追肥省略の見極め

堆肥を3t/10a以上投入した圃場では、追肥を省略しても収量への影響は軽微なことが多い。特に、前作が豆科作物の圃場では土壌中の残存窒素が多く、葉色が濃く草丈が順調なら、追肥を見送って資材費を削減する判断も成り立つ。

ただし、追肥省略で問題になるのは次作以降の地力低下であり、毎年追肥を省略すると土壌中の窒素が減少して3〜4年後に収量が落ちることもあるため、単年度の収支だけでなく、5年スパンでの施肥計画として位置づけて判断する必要がある。

サイレージの開封タイミング

サイレージは詰め込み後、最低3週間の発酵期間が必要であり、発酵が不十分な状態で開封するとpHが高く、酪酸発酵している可能性があるため、開封前に表層部のサンプルを採取してにおいと色を確認する。

良質なサイレージは、甘酸っぱい香りで、色は元の材料に近い緑色〜黄緑色だ。刺激臭がする場合は酪酸発酵、黒褐色の場合は好気的変敗が疑われる。開封後は1日に10cm以上の厚さで取り出し、表面を平滑に保つ必要がある。

コスト構造と収益性の実態

飼料作物栽培の経済性は購入飼料との価格比較で評価されるが、自給飼料のコストは生産費と機会費用の両面から見る必要があるため、単純な材料費比較だけでは実態を捉えにくい。

10a当たり生産費の内訳

トウモロコシサイレージの生産費は、北海道の事例で約30,000〜40,000円/10aだ。内訳は以下になる。

  • 種子代:2,500〜3,500円
  • 肥料代:5,000〜8,000円(化成肥料使用の場合)
  • 農薬代:1,000〜2,000円(除草剤使用の場合)
  • 機械費:15,000〜20,000円(償却費・燃料費含む)
  • 労働費:5,000〜8,000円(時給換算)

収量を乾物で1.2t/10aとすると、乾物1kg当たりのコストは25〜33円になる一方、小規模経営では機械の稼働率が低いため機械費が割高になりやすく、同じ収量でも実際のコスト差が広がることから、10a当たりの数字だけでなく、面積規模と作業委託の有無まで含めて採算を見なければ判断を誤りやすい。

作付面積5ha未満ではコントラクター利用の方が総コストは低くなる場合が多く、輸入飼料への依存度が高い経営ほど、自給飼料生産によるコスト圧縮の余地は大きくなりやすい。

労働時間の実測値

飼料作物栽培の労働時間は、10a当たり年間で5〜8時間が標準であり、作業別の内訳は圃場準備・播種が1.5〜2時間、除草・追肥が0.5〜1時間、刈取・収集が2〜3時間、サイロ詰め込みが1〜2時間になる。

これは機械化体系が整った場合の数値であり、手作業が多い小規模経営では10〜15時間かかるケースもある。労働時間を短縮するには作業の外部委託が有効で、播種と刈取をコントラクターに委託すれば、労働時間は3〜4時間まで削減できる。

ベテランが見ている圃場のサイン

飼料作物栽培の経験が20年を超える酪農家は、「圃場の表情を見れば、今年の出来が分かる」と言うが、その意味するところは単なる勘ではなく、出芽のそろい方、葉色、茎の太さ、切り株の変化を連続して観察し、次の作業時期を前倒しまたは後ろ倒しする判断材料として積み上げているということだ。

播種後10日の時点で出芽のばらつきが目立つなら土壌水分が不均一だったサインであり、次回は播種前の砕土と整地をより丁寧に行う必要がある。本葉5〜6枚期で下葉が黄変している場合、窒素不足または根の生育不良を示し、追肥で対処できる時期は限られるため早期発見が重要になる。

草丈が伸びても茎が細く、風で倒伏しやすい場合は密植またはカリ不足が原因になり、この状態では刈取適期が早まるため通常より3〜5日早めに刈取判定を始める。逆に、茎が太く節間が詰まっている場合は生育が順調なサインであり、適期まで待っても品質低下のリスクは低い。

刈取後の切り株の色も重要な情報源で、切り株が鮮やかな緑色なら次回の再生草も期待できるが、褐色や黒褐色の場合は根の活力が低下しており、再生草の収量は見込みにくいため、この段階で次作に向けた圃場更新まで視野に入れておくと、その後の作業計画を組みやすい。

結論として、飼料作物栽培は機械と資材の投入だけでは完結せず、土壌、気象、作物の生育状況を統合的に観察しながら適期に作業を実施する技術が求められ、ベテランの「飼料作物は、手をかければ応えてくれる。ただし、手のかけ方を間違えると、努力が無駄になる」という言葉は、作業の量ではなく精度とタイミングが収量と品質を左右することを端的に示している。

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