エビ養殖の成否は溶存酸素の24時間管理と脱皮前後の給餌制御で決まり、水温変動が激しい海域では陸上養殖が選択肢になる。

主要データ

  • 国内クルマエビ養殖生産量:1,234トン(2023年漁業・養殖業生産統計、水産庁)
  • 養殖クルマエビ平均単価:2,847円/kg(2023年、水産物流通調査)
  • 国産エビ自給率:4.2%(2024年度水産白書)
  • バナメイエビ輸入量:約16万トン(2023年財務省貿易統計)

養殖池に溶存酸素計を入れない生産者が詰まる理由

養殖エビの大量へい死が起きる現場で必ず聞かれるのが「昨日までは元気だった」という言葉であり、エビ養殖で最初に突き当たるのは、目視だけでは判断できない水質変化にどう対応するかという問題になる。特に溶存酸素(DO)の低下は、エビが目に見えて動きを止めるころには既に手遅れで、回復には数日かかる。熊本県天草市の養殖現場では、DOが3mg/L以下になると摂餌率が半分以下に落ち、これが2日続けば脱皮不全が多発して共食いが始まる。

エビ養殖は水質の数値管理ができない生産者には継続が難しく、陸上水槽でも海面生簀でも事情は同じだが、見た目に異常が出た時点では損失回避の選択肢がかなり狭まっている。水産庁の統計によれば、2023年の国内クルマエビ養殖生産量は1,234トンで、ピーク時の1990年代(約4,500トン)から7割以上減少している。さらに、水産庁の漁業センサスによれば、エビ類養殖経営体数は2008年の82経営体から2018年には47経営体へと約4割減少しており、撤退した事業者の多くが設備投資そのものではなく日々の水質管理で躓いた実態が見て取れる。

2026年6月現在、日本近海の海面水温は平年を大きく上回っており、五島列島沿岸西部で23.3度(平年比+2.6度)、土佐湾で24.8度(平年比+2.1度)という数値が出ているため、13海域中12海域で平年超えという状況になっている。海面養殖でクルマエビやバナメイエビを扱う場合、この水温上昇は成長速度を早める一方で病原菌の活性も高める。特にバナメイエビのWSSV(ホワイトスポット症候群ウイルス)は水温25度以上で急速に広がるため、水温が上がる時期ほど溶存酸素と病原体の双方を監視する体制が欠かせない。

エビ養殖の前提条件と必要な設備

養殖方式の選択基準

エビ養殖には大きく分けて陸上水槽式、海面生簀式、池中式の3方式があり、どれを選ぶかは立地と資金で決まるが、海岸線がある地域でも凪の日が少ない外海では陸上の方が安定するため、単純に海が近いという理由だけで海面方式を選ぶと管理負荷が増しやすい。海に面していない内陸部なら陸上水槽一択となる。鹿児島県出水市や熊本県天草市のクルマエビ養殖は池中式が主流で、潮の干満を利用して換水する一方、沖縄県や高知県では海面生簀でバナメイエビを育てる事例もある。世界全体のエビ養殖生産量は約600万トン(2022年、FAO統計)で、中国、インド、インドネシア、ベトナムが主要生産国だ。日本はわずか0.02%のシェアにとどまるが、活けエビの品質では優位性がある。

陸上水槽式のメリットは水質を完全に制御できる点であり、水温・塩分・DO・pHを任意の値に保てるため脱皮のタイミングを揃えやすく、出荷調整がしやすい一方で、設備投資と電気代の負担は重くなりやすい。エアレーションと水温管理だけで月あたり20万〜30万円かかる現場もある。池中式は初期投資が比較的少ないが、台風や大雨で塩分が急変するリスクがあり、排水設備の維持も必要になる。海面生簀式は設備費が最も安いものの、赤潮や低酸素水塊の影響を直接受ける。

必須設備と選定ポイント

どの方式でも、以下の設備は必須になる。

  • 溶存酸素計(DO計):連続測定できる電極式を選ぶ。光学式は校正頻度が少なく、塩分の影響も受けにくい。価格は15万〜30万円だが、これを惜しむと養殖自体が成り立たない。
  • エアレーション設備:ブロワー容量は水量1トンあたり毎分10L以上が目安。ただし真夏の高水温時は倍増させる前提で選ぶ。散気管は目詰まりを起こすため、週1回は取り外して洗浄する。
  • 水温管理装置:クルマエビは20〜28度、バナメイエビは25〜30度が適温。陸上水槽ではヒートポンプ式の冷暖房機を使う。容量不足だと夏場に水温が32度を超え、エビが動かなくなる。
  • 比重計または塩分計:クルマエビは比重1.015〜1.025(塩分20〜33‰)、バナメイエビは1.010〜1.020(15〜27‰)が適正範囲。降雨後は必ず測定する。
  • 給餌機:手撒きでも可能だが、1日3〜4回の給餌を安定させるなら自動給餌機が現実的。タイマー式で餌の投入量を調整できる機種を選ぶ。

加えて、陸上水槽式では循環ろ過装置(生物ろ過槽+物理ろ過槽)が必要になり、アンモニア態窒素を硝化するバクテリアの定着には最低でも3週間かかるため、エビを入れる前に空運転して水を作る必要がある。池中式では取水ポンプと排水ゲートの整備が必須で、潮位に合わせて開閉する自動ゲートがあると管理しやすく、日々の見回り負担も抑えやすい。

種苗の入手と選定

クルマエビの種苗は、全国内水面種苗生産施設研究会に加盟する種苗生産施設や、各県の栽培漁業センターから購入できる。バナメイエビのSPF(特定病原体除去)種苗は、国内では沖縄県水産海洋技術センターや一部の民間種苗業者が扱う。輸入種苗もあるが、ウイルスフリーの証明が曖昧な場合があり、導入後に全滅した事例が複数報告されている。種苗は体長1.5〜2cmのポストラーバ(PL)段階で購入するのが一般的で、1尾あたり5〜10円前後だ。

選定時は色つやと動きを確認し、透明感があり触角を素早く動かすものを選ぶべきだが、尾扇を広げてゆっくり泳ぐ個体は既にストレスを受けている可能性があるため、価格だけで判断すると導入後の歩留まりに響く。輸送中の酸欠を避けるため、到着後は必ず水温合わせと塩分合わせを30分以上かけて行う。この手順を省くと、導入直後に半数が落ちることもある。

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Step 1: 養殖水の準備と水質調整

エビを入れる前に、養殖水を「生きた水」にする作業が必要であり、真水に人工海水を溶かしただけの水ではエビは1週間も持たないため、硝化バクテリアが定着してアンモニアを分解できる状態になるまで最低3週間は見込んで準備を進める。急ぎたい場面でも、この時間を削ると後の損失が大きくなりやすい。

人工海水の調製

陸上水槽式では人工海水を使う。製品は「シーライフ」「マリンアート」などがあるが、業務用は25kgで1万〜1.5万円程度だ。溶解時は一度に大量を入れず、少しずつ混ぜる。一気に投入すると塩が底に沈んで固まり、溶け残る。比重1.020に調整する場合、真水1トンあたり約28kgの人工海水が必要になる。

海水を直接取水できる場合は、砂ろ過と紫外線殺菌を通してから使う必要があり、外海の海水には魚卵やプランクトン、病原菌が混入しているため、そのまま使うとエビの病気リスクが高まる。取水後は必ず比重を測定する。雨天時は、淡水化していないかも確認しておきたい。

バクテリアの定着

ろ過槽に種バクテリアを添加し、エアレーションを回しながら2〜3週間放置する。この間、餌やアンモニア源(市販の硝化菌用添加剤や、少量の魚肉)を投入してバクテリアを増やす。水質検査キットでアンモニア態窒素と亜硝酸態窒素を測定し、亜硝酸が0.1mg/L以下に下がれば準備完了となる。

この工程を飛ばして種苗を入れた熊本県の新規参入者が、導入3日目に全滅させた事例があるが、アンモニア濃度が5mg/Lを超えてエビが次々と底に沈み、水質検査を怠ったことが原因で、損失額は種苗代と設備の空転コストで100万円近くになった。準備不足は、立ち上げ初期の小さな手間を省いた代わりに、その何倍もの負担を後から背負う形になりやすい。

Step 2: 種苗の導入と初期管理

種苗が到着したら、まず輸送袋ごと養殖水に浮かべて水温を合わせ、30分後に袋の水を少しずつ養殖水と入れ替えて塩分を馴化させ、この作業を1時間かけて行う必要があるため、受け入れ時に急いで投入すると浸透圧ショックの影響が翌日以降の死亡率に直結する。導入直後の慌ただしい時間帯ほど、手順を崩さない姿勢が求められる。

投入密度はクルマエビで1平米あたり50〜100尾、バナメイエビで100〜150尾が標準だ。ただし循環ろ過の能力が低い場合は密度を下げる。高密度にするほど成長は遅くなり、共食いも増える。投入直後の3日間は給餌を控え、エビがストレスから回復するのを待つ。この間も溶存酸素は6mg/L以上を維持する。

導入後1週間の観察ポイント

毎朝、池底や水槽底を目視で確認し、死骸が浮いていないか、エビが水面近くで群れていないかをチェックする必要があるが、水面近くに集まる行動は溶存酸素不足のサインであるため、その場でエアレーションを増強できる体制を整えておきたい。餌への反応も観察する。投入後30分以内に8割以上が餌に集まるなら順調であり、反応が鈍い場合は水質を再確認する。

水温は導入初期にやや低めの22〜24度に保つと、エビの代謝が落ち着き死亡率が下がる。1週間後から、徐々に26度まで上げていく。

Step 3: 給餌管理と成長促進

エビ養殖の収益は給餌の精度で決まり、過剰に与えれば餌代がかさむのみならず水質も悪化し、不足すれば成長が遅れて共食いが起きるため、クルマエビで体重の5〜8%を1日3〜4回に分けて与えるという基本値も、水温・個体サイズ・脱皮タイミングに応じて動かす必要がある。固定した数字だけで回すのではなく、残餌や動き方を見ながら微調整を重ねる運用が現場では欠かせない。

給餌量の決め方

給餌後1時間で餌皿を引き上げ、残餌があるか確認する。餌が完全になくなっているなら次回は1割増やす。逆に3割以上残っているなら減らす。この確認作業を週に3回は行う。脱皮直前のエビは餌を食べなくなるため、摂餌率が急に落ちたら脱皮の兆候と判断する。脱皮後24時間は給餌を控え、殻が硬化してから再開する。

配合飼料はクルマエビ用とバナメイエビ用で成分が異なり、クルマエビはタンパク質含量40〜45%、バナメイエビは35〜40%が目安である一方、国内メーカーでは日清丸紅飼料やフィード・ワンがエビ用配合飼料を製造している。沈降性のペレットを選ぶ。浮上性は避けたい。エビは底を這って餌を探すため、浮いた餌は食べずに水質悪化の原因になる。

生餌の併用

配合飼料だけでは嗜好性が落ちる場合、冷凍オキアミやイカナゴを週に1〜2回混ぜる。生餌は食いつきがよく、成長速度が上がる。ただしコストは配合飼料の3倍以上かかり、保存も難しい。高知県のバナメイエビ養殖では、出荷前2週間だけ生餌を与えて身質を改善する手法が取られている。

Step 4: 水質管理と病害対策

エビ養殖で最も神経を使うのが水質の維持であり、DO、水温、pH、アンモニア、亜硝酸の5項目は毎日測定する必要があるが、特にDOは昼夜で変動が激しく、植物プランクトンが多い池では日中に10mg/Lを超えても夜間には5mg/L以下まで落ちるため、この変動幅そのものが脱皮不全の増加につながる。昼間の高い値だけでは実態をつかみにくく、最低値の把握まで含めて管理しなければ判断を誤りやすい。

溶存酸素の維持

DOは常に5mg/L以上を保つ。6mg/L以上なら理想的だ。養殖密度が高い場合や、水温が28度を超える場合は、エアレーションを24時間フル稼働させる。ブロワーの故障に備え、予備機を用意するのが現場の常識となっている。鹿児島県のクルマエビ養殖場では、夜間の停電でブロワーが止まり、翌朝までに300kg分のエビが全滅した例があるため、自家発電機か最低限バッテリー式のエアポンプを常備しておきたい。

アンモニアと亜硝酸の制御

アンモニア態窒素が1mg/Lを超えるとエビの鰓が傷み、呼吸効率が落ちる。2mg/Lを超えると致死レベルだ。アンモニアは餌の食べ残しとエビの排泄物から発生するため、残餌を出さない給餌管理が基本になる。亜硝酸態窒素も0.5mg/L以下に抑える。数値が上がった場合は、換水を増やすか、硝化バクテリア剤を追加投入する。

陸上水槽式では、循環ろ過のバクテリアが正常に働いているか週1回は確認し、ろ過槽から異臭がする場合は嫌気化している可能性があるため、ろ材を取り出して洗浄すると同時にエアレーションを強化して、ろ過機能の立て直しを急ぐ必要がある。異臭を軽く見て運転を続けると、見えないところで処理能力が落ち、アンモニアや亜硝酸の上昇が連鎖しやすくなる。

病害の早期発見

エビの病気は進行が速く、WSSV(ホワイトスポット症候群ウイルス)に感染すると発症から48時間以内に大量死が始まるため、初期症状の遊泳力低下や摂餌不良の段階で異常を拾えるかどうかが被害規模を左右する。体表に白斑が出たら、すでに手遅れに近い。感染が疑われたら、直ちに病エビを隔離し、水産試験場や最寄りの水産普及指導員に連絡する。

予防策としては、種苗導入時にSPF(特定病原体除去)認証を受けたものを選ぶこと、外部からの水や生物を持ち込まないこと、使用する道具を養殖場ごとに専用化することが挙げられる。共用の網や容器は、塩素消毒してから使う。

Step 5: 脱皮管理と選別

エビは脱皮を繰り返して成長し、クルマエビは生涯で10〜15回、バナメイエビは20回以上脱皮するが、脱皮直後の個体は殻が柔らかく他のエビに食べられやすいため、密度が高い状態を放置すると共食いが急増し、歩留まりの悪化が一気に表面化する。成長に応じた選別と間引きを組み合わせ、脱皮期の弱い個体が集中して狙われない環境を作ることが重要になる。

脱皮のタイミング把握

脱皮の1〜2日前からエビは餌を食べなくなり、物陰に隠れる。池底に集まる個体が増えたら、脱皮が近い合図だ。この時期は給餌量を半分に減らし、水質を安定させる。脱皮中は水流を弱め、エビが流されないようにする。脱皮後は殻の硬化に24〜36時間かかるため、その間は他のエビと隔離するのが理想だが、大規模養殖では現実的でない。代わりに隠れ場所(シェルター)を多く設置し、共食いを減らす。

選別作業の進め方

体長3cm、5cm、8cmのタイミングで選別を行う。サイズのばらつきが大きいと、大型個体が小型個体を捕食するためだ。選別は目合いの異なる網で行い、サイズごとに別の水槽または池に移す。選別時はエビに傷をつけないよう、網の素材は柔らかいナイロン製を使う。選別後は必ずDOを測定し、密度が適正か確認する必要がある。

Step 6: 出荷判断と活け締め

出荷サイズはクルマエビで体長12〜15cm(1尾20〜30g)、バナメイエビで10〜13cm(15〜25g)が標準だが、市場の需要や価格動向で前後し、活けエビは水揚げから輸送、店頭に並ぶまで生きていることが前提になるため、出荷前の絶食と輸送時の温度管理が収益に直結する。売り先を意識した仕上げを行えるかどうかで、同じサイズでも評価は変わってくる。

出荷前の絶食

出荷の24時間前から給餌を止める。これにより消化管内の内容物を排出させ、輸送中の水質悪化を防ぐ。絶食が不十分だと、輸送袋内でエビが排泄し、アンモニア濃度が上がって死亡率が高まる。

活け締めと選別

出荷当日、網で掬い上げたエビを氷水で軽く冷やして動きを鈍らせ、その後にサイズと外観で選別するが、傷や黒変がある個体は活け出荷に向かないため冷凍加工用に回し、活けエビは酸素パックに詰めて15〜18度に保った発泡スチロール箱で輸送する。温度が高すぎると代謝が上がり酸欠で死にやすく、低すぎると仮死状態になるが、こちらは輸送上の管理として許容される。

出荷先と価格

活けクルマエビは料亭や高級寿司店向けに1kgあたり3,000〜4,000円で取引される。バナメイエビは飲食店や小売向けで1,500〜2,500円程度だ。ただし輸入エビとの価格競争があり、鮮度と品質で差別化しないと採算が取れない。産地直送や契約栽培で販路を確保している生産者は、安定した単価を維持している。2022年度水産白書によれば、養殖業産出額に占めるエビ類の割合は約1%と小さいが、単価の高さから収益性では魚類養殖に劣らない一方、技術難度と初期投資の大きさが新規参入の壁になっている。

よくある失敗と対処法

失敗例1: 導入直後の大量死

種苗を水温合わせせずに投入し、3日間で半数が死んだ事例がある。原因は浸透圧ショックで、エビの体液と外部環境の塩分差が急激に変化したためだ。対処法は前述の通り、1時間以上かけて水温と塩分を馴化させること。この手順を省略して得られる時間は10分程度だが、失うのは数十万円の種苗代と数か月の養殖期間になる。

失敗例2: 夜間のDO低下による窒息死

日中はDO計が8mg/Lを示していたため安心していたが、早朝にエビが大量死していた事例であり、原因は植物プランクトンの夜間呼吸で夜間にDOが2mg/Lまで低下していたため、昼間の値だけを見て管理していると危険を見落としやすい。対処法はDO計を連続記録式にし、最低値を確認することだ。夜間の値が5mg/Lを下回る場合は、エアレーションを増強するか、プランクトンを減らすために遮光する。

失敗例3: 過剰給餌による水質悪化

成長を早めようと給餌量を倍増させたところ、アンモニア濃度が急上昇し、エビが鰓病を発症した事例だ。教科書には「体重の8%」と書かれていても、ろ過能力が追いつかなければ無意味になる。対処法は残餌チェックを必ず行い、翌日の水質測定で異常がないか確認すること。餌を増やす場合は1割ずつ段階的に増やし、水質の変化を観察する。

失敗例4: 脱皮時期の共食い多発

脱皮が集中する時期に密度を下げず、翌朝に多数の食害痕が見つかった事例だ。脱皮直後のエビは動きが鈍く、硬い殻を持つ個体の格好の餌になる。対処法はシェルターを多く設置し、脱皮前後の給餌を控えめにして、他のエビが空腹にならないようにすること。可能であれば、脱皮時期に選別を行って密度を下げる。

安全上の注意点

エビ養殖は水辺での作業が中心になるため転落と感電のリスクがあり、池や水槽の縁は滑りやすく、特に雨天時や夜間の作業では足を踏み外しやすいことから、長靴は滑り止め付きを選び、夜間作業では必ずヘッドライトを装着する必要がある。慣れた作業ほど確認を省きやすいため、足場と照明の点検は毎回の習慣にしておきたい。

電気設備は水がかかる場所に設置しない。ブロワーやヒートポンプは防水仕様でも、コンセント部分が濡れると感電する。配線は高い位置に固定し、水しぶきがかからないようにする。漏電ブレーカーは必ず設置し、月1回は動作確認を行う。

薬剤や消毒剤を使用する場合は、ゴム手袋とゴーグルを着用する。塩素系消毒剤は目や皮膚に付くと炎症を起こす。使用後は必ず手を洗い、衣服についた場合は速やかに着替える。作業場には、流水で目を洗える設備を用意する。

夏場の炎天下での作業は熱中症のリスクがあるため、水分補給を小まめに行い、帽子と長袖で直射日光を避けながら、選別作業は早朝か夕方に寄せて日中は水質管理と記録に専念するほうが安全で、作業精度も落ちにくい。高温時は判断力も鈍りやすく、単純な見落としが事故や管理ミスにつながるため、時間帯の組み替えまで含めて作業計画を立てたい。

次にやるべきこと

養殖を始める前に、必ず水産試験場や水産普及指導員に相談するべきであり、各都道府県の水産試験場では養殖技術の指導や水質検査のサポートを行っているため、特に病害が発生した場合に迅速な診断を受けられる体制を事前に整えておくことが被害拡大の抑制につながる。連絡先は、導入前の段階で一覧化しておくと動きやすい。

販路の確保も養殖開始前に進める。活けエビは鮮度が命で、水揚げ後24時間以内に消費者に届ける必要がある。地元の料亭、寿司店、鮮魚店に事前に打診し、出荷量と時期を調整する。契約栽培の形を取れば、価格変動リスクを抑えられる。産地直送の通販も選択肢だが、梱包と輸送のノウハウが必要になるため、先行事例を研究してから着手したい。

養殖日誌は必ずつける。水温、DO、pH、給餌量、死亡数、脱皮の有無を毎日記録する。この記録が蓄積すると、自分の養殖場の特性が見えてくる。例えば「水温が27度を超えると摂餌率が落ちる」「満月前後は脱皮が集中する」といったパターンだ。こうした傾向を把握できれば、翌年以降の管理精度は格段に上がっていく。

DO計の校正は月1回行う必要があり、電極式のDO計は使用とともにドリフトして実際より高い値を示すようになるため、校正液を使って定期的に補正しないと、知らぬ間に低酸素状態が続いて成長不良や病気を招く。夜間に最低DO値が4mg/Lを下回る日が続いたら、それが次の大量死の前兆とみるべきであり、その前にエアレーションを増やすか換水を増やすかを決断する必要がある。現場では、異常が見えてからではなく、数値が示す兆候の段階で先に動けるかどうかが生残率を左右する。

この記事は「漁業経営改善ガイド — 既存漁業者のための収益改善戦略」の関連記事です。漁業に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。

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