木材種類とは、樹種・用途・加工段階・規格による木材の区分のことで、スギ・ヒノキなどの樹種名だけでなく、製材・合板・チップといった加工形態、さらには構造材・造作材などの使途による分類を含む複合的な概念だ。

主要データ

  • 国内素材生産量:2,048万m³(林野庁「木材需給報告書」、2023年)
  • スギの生産割合:48.2%(同上、針葉樹素材生産量に占める比率)
  • 製材用材の国産材率:51.7%(林野庁、2023年)
  • 木材自給率:41.8%(林野庁、2023年。過去40年で最高水準)

土場で搬出された丸太を前に、製材所の担当者が「これは何に使う材か」と問う場面では、樹種だけでなく径級・曲がり・芯の状態・含水率といった複数の要素が同時に見られており、木材種類という言葉が現場で意味するのは単なる樹木の名前ではなく、流通と価格を左右する実務上の分類そのものとなっている。

樹種による分類が最初の分岐点になる理由

木材種類の基礎は樹種による区分であり、林野庁の統計では針葉樹と広葉樹に大別され、針葉樹ではスギ(48.2%)、ヒノキ(18.7%)、カラマツ(14.3%)が素材生産量の8割以上を占める一方で、広葉樹の素材生産量は136万m³で全体の6.6%にとどまり、その大半はチップ用材やパルプ用材として利用されている(林野庁「令和5年木材統計」)。

この数値は2023年の木材需給報告書によるもので、地域別に見ると宮崎県と秋田県がスギの二大産地、岡山県と奈良県がヒノキで存在感を示しており、同じ針葉樹であっても産地構成の違いが流通の性格に影響していることが分かる。

樹種による区分が最初に来る理由は物性の違いにあり、スギは軽く加工しやすいが狂いやすく、ヒノキは耐久性と香りで評価される一方で価格は2〜3倍になり、カラマツは硬く重いため土台や梁に向くもののヤニが多く乾燥に手間がかかるため、この性質の差が市場での選別の第一基準として機能している。

吉野林業で知られる奈良県では、樹齢60年以上のヒノキを「本物の吉野材」と呼び、径級30cm以上の無節材を柱や造作に仕向けるが、秋田県の天然秋田杉は径級50cm超の大径木が多く、板材や建具材として別の市場を形成しており、同じヒノキ、同じスギでも産地と径級で用途が変わる現実が見て取れる。

用途による区分が価格を左右する

国内素材生産量の用途別内訳(2023年)(出典:林野庁「木材需給報告書」(2023年))
国内素材生産量の用途別内訳(2023年)

樹種が決まった後、次に来るのが用途による分類であり、製材用材、合板用材、チップ用材、燃料材の4つが主要な区分になる。林野庁の2023年データでは、国内素材生産量2,048万m³のうち製材用材が1,256万m³(61.3%)、合板用材が488万m³(23.8%)、チップ用材が217万m³(10.6%)、燃料材が87万m³(4.2%)という内訳だ。

製材用材の中でもさらに細分化され、構造材(柱・土台・梁・桁)、造作材(鴨居・敷居・廻り縁)、下地材(野地板・間柱)、板材(フローリング・羽目板)といった区分があり、それぞれ求められる品質基準が異なるため、用途の違いは名称の差にとどまらず、乾燥条件や等級判定、最終的な販売単価にまで連動していく。

構造材には日本農林規格(JAS)で定められた強度等級があり、目視等級ではE50・E70・E90・E110、機械等級ではME1〜ME3の区分が存在する一方で、造作材や板材では見た目や仕上がりの均質さがより重視されるため、同じ丸太でも求められる評価軸は大きく変わる。

天竜林業地(静岡県)の製材所では、同じスギでも径級24cm以上で節が少なく通直なものは柱材に、径級18〜22cmで多少の曲がりがあるものは間柱や下地材に、それ以下は合板用材として出荷しており、この振り分けによって丸太1m³あたりの売上が1.5万円から3.5万円まで変動するため、搬出段階での樹種判断のみならず土場での選別精度が収益に直結する構造となっている。

合板用材とチップ用材の境界線

合板用材は径級12cm以上が基本だが、曲がりや腐れがあっても受け入れられる。ロータリーレースで削る工程上、多少の欠点は歩留まりでカバーできるためであり、一方、チップ用材は径級や品質の制約が最も緩く、林地残材や皮むき後の端材も含まれる。

製紙用チップとバイオマス発電用チップで需要先が分かれ、前者は白色度、後者は発熱量が評価基準になるため、見た目には似た低質材であっても、どこへ出すかによって価値の付き方は変わってくる。

日田林工団地(大分県)では、2010年代後半からバイオマス発電施設の稼働により、従来は林地に残していた末木や枝条まで搬出する動きが広がり、チップ用材の買い取り価格はm³あたり4,000〜6,000円と製材用材の3分の1程度にとどまるものの、これまで収入にならなかった部分が現金化できるため、間伐の採算性が改善したという声が現場から上がっている。

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加工段階による分類が流通を決める

木材種類は加工の進行度によっても区分され、原木(丸太)、製材品、集成材、合板、チップ、燃料材という段階があり、それぞれ流通経路と価格形成のメカニズムが異なる。2023年の木材輸入量は5,691万m³で、このうち丸太の割合は5.8%まで低下し、製材品や合板といった加工品での輸入が主流になっている(林野庁「森林・林業白書(令和6年版)」)。

原木市場では径級・長さ・樹種で競りにかけられ、製材所に入った原木は製材機で板や角材に加工され、乾燥工程を経て製材品として出荷されるが、含水率20%以下のKD材(Kiln Dry、人工乾燥材)と含水率30%以上のグリーン材では価格が2〜3割変わり、構造材として使う場合は建築基準法により含水率20%以下が求められるため、乾燥工程の有無が商品価値を分ける。

集成材は、挽板(ラミナ)を接着剤で積層したもので、無垢材に比べて強度のばらつきが小さく、大断面の部材を作れる利点がある。公共建築での木造化が進む中、体育館や商業施設の梁に使われるケースが増えており、林野庁の「森林・林業白書」(2024年版)によると、集成材の国内生産量は2023年時点で約120万m³に達した。

地拵えから製品化までの時間軸

立木の伐採後、枝払い・玉切りを経て原木になるまでに通常1〜2週間かかり、その後、土場での選別・仕分けを経て市場に出るまでさらに1〜3週間を要する。製材所での製材・乾燥に1〜2カ月、JAS認定を取得する場合は検査に2週間程度を要するため、山で伐った木が製材品として流通するまで最短でも2カ月半、通常は3〜4カ月かかる計算だ。

この時間軸が重要なのは、伐採から乾燥、出荷までの各工程が連続しているようで実際には天候や搬出条件の影響を受けやすく、林道の状態や土場での含水率上昇が一つの工程の遅れにとどまらず、その後の製材計画や在庫構成にも波及するためであり、現場では季節変動を織り込んだ仕入れと乾燥の配分が常に求められている。

とくに梅雨期の長雨は林道の損傷や土場での含水率上昇を招きやすく、搬出作業が一時的に止まれば製材所は先に仕入れた原木の在庫で操業をつなぐことになるため、山側の遅れが数週間単位で続いた場合、秋口の製材品供給にまで影響が及ぶという見方は現場で広く共有されている。

現場での選別基準は教科書通りにいかない

針葉樹素材生産量の樹種別構成(2023年)(出典:林野庁「令和5年木材統計」)
針葉樹素材生産量の樹種別構成(2023年)

教科書では「径級・樹種・用途で区分する」と記されるが、実際の土場では立地条件と搬出コストが判断を左右するため、同じ径級や同じ樹種であっても、現場ごとに搬出の可否や仕向け先が変わる。

智頭林業(鳥取県)の現場責任者は「急傾斜地の間伐では、径級18cm未満でも搬出する。なぜなら次の間伐まで15年待てば、その間に林道が使えなくなる可能性があるからだ」と語り、架線集材を使う場合には一度設置した索道を活用して小径木まで搬出したほうが、次回に設置コストをかけるより経済的だという判断を示している。

一方、平地に近い北山林業(京都府)では、径級28cm以上の優良材だけを選木伐採し、それ以下は次世代に残す方針を貫いている。磨き丸太という特殊な製品を作るため、樹齢80〜100年の大径木を狙う戦略であり、同じスギでも地形と製品戦略で搬出基準がまったく逆になることが分かる。

立枯れの扱いも地域で差があり、ナラ枯れ被害が深刻な地域では、立枯れでも材質が保たれている段階で早期に伐採し、合板用材として販売する一方、虫害が少ない地域では立枯れは林地に放置され、地拵えの際に燃料材として処理されるため、病虫害の進行度と市場への距離が立枯れの経済価値を決める要因になっている。

規格材と特殊材の境界が曖昧になっている

JAS規格で定められた寸法の製材品を「規格材」と呼び、柱なら105mm角・120mm角、梁なら105mm×240mm・120mm×270mmといった定番サイズが存在する。一方、神社仏閣の修復や伝統工法の住宅に使われる非定型の材を「特殊材」と呼ぶ。国内の人工林面積は1,020万haで、このうちスギが444万ha(44%)、ヒノキが260万ha(25%)を占めており、今後20年間で主伐期を迎える森林が急増する見込みだ(林野庁「森林・林業白書(令和6年版)」)。

ところが、2020年代に入り両者の境界が曖昧になってきた。背景にあるのは大型木造建築の増加であり、CLT(直交集成板)やLVL(単板積層材)といった新しい木質材料が普及したことで、従来の規格材では対応できない大断面材や長尺材の需要が生まれている。

公共建築物等木材利用促進法(2010年施行、2021年改正)により、学校・庁舎・商業施設での木造化が進んだ結果、径級40cm以上の大径木を「特殊材」ではなく「標準材」として扱う製材所も現れており、規格の外側にあった材が新しい需要の中で日常的な選択肢に組み込まれつつある。

飫肥杉(宮崎県)の産地では、かつて船材として使われた大径木が近年は商業施設の内装材として評価され、1本あたり20万〜30万円で取引されるケースが出ているため、径級50cm超の材は「希少材」から「高付加価値材」へと位置づけが変わり、その変化が育林方針にも影響を与えている。

丸太のままで判断する技術が継承の課題になっている

土場での選別は、皮むき前の丸太を見て樹種・品質・用途を見極める作業であり、熟練者は樹皮の色・質感・匂いでスギとヒノキを判別し、断面の年輪幅で強度を推定し、表面の傷や節の位置から歩留まりを予測する。この技術は「木を読む」と表現され、20〜30年の経験が必要とされる。

しかし、2020年代の林業現場では担い手の高齢化により、この技術の継承が危機に瀕している。林野庁「森林・林業白書」(2024年版)によれば、林業従事者の平均年齢は52.4歳で、60歳以上が全体の34.7%を占める。

若手育成の取り組みとして、各地の森林組合では丸太選別の研修プログラムを実施しているが、座学だけでは習得できない暗黙知の部分が大きく、樹皮のわずかな違いと搬出先の判断を結びつける感覚は、実物を前にした反復の中でしか身につきにくいという事情がある。

新潟県の森林組合では、梅雨期の曇天や雨で搬出作業が止まる時間を利用して、若手作業員に土場での選別実習を行っており、作業が中断する日だからこそ丸太をじっくり観察し、先輩の判断根拠を聞き出す機会になるという考え方のもとで、天候による空白時間を技術継承の場へとつなげる工夫が続けられている。

ベテラン造材手は「木材種類とは、山で決まり、土場で確定し、市場で値がつくものだ」と言う。つまり、立木の段階から最終製品までの一貫した目利きが、林業経営の収益を左右するということになる。

この記事は「林業経営の完全ガイド — 収益構造から事業計画まで」の関連記事です。林業に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。

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