カツオ漁業は一本釣りと巻き網の二大漁法で成り立ち、群れの水温判断と鮮度保持が水揚げ単価を左右する。
主要データ
- カツオ類漁獲量:236,178トン(2023年水産庁「漁業・養殖業生産統計」)
- 一本釣り船平均操業日数:171日(2022年度水産庁調査)
- 活餌確保にかかる経費比率:操業コストの32〜38%(全国近海かつお・まぐろ漁業協会調べ)
- 黒潮流速:毎秒1.2〜1.8m(海上保安庁海洋情報部・平年値)
竿を持った瞬間に勝負は決まっている
五島列島沖で一本釣り船が群れに遭遇したが、水温計は29.8度を示して平年を2.5度も上回っていたため、船長は群れの食いが浅いと見て散水を止めたのであり、水温が高すぎるとカツオは水面直下に留まらず深場に潜るため、この判断を誤ればその日の水揚げは前日の半分以下に落ち込む。
カツオ漁業で最初に詰まるのは、群れの挙動と水温の関係を現場の海況に即して読めるかどうかであり、教科書では「黒潮の暖水域にカツオは集まる」と書かれる一方で、実際の操業では水温が高すぎても低すぎても食いが立たず、平年比で高温となる海域では群れが散発的になって釣果が安定しにくい。
一本釣り漁業者の多くは「群れさえ見つかれば釣れる」と考えるが、それだけでは足りない。活餌の状態も要る。散水の強弱も要る。活餌のカタクチイワシが弱っていればどれだけ群れがいても食わず、散水で海面を攪拌しすぎると逆にカツオは警戒して沈むため、この二つの判断を外すと時化が来る前に漁場を離れる判断まで遅れやすくなる。
この手順を知らなかった頃と知った後の違い
Before:群れ探しだけに集中して空振りを繰り返す
カツオ漁業を始めたばかりの船は、とにかく群れを探すことに全力を注ぐ。魚探の反応が出れば竿を出し、餌を撒くだろう。だが、それだけでは釣果は伸びにくく、水温29度を超える海域で表層に群れがいても移動中で食いが立たない場合があるため、反応があるという理由だけで何時間も竿を出し続けると活餌を浪費し、結果として操業コストだけが膨らんで水揚げ単価も低位にとどまる。
鮮度管理も後手に回りがちで、釣ったカツオをすぐに氷蔵しないため腹が焼け、さらに時化で入港が遅れると鮮度落ちが進むので、東京中央卸売市場では、まぐろ類の入荷量が37.3トンある日であっても鮮度の悪いカツオは相手にされにくく、仲買は腹を指で押して硬さを確かめ、色も見るため、鮮度落ちしたカツオは缶詰原料行きになり、単価は1キロ100円を切る。
After:水温と群れの状態から釣果を組み立てる
手順を理解した船は、まず水温分布を読み、黒潮本流の水温が30度を超えているなら縁辺部の27〜28度帯を狙う一方で、群れを見つけてもすぐには竿を出さず、ナブラが水面を割っているか、鳥山がついているかを確認してから散水と餌撒きの強弱を調整するため、同じ海域でも釣果の組み立て方が大きく変わってくる。
活餌の管理も変わる。カタクチイワシは水温変化に弱いため、生け簀の水温を海水温より1〜2度低く保つ。酸素供給も重要で、ポンプの吐出量は毎分80リットル以上を維持する。こうして弱らない餌を使うことでカツオの食いつきが持続し、釣ったカツオは即座に活け締めして氷蔵するため、船上での処理時間が1尾あたり15秒以内に収まれば、焼津港や枕崎港では生鮮品扱いで1キロあたり600〜800円の単価がつき、鮮度が良ければさらに高値の築地向け出荷も可能となっている。
2023年の水産庁統計では、カツオ類の漁獲量は236,178トンで、このうち一本釣りは約4割を占める。ただしこの数値は遠洋・近海・沿岸を含む全体であり、沿岸のみの内訳は公表されていないため、実際の現場で沿岸一本釣り船の年間漁獲量をみると40〜60トン程度に収まることが多く、船のトン数や操業日数による差が大きい。
カツオ漁業の全体像:漁法選択から水揚げまで
カツオ漁業は大きく分けて一本釣りと巻き網の二つに分かれ、一本釣りはさらに近海と沿岸に、巻き網は大中型と中小型に分かれるため、同じカツオ漁業であっても漁場、操業期間、必要な船の規模、鮮度管理の考え方までが大きく異なっている。
漁法ごとの特性と選択基準
一本釣り近海船は19トン以上の船で、黒潮に乗って伊豆諸島から三陸沖まで追いかける。操業日数は年間150〜200日で、船員は8〜12人。活餌を積むための生け簀が必須で、冷凍設備も船上に持つ。燃料消費が大きいため油価が高騰すると採算が厳しくなり、2022年度の調査では近海一本釣り船の平均操業日数は171日で、これは天候不順や油価高騰で前年より9日減少した数字となっている。
一本釣り沿岸船は5〜19トン未満で、県内漁場を中心に操業する。日帰り操業も多い。船員は3〜5人である。活餌はその日の朝に港近くで獲るか、漁協から購入する。冷凍設備は持たず氷蔵で鮮度を保つことが多い一方で、漁場が限られるため時化が続くと出漁できない日が増え、高知県や鹿児島県の沿岸船は黒潮が接岸する春から初夏にかけて集中的に操業する。
巻き網は群れを網で囲んで一度に大量に獲る。大中型巻き網は数百トン規模の漁獲が可能で、主に缶詰原料向けの冷凍カツオを生産する。焼津港や枕崎港に水揚げされるカツオの大半はこの巻き網によるものだが、一本釣りに比べて単価が低い一方で漁獲量が安定するため経営計算は立てやすく、水産庁「漁業センサス(令和5年)」では一本釣り漁業従事者の平均年齢が58.3歳とされ、後継者不足の深刻さもうかがえる。
操業の流れ:出港から水揚げまで
一本釣り船の操業は、まず活餌の確保から始まる。カタクチイワシやキビナゴを港近くで小型巻き網や敷網で獲り、生け簀に移す。活餌の確保にかかる経費は操業コストの32〜38%を占め、これは燃料費に次ぐ大きな支出であるため、凪の日であっても活餌が獲れなければ出港できず、その日の操業は中止となる。
出港後は水温と潮目を頼りに漁場を探る。黒潮の流速は毎秒1.2〜1.8mで、この流れの縁に潮目ができる。潮目にはプランクトンが集まり、それを餌にする小魚が集まり、さらにカツオが集まるため、魚探で反応を見つけた後もすぐには竿を出さず、まず群れの状態を目視で確認し、ナブラが立っていれば散水を始めて活餌を撒き、食いつきが出た段階で釣りに入るのが基本となる。
釣ったカツオは即座に活け締めし、氷蔵する。活け締めは延髄を切断する方法で、これにより身の硬直を遅らせ鮮度を保つ。氷蔵は0〜2度を保つのが理想で、氷の量が足りないと温度が上がり鮮度落ちが進むため、群れを見つける力のみならず、船上での処理速度と温度管理の精度がそのまま水揚げ単価に跳ね返る。
水揚げは港に入ってすぐに行う。仲買人が鮮度をチェックし、競りにかける。鮮度の良いカツオは生鮮品として高値がつき、鮮度落ちしたものは冷凍品や缶詰原料になるため、単価が1キロあたり300〜800円の幅を持つ現場では、同じ日に同じ港へ入っても処理の差が収入差として表れやすい。
各ステップの実務詳細
活餌の確保と生け簀管理
活餌はカタクチイワシ、キビナゴ、イワシ類を使う。カタクチイワシは食いが良いが弱りやすく、キビナゴは強い一方で水温が高いと動きが悪くなる。活餌の確保は出港前の早朝に行い、小型巻き網や敷網で獲るが、1回の操業で必要な活餌は300〜500キロに及ぶため、船の規模と操業日数に応じた見積もりが欠かせない。
生け簀の水温管理が活餌の生存率を決める。海水温が28度を超える夏場は、生け簀の水温を26〜27度に保つ。これには海水ポンプで常に新鮮な海水を循環させる必要があり、ポンプの吐出量は毎分80リットル以上を維持し、さらに酸素濃度が5ppm以下になると活餌が弱り始めるため、酸素濃度計で常時監視しながら必要に応じてエアレーションを追加する。
活餌の密度も管理する。生け簀1トンあたりカタクチイワシ30〜40キロが適正で、これを超えると酸素不足で弱る。逆に少なすぎると活餌が暴れて傷つく。密度管理は経験で覚えるしかないが、ベテラン船長は生け簀の水面の動きと魚の散り方を見ただけで、過密かどうかをかなり正確に判断している。
漁場の選定と水温判断
カツオの適水温は18〜28度とされるが、これは教科書上の目安であり、実際の現場では27〜28度の海域で食いが最も立ちやすく、29度を超えると群れは深場に潜り、25度を下回ると群れ自体が少なくなるため、水温29.8度に達するような海域では、むしろ水温の低い潮目を探した方が釣果につながりやすい。
潮目は黒潮と沿岸水の境界にでき、ここに餌が集まる。潮目は目視で確認できる。衛星画像や海況情報も使う。海上保安庁の海洋情報部が公開する海流予測図は黒潮の位置と流速を示し、これを元に漁場を予測できるが、予測と実際の海況は1〜2日でズレることもあるため、最後は現場での目視確認がものをいう。
魚探の使い方も重要で、周波数28kHzと200kHzを併用して深場と浅場の反応を見るが、カツオの反応は水深20〜50mに出ることが多い一方で、水温が高いと100m以深に潜ることもあり、反応が出てもカツオかマグロか他魚種かは判別できないため、最終的には鳥山やナブラの有無を目視で確かめて群れの種類を絞り込む必要がある。
散水と餌撒きのタイミング
散水は群れを船に寄せるための演出であり、海面を攪拌すると活餌が逃げる様子を演出できてカツオの捕食スイッチが入る一方で、タイミングを誤ると群れが警戒して離れるため、群れが船から50m以内に寄っているなら弱め、離れているなら強めて餌を遠くに飛ばすという使い分けが求められる。
餌撒きは活餌を少量ずつ撒く。一度に大量に撒くと、カツオは餌だけを食べて満足し、釣り針に食いつかなくなる。餌撒きの量は1回に10〜20尾が目安で、これを10〜15秒間隔で繰り返すが、群れの食いが止まった時に惰性で撒き続けると活餌だけが減るため、一度止めて様子を見て、必要なら時化が近づく前に漁場を離れる判断へ切り替える。
釣り上げと船上処理
竿は長さ3〜4mの竹竿やグラスファイバー製を使う。針は返しのないカエシなし針で、カツオが自重で外れる仕組みだ。竿を振り上げると同時にカツオが甲板に落ち、針が外れる。この一連の動作を1尾あたり3〜5秒で繰り返すため、群れの食いが立っている短い時間帯にどれだけ正確に手数を出せるかが、そのまま釣果の差になる。
釣ったカツオは即座に活け締めする。延髄を切断する方法で、専用のナイフで頭部の付け根を刺す。これにより身の硬直を遅らせ、鮮度を保つ。活け締めしないカツオは30分以内に硬直が始まり、身が焼けるため、氷蔵を0〜2度で維持しつつカツオを氷で挟むように並べ、氷の量が足りない時は釣る速度より冷やす速度が追いつかなくなる点まで含めて管理しなければならない。
道具と前提条件
船と設備の要件
一本釣り船は5トン以上が基本で、近海船なら19トン以上が必要だ。船には生け簀、冷凍設備または氷蔵設備、魚探、GPS、無線機が必須になる。生け簀は容量2〜5トンで、海水ポンプとエアレーション装置を備える。冷凍設備は船上で-30度以下に冷凍できる能力が求められるが、沿岸船の多くは氷蔵で鮮度を保つため冷凍設備は持たない。
魚探は周波数28kHzと200kHzの2種類を搭載する。GPSは漁場の位置を記録し、次回の操業に活かす。無線機は他船との情報交換や気象情報の受信に使う。これらの設備投資は新造船で5,000万〜1億円、中古船で1,000万〜3,000万円が相場であり、同じ価格帯に見えても船齢や設備の状態によって実際の負担感は大きく変わってくる。
竿と釣り具
竿は長さ3〜4mで、竹竿、グラスファイバー製、カーボン製がある。竹竿は軽くてしなやかだが、耐久性が低い。グラスファイバー製は強度があり、価格も手頃だ。一方でカーボン製は軽くて強度も高いが価格が高く、竿1本あたりの価格は竹竿が5,000〜8,000円、グラスファイバー製が8,000〜15,000円、カーボン製が20,000〜40,000円となる。
針はカエシなし針を使う。カツオが自重で外れる仕組みで、釣り上げ速度が上がる。針のサイズは13〜15号が標準で、カツオのサイズに合わせて選ぶ。ハリスはナイロン製の30〜40号を使い、長さは1〜1.5mが一般的だが、短すぎると針が目立ってカツオが警戒し、長すぎると絡まりやすくなるため、速さと見えにくさの折り合いを取る必要がある。
活餌確保の手段
活餌は自船で獲るか、漁協から購入する。自船で獲る場合は、小型巻き網や敷網を使う。小型巻き網は網を円形に張り、群れを囲んで獲る。敷網は海底に網を敷き、夜間に集まった小魚を獲るが、どちらも港近くの浅場で行い、早朝の1〜2時間で必要量を確保する段取りになる。
漁協から購入する場合、活餌の価格は1キロあたり200〜400円が相場だ。ただし需要が高い時期や活餌が不漁の時は、価格が500円を超えることもある。活餌の確保にかかる経費は操業コストの32〜38%を占めるため、価格変動は経営に直結し、焼津や枕崎のような大規模漁港では専門供給業者がいる一方で、地方の小規模港では自力確保が基本になる。
現場で応用するコツ
水温と群れの挙動を読む経験則
カツオの群れは水温27〜28度で最も食いが立つが、これは表層水温の話であり、深場の水温が異なる場合には群れが水温躍層に沿って移動するため、水深20〜50mにできるその層を魚探で確認し、同じ深度に群れの反応が重なっているかどうかを見ることで、表面だけでは読めない釣果の見込みが立ってくる。
群れの移動速度も判断材料になる。群れが高速で移動している時は、食いが立たない。群れが一箇所に留まり、ナブラを作っている時が狙い目だ。鳥山が伴うことも多いが、鳥山の規模が大きすぎる場合はカツオではなくマグロの可能性もあるため、見た目の派手さだけで決め打ちせず、近づいて群れの質を確かめる慎重さが要る。
時化の予兆と撤退判断
時化の予兆は風向きと波の変化で読む。南西の風が強まり、波が白く崩れ始めたら時化が近い。気象庁の予報も参考にするが、予報が外れることもあるため、現場での観察が最終判断となり、釣果が上がっている最中であっても撤退を遅らせれば船員の安全だけでなく活餌の状態や次の操業準備にも悪影響が及ぶ。
撤退の判断は船長が下すが、ベテラン船員の意見も聞く。船長一人の判断では見落としがあるため、複数の目で海況を確認する。撤退後は港に戻るか、凪の海域に移動して待機することになり、待機中も活餌の管理を続けながら次の操業に備える。
鮮度保持の実務ポイント
鮮度保持は活け締めと氷蔵が基本だが、氷の質も重要で、角氷は融けにくい一方でカツオの体表を傷つけやすく、フレーク氷は体表に優しいが融けやすいため、底に角氷を敷いてその上からフレーク氷で包み、日帰り操業なら魚重量の50%、2日以上なら100%を目安に量を調整するという組み合わせが現場ではよく用いられる。
氷蔵庫の温度は0〜2度を保つ。温度計で常時監視し、2度を超えたら氷を追加する。氷蔵庫の蓋は頻繁に開けると温度が上がるため、開閉は最小限にしたい。必要な分だけを素早く取り出してすぐ閉めるという細かい作業の積み重ねが、最終的な水揚げ単価の差として現れる。
他船との情報交換
カツオ漁業は他船との情報交換が欠かせず、無線で漁模様を伝え合って群れの位置や水温を共有する一方で、情報を出しすぎると自船の漁場が荒らされるリスクもあるため、信頼できる仲間内では詳細を交換し、見知らぬ船には絞った情報だけを出すという線引きが実際には行われている。
情報交換の内容は、群れの位置、水温、食いの立ち具合、活餌の状態などだ。他船が釣果を上げている情報を得たら、その海域に向かう。ただし群れは移動するため、情報を得てから1〜2時間後には別の場所に移っていることもあり、最後は自船の目視確認と判断で詰めるしかない。
水揚げ後の流通と単価の決まり方
水揚げ後のカツオは、鮮度によって流通ルートが分かれる。鮮度の良いカツオは生鮮品として市場に出荷され、築地や大阪市場で競りにかけられる。単価は1キロあたり600〜800円で、特に良い品は1,000円を超えることもある一方で、鮮度の劣るカツオは冷凍品として缶詰工場や加工業者に卸され、単価は1キロあたり300〜500円、著しく悪ければ1キロ100円以下まで下がる。
仲買人は鮮度をチェックする際、まず目の透明度を見る。目が濁っていれば鮮度落ちのサインだ。次に腹を指で押して硬さを確かめる。最後にエラの色を見る。この3つを短時間で見極め、目の濁り、腹の戻り、エラの鮮紅色の残り具合を総合して、瞬時に単価を決めていく。
東京中央卸売市場でまぐろ類の入荷量が37.3トンあるような日でも、カツオの評価は鮮度と入荷状況の兼ね合いで動き、秋口は北上回遊の終盤に入って入荷量が減り始めるため、海水温が高く群れが深場に潜って釣果が落ちると市場への供給も細るが、入荷量が減れば単価が上がる一方で、鮮度の良い品が少なければ全体の平均単価は伸びきらない。
缶詰原料と生鮮品の使い分け
缶詰原料向けのカツオは、鮮度よりもサイズと脂の乗りが重視される。缶詰工場は1キロ以上のカツオを好み、脂が乗っていれば多少鮮度が落ちていても買い取る。逆に生鮮品向けは鮮度が第一で、サイズは1〜2キロが好まれ、大きすぎると刺身に切りにくく、小さすぎると歩留まりが悪い。
漁業者は水揚げ前に、どの市場に出荷するかを決める。生鮮品で高値を狙うなら鮮度保持に全力を注ぎ、築地や大阪の大規模市場に出荷する一方で、缶詰原料で安定収入を得るなら焼津や枕崎の加工業者に直接卸すことになり、その日の釣果、鮮度、市場相場を見比べながら、どちらが収益を残しやすいかを都度判断している。
採算ラインと経営の実態
一本釣り船の操業コストは、燃料費、活餌代、人件費、船の維持費で構成される。燃料費は1航海あたり10万〜30万円で、これは漁場までの距離と船のトン数で変わる。活餌代は操業コストの32〜38%を占め、1航海あたり5万〜15万円になる。人件費は水揚げ金額の30〜40%を分配する歩合制が多く、さらに船の維持費として年間200万〜500万円がかかるため、釣果が不安定な時期ほど資金繰りへの圧力が強まる。
採算ラインは1航海あたりの水揚げ金額が50万〜100万円とされる。これは船のトン数と操業日数で変わるが、燃料費と活餌代を回収し、船員に給料を払い、船主に利益を残すにはこの程度の水揚げが必要であり、釣果が上がらない日が続くと赤字操業になって次の出港を見送る判断も現実味を帯びてくる。
2022年度の全国近海かつお・まぐろ漁業協会の調査では、一本釣り船の平均操業日数は171日で、1航海あたりの平均漁獲量は800〜1,200キロだった。ただしこの数値は好調な船と不調な船を平均したもので、実際には漁獲量が500キロ以下の航海も多く、不調が続けば廃業を選ぶ船もあるうえ、水産庁「令和4年度水産白書」によればカツオ一本釣り漁業の経営体数は2018年から2023年の5年間で約23%減少している。
群れが散ったら次の判断を3分以内に下す
カツオ漁業で最も重要なのは、群れが散った後に何を見て何を捨てるかという判断の速さであり、群れが散る理由は餌を食べ終えた、水温が変わった、時化の予兆を感じたなどさまざまだが、まず周囲の海況を確認し、他の群れが近くにいないか、鳥山が見えないか、潮目の位置は変わっていないかを3分以内に見切る必要がある。
他の群れが見つからなければ、漁場を移動する。移動先は水温分布と潮目の位置から判断する。水温が27〜28度の海域を優先し、潮目があればその周辺を探るが、移動中も魚探で反応を見続け、時化の予兆があれば移動を中止して港に戻る判断へ切り替えるため、この切り替えが遅れるほど、その日の操業は終わりに近づいていく。
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この記事は「漁業経営改善ガイド — 既存漁業者のための収益改善戦略」の関連記事です。漁業に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。
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